『ティファニーで朝食を』日本人への偏見「ユニオシ」の変化と、真田広之がたどり着いた栄冠の意義

監督のブレイク・エドワーズは後に、ユニオシについて「今思えば、あんなことはすべきではなかった。もしもリキャストができるのなら、なんだってしたい」と反省を語るようになっている。プロデューサーのリチャード・シェファードも2009年版DVDのコメンタリーの中で、ユニオシの描写について繰り返し謝罪の言葉を口にしている。演じたルーニーは2008年のインタビューで、もしも人を傷つけるような役と知っていれば役を引き受けることはなかったと、批判に心を痛めていると語っている。
“ミスター・ヤエガシを紹介します。新しいユニオシです。”
こうした反省があって、2013年のブロードウェイ版では、ジェームズ・八重樫がヤエガシを新しいアプローチで演じた。八重樫はマーベル・ドラマ「デアデビル」や「ランナウェイズ」にも出演した、横浜出身の日系アメリカ人俳優だ。スラリとした長身で、舞台版では清潔感あるスーツに身を包んでいる。映画版からはキャラクター設定が全面的に改められたのだ。ちなみにこの舞台版では、「ゲーム・オブ・スローンズ」のエミリア・クラークがホリー役で主演を務めた。
映画版のユニオシについて、「最も悪名高い」イエローフェイス(=アジア人以外の俳優がアジア人を演じること)の事例だと話す八重樫は、自身の舞台版では『ティファニーで朝食を』の原作小説版に立ち返る必要があったと、2013年のインタビューで明らかにしている。「(原作で)ユニオシはカリフォルニアからやってきた日系アメリカ人2世でした。映画版で、ミッキー・ルーニーはまるで船から降りたばかりの人物であるかのように演じていました」。
八重樫による新たなキャラクター像について米The Hollywood Reporterは、映画のミッキー・ルーニー版とは距離を置く造形になっていると評し、「スムースでハンサム、文化的な解析がなされたバージョン」として登場したと書き残した。
『ティファニーで朝食を』で滑稽な日本人が白人によって演じられてから、「SHOGUN 将軍」で真田広之が時代劇の真髄をハリウッドに持ち込み、世界最高峰としての賞を授与されるまで、63年の歳月となった。ユニオシはその初期における極端な例だとしても、日本人や日本文化は、これまで海外作品では不本意に誇張されたり、西洋化されたり、不敬な形で描写されることが多かった。
「おかしなものを作るのなら、自分は日本人として参加できない」。真田は「SHOGUN 将軍」を打診された当初から、日本人俳優の起用、日本のクルーの雇用にこだわった。長く険しい奮闘の果てに、真田広之による「SHOGUN 将軍」がやっと掴んだ栄冠の意義は、あまりにも大きい。
「本作は東と西が出会う夢のプロジェクトでした。とても難しいプロジェクトでしたが、全員が一致団結しました。私たちは全員で奇跡を作る事ができました。そして我々は共により良い未来を作ることができます。本当にありがとう!」(真田広之、エミー賞 主演男優賞受賞時のコメント)
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