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『007 カジノ・ロワイヤル』監督、歴代ボンドの「ユーモア」が恋しい ─ ダニエル・クレイグ版は「ずっとシリアス」

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
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『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』をもってジェームズ・ボンド役を卒業するダニエル・クレイグによる『007』シリーズは、歴代にはなかったシリアス路線を貫いてきた。2006年公開の『007 カジノ・ロワイヤル』で寡黙で冷酷な新しいボンド像を打ち立てたのは、ピアース・ブロスナン版第1作『007 ゴールデンアイ』(1995)を手がけたマーティン・キャンベル監督。今となっては初代ショーン・コネリーや3代目ロジャー・ムーアらの映画で見られたユーモアも恋しいようで……。

ダニエル・クレイグ版の『007』シリーズは、それまでの作品からのリブートを図り、原作小説第1作『007 カジノ・ロワイヤル』を最初に映像化した。同書では、ボンドが恋に落ちたMI6所属の女性ヴェスパー・リンドが二重スパイであったことが判明し、最終的に彼女は自決してしまう。映画版でも、一部設定は異なるものの同様のプロットが踏襲され、ボンドは最愛の人を失うのだった。2代目ボンドのジョージ・レーゼンビーによる幻の1作『女王陛下の007』(1967)でも最愛の人を殺されるボンドが描かれたが、クレイグ版ほど“悩めるボンド”に迫ったシリーズは無いだろう。

今でこそダニエル版ボンドのイメージは定着しているが、彼以前の5人によって演じ分けられてきた歴代シリーズでは、陽気で小洒落たジョークを繰り出すボンドの印象が強かった。米PopCultureにて、「『007』はより冷徹で辛いものになったので、(『カジノ・ロワイヤル』で)一変しました」と語るキャンベル監督は、ダニエル版について「これまでよりもずっとシリアスで(ボンドの)内面を浮き彫りにしたものになっている」とその異色さを語る一方で、「かつてのボンドに見られたユーモアの要素が少しだけ恋しいです」とも話している。「ある意味では、そう認めないといけないですね」。

ダニエル版については、キャンベル監督のほかに『007 スカイフォール』(2012)までM役を演じ続けたジュディ・デンチも「少し暗い」「脚本があまりファニー(funny)じゃない」との持論を展開していた。他方、2人ともボンド役のダニエルについては「彼は素晴らしい仕事をした」と口を揃え、発言に悪意があるわけでは全くないようだ。

このダニエル版ボンドも『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』をもって終わりを迎える。元々は前作『007 スペクター』(2015)での引退を考えていたダニエルは、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』への復帰を決意した理由として、「『カジノ・ロワイヤル』に始まった何かを終わらせるため」と語っていた。ボンドがヴェスパーの死をきっかけにずっと抱えてきた心のつかえに、何らかの形で終止符が打たれるのである。

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Source: PopCulture

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。