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【インタビュー】『1917 命をかけた伝令』撮影監督ロジャー・ディーキンス「私はただ、目の前のものを撮っているだけ」

1917 命をかけた伝令
(C) 2019 Storyteller Distribution Co., LLC and NR 1917 Film Holdings LLC. All Rights Reserved.

第77回ゴールデングローブ賞で作品賞(ドラマ部門)・監督賞に輝き、第92回アカデミー賞で3部門を受賞した、名匠サム・メンデスによる1917 命をかけた伝令が2020年2月14日(金)に公開される。本作の見どころは、オープニングからラストシーンまでがひとつながりのように構成された「ワンカット映像」。戦場に放り込まれたかのような異次元の映画体験を実現させたのは、本作でアカデミー賞撮影賞に輝いた撮影監督のロジャー・ディーキンスだ。

1970年代にドキュメンタリー作品でキャリアをスタートさせ、2017年『ブレードランナー 2049』で初めてオスカー像を手にしたロジャーは、『ショーシャンクの空に』(1994)や『ノーカントリー』(2007)、『007/スカイフォール』(2012)などで受賞以前にもアカデミー賞に13度ノミネートされた“巨匠”。公開に先がけて、THE RIVERは『1917』製作の舞台裏をロジャー・ディーキンスに訊いた。

1917 命をかけた伝令
(c)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

『1917』ワンカット映像ができるまで

──『1917』を「ワンシーン・ワンカット」として製作すると聞いた時、どう思われましたか?

(サム・メンデス監督から)説明はありませんでした。何も言わずに脚本が送られてきて。だけど、脚本の表紙に(ワンシーン・ワンカットとして見せると)書いてありました。でも、それはいわゆる説明の方法にすぎないのかなと、そういうギミックみたいなものかなと思って、私のほうはちょっと疑っていましたよ。だけど脚本を読んだら、彼がやりたいことは分かりました。それこそが脚本の本質というべきものだったので。

──全編を長回しのように見せるうえでは、同時に「すべての瞬間を美しく見せる」ことが課題になると思います。そのために、すべてを事前にリハーサルしたのでしょうか? 撮影現場での偶然性に委ねたところもありましたか?

何ヶ月も何ヶ月もかけて計画を練りました。どういう風に撮りたいのか、カメラの動きをどうするのかを(スタッフの間で)計画してから、俳優と一緒に、また数ヶ月間も計画を立てていったんです。どんなふうにセットを建てるのか、という問題もありましたね。つまり、脚本のセリフを言うのにどれくらい時間がかかるのか、塹壕の中でどう動くのか、ということを(セット作りのために)すべて把握しなくてはいけなかった。それにぴったり合う形で、塹壕を作らなければいけないんです。

1917 命をかけた伝令
©2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

──リハーサルはすべて実際の撮影現場で行われたのですか?

撮影スタジオと実際のロケーション、その両方で撮りました。セットが建てられる前に、実際のロケーションでもリハーサルをしています。たとえば、農家や果樹園を作ることが決まっている場合は、それらを作る予定の場所へ行き、リハーサルをして、(動きに合わせて)現場に線を引いていく。俳優と一緒にリハーサルをして、セットをシーンに合わせるんです。どのようにセットを建てるのか、どんなふうに塹壕を掘るのかということは、すべて事前に計画されています。

──ぱっと見では分からないけれども、実は非常に撮影が難しかったというシーンを教えてください。

どのシーンもそれぞれ難しかったですよ(笑)。シンプルに見えていても、たとえば人が塹壕を走るのを正面から撮るとしたら、そのスピードで逆走しながら撮影するのはすごく大変。それから、撮影のために特別な装置を作らなければいけないこともありました。壊れた橋を渡る場面も非常に難しくて、クレーンを4台用意して、カメラをワイヤーで吊って、コンピュータで制御してね。(本作では)いろんな装置をたくさん使っていますし、それぞれのシーンがチャレンジでした。

それから、いくら全編長回しといっても、本当にすべてがワンカットというわけではありません。だから非常に大切だったのは、「どこでカットをかけるのか」ということ。繋ぎ目をすべて決めてから撮らなければいけなかったし、あらゆる要素をワンカット(というコンセプト)にどう適合させるのかを計画するのも大切でした。

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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