Menu
(0)

Search

『アイアンマン』2008年のトニー・スタークは2018年の観客にハマらない?『ブラックパンサー』脚本家が自説を展開

マーベル
※画像はイメージです。

時代の転換期にあって、映画のキャラクターは想像もつかない速度で社会にそぐわないものとなってしまうのかもしれない。
映画『ブラックパンサー』で共同脚本を担当したジョー・ロバート・コールが、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第1作『アイアンマン』(2008)で描かれたトニー・スターク像は現代の観客にうまくフィットしないのではないかという自説を述べた。

『アイアンマン』から10年、時代を経て変わったもの

映画・音楽・インタラクティブをテーマとした巨大フェスティバル「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)」にて、ジョーは「スーパーヒーローの科学(Superhero Science)」と題されたパネルイベントに登壇。
そこで観客から「スーパーヒーローの価値観には現代の文化を反映したり、具現化したりするんですか?」と問われたジョーは、「僕たちの生きている現在、ここ(アメリカ)には熱意や知性のない大統領がいて、世界にはヒビが入り始めているわけです」と述べ、ドナルド・トランプ米大統領に対する厳しい批判から回答を始めている。

「トニー・スタークについて考えましょう。彼は思い上がった男で、それでオーケーです。ただ、もしもスタークが現在の映画で誕生したとすれば、僕はこんな反応なんじゃないかと思うんです。“ああ、クールだね。思い上がってて、女性に失礼……それでいいんじゃない”って。僕たちは(当時とは)別のところに来ている。もっと良いところに来てると思いますよ。」

どんな映画も社会情勢や政治的背景を完全に切り離すことができない、それが大作映画であればなおさらだとすれば、コミックに忠実な2008年のトニー・スタークが仮に2018年のハリウッドで誕生したとして、そのキャラクター造形は一体どんな人物に重ね合わせられるだろうか。そして、どう受け止められるのだろうか。

もちろん『アイアンマン』で描かれたトニーには、「思い上がった男」「女性に失礼」と捉えうる以外にも複数の側面が存在し、またMCUのストーリーが進行するにつれて、彼は人間としてもヒーローとしてもあざやかな成熟を遂げていく。
ここでジョーが指摘したのは、あくまでヒーローのオリジン・ストーリーを描く大作映画の主人公として当時のトニー・スタークが現在どう映るのかという点であり、キャラクター性そのものの否定ではない。さらにいえば、2008年のトニー像は現在のハリウッド映画で成立しないという主張でもないだろう。ただ、2018年の観客にきちんとフィットするかしないかでいえば、後者なのではないかというだけだ。10年という年月、価値観の変化は、それほどまでに観客の視線にも影響を与えうるのである。

Source: Indiewire

Writer

アバター画像
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly