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【レビュー】『355』豪華女性エージェント、国も立場も超えチーム結成 ─ 世界を股にかけるスパイ・アクションに飛び込もう

355
©2020 UNIVERSAL STUDIOS. ©355 Film Rights, LLC 2021 All rights reserved.

世界5カ国の女性エージェントが国境も属性も立場も越えて手を組む豪華絢爛スパイ・アクション355は、キャスティングの時点で既に強力だ。ジェシカ・チャステインを筆頭に、ペネロペ・クルスルピタ・ニョンゴダイアン・クルーガーファン・ビンビンエドガー・ラミレス、そしてセバスチャン・スタン!どこを切り取っても華やかでスペクタクルな国際ミッションに飛び込もう。

世界を股にかけるこのスパイアクションで、観客は美しく力強い、そして個性あふれる女性エージェントたちと共に、陰謀うごめく裏社会の巨悪に迫るスリリングな旅に出掛けることになる。『355』の鮮やかなチームが追うのは、最先端のアルゴリズムが組み込まれたデジタル・デバイス。あらゆるセキュリティを潜り抜け、世界中のインフラや金融システムなどを自由自在に操ることができると言う危険極まりないシロモノだ。このデバイスが裏社会に流れてしまえば、たちまち世界秩序は脅かされ、第三次世界大戦さえ誘発しかねない。

映画では、このデバイスを巡って国々と善悪がもつれあう、壮絶な奪還戦が繰り広げられる。冒頭ではCIA諜報員役のメイス(ジェシカ・チャステイン)とニック(セバスチャン・スタン)が新婚カップルを装ってフランス・パリのオープンカフェで交渉に挑むというオシャレでスリリングなミッションが描かれ、そこにドイツからの刺客マリー(ダイアン・クルーガー)が飛び込んでくることによって、デバイス奪還戦は一筋縄では行かなくなる。やがて、対立しあう立場でありながら共通の敵を持つことに気付いたメイスとマリーは、本作のキャッチコピー「敵の敵は味方」の通り手を組むことに。そこに、アフリカ系のテック担当のハディーシャ(ルピタ・ニョンゴ)やスペイン系の心理学者グラシエラ(ペネロペ・クルス)の協力も加わり、国境を超えたチームで動くことになる。アジアからは、謎めいた中国人エージェント、リン・ミーシェン(ファン・ビンビン)も出現し、デバイス奪還劇はますます混戦。果たして、結束した女性エージェントたちは命がけのミッションを成し遂げることができるのか。そして、思いもよらない黒幕の存在とは……。

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©2020 UNIVERSAL STUDIOS. ©355 Film Rights, LLC 2021 All rights reserved.

もっと華やかに、もっとハードに

各国出身のエージェントが集まるため、舞台が世界各地でテンポよく切り替わる『355』は、それでいてスパイ・アクションものの魅力がまとまっている。もともと「『ミッション:インポッシブル』『007』シリーズのような本格派のスパイ・アクションを、オール女性キャストで作りたい」というジェシカ・チャステインのアイデアが基となって製作された本作だけに、アクションシーンはスピーディーかつ大胆で、その鮮やかさに男女の区別はない。スタント・コーディネーターを務めたのはジェームズ・オドネルで、彼はスタントマンとして『ボーン・アルティメイタム』(2007)『007 スカイフォール』(2012)に出演していたほか、『キングスマン』(2014)や『コードネーム U.N.C.L.E.』(2015)などの現場でコーディネーターも務めた熟練者。本作では、自らスタントに意欲的だったチャステインを「ジェイソン・ボーン、ジェームズ・ボンドに仕立てた」といい、なるほど本編では彼女たちの気概を存分に見ることができる。

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©2020 UNIVERSAL STUDIOS. ©355 Film Rights, LLC 2021 All rights reserved.

ヨーロッパの狭い路地で繰り広げられる、飲食店のテーブルを蹴散らしながらの追走劇から、開けた埠頭での撃ち合い、薄暗い倉庫での一対一の肉弾戦に、マシンガンのけたたましい乱射音が混じり合うダイナミックな銃撃戦。さらに、デジタル機器を駆使したハッキングや、隠しメッセージを送ったり、イヤーモニターで密かに交信しながら潜入したりといった『オーシャンズ』シリーズのようなハラハラドキドキの任務など、『355』には、スパイ・アクション映画に求められるあらゆる見せ所がリズミカルに詰められている。

なんといっても本作のポイントは、従来ならば主に男性が演じてきたようなキャラクター、つまり銃や格闘術を駆使する凄腕エージェントや、テクノロジーを駆使してあらゆる情報システムに潜入するテック担当までを、各国を代表する女性たちが鮮やかに演じている点だ。アメリカ系、スペイン系、ドイツ系、アフリカ系、そしてアジア系と、個性豊かな彼女たちの勇姿がスクリーンに代わる代わる映し出されていく様子は圧巻。特にオークション・パーティーに潜入する場面で、彼女たちが華やかなドレスやスーツに身を包み、並んで会場に乗り込んでいくシークエンスの絵力には目が眩む。

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©2020 UNIVERSAL STUDIOS. ©355 Film Rights, LLC 2021 All rights reserved.

『355』はそればかりでなく、『アベンジャーズ』や「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」のウィンター・ソルジャー/バッキー役でお馴染みのセバスチャン・スタンも出演している。スタンが演じるニックは、ジェシカ・チャステイン扮するメイスのパートナー役という設定。もともとは仕事仲間だったが、新婚カップル役を偽装するという任務が割り当てられた時、2人は疑似恋愛から一歩踏み出したような、非常に複雑で曖昧な関係となる。マーベル作品で数々のアクションに挑んできたスタンは、本作でもスリリングなミッションに参戦している。「こんなセバスタが見たかった」と、「こんなセバスタ見たことない」が入り混じった、ジューシーなセバスタ像が楽しめる。

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©2020 UNIVERSAL STUDIOS. ©355 Film Rights, LLC 2021 All rights reserved.

しっかり楽しめる良質なスパイスリラー

タイトルの『355』は、かつてアメリカ独立戦争時に初代アメリカ合衆国大統領ジョージ・ワシントンの諜報機関で中枢的役割を果たした実在の女性のコードネームという、歴史が残したミステリーに基づいている。史実の“355”は今もなおその正体が全く謎だというが、本作はそのレガシーを受け継ぎ、女性たちをささやかに祝福する意図も込められている。「355というタイトルの映画は、認識されていない女性たちに対する敬意なのです」と、製作も兼任したジェシカ・チャステインは解説している。「彼女たちのパワー、強さ、達成したことを詳しく説明し、『ありがとう』と言っているのです」。

監督・共同脚本は、『X-MEN』映画シリーズの立役者で、『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019)で長編監督デビューを飾ったサイモン・キンバーグ。主演のチャステインとは『ダーク・フェニックス』でも共にしている。ちなみにマーベル作品関連で言えば、ルピタ・ニョンゴも『ブラックパンサー』(2018)ナキア役でお馴染みだ。

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©2020 UNIVERSAL STUDIOS. ©355 Film Rights, LLC 2021 All rights reserved.

男性的だったスパイ・アクションものを、ハードなフィジカル面をそのまま女性に置き換えて派手に描くという試みは野心的であるものの、『355』はあくまで一本のスパイ・アクション映画としての魅力を真っ直ぐに追求している。本作はもともと2021年1月に公開予定だったが、米公開はコロナ禍のためまる1年延期されていた。既に『ワンダーウーマン』や『ブラック・ウィドウ』などが公開された今、取り立ててこのジャンルにおいて新時代的だと思わせる要素は少なく、実際のところ海外の批評家らもこうした点を口々にしている。しかし米Indie Wire[1]が評するように、『355』の女性たちが「“良質なスパイスリラー”を作るというそもそもの約束を果たす能力があることは間違いない。だからといって、より進歩的な要素が目玉となる必要はない」のである。つまり本作は、見応え十分のアクションとスリルが詰まった、豪華キャストによるスパイ映画としての役割を存分にこなしているのだ。企画発表時にはシリーズ化も目指すと伝えられていただけに、物語はより深い広がりを予感させるようなところもある。日本公開は2022年2月4日。「洋画アクション」でスカッとしたい観客が選ぶべき作品になっている。

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©2020 UNIVERSAL STUDIOS. ©355 Film Rights, LLC 2021 All rights reserved.

映画『355』は2022年2月4日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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