人気SF『三体』ドラマ化、Netflix版よりも先に本国版が配信スタートか ─ 米中関係を踏まえ、原作者が意見

SF作家・劉慈欣(りゅう じきん)による大ヒットSF小説『三体』3部作がNetflixでドラマ化されることが大きな話題となっているが、発祥の地である中国では複数の『三体』映像化企画が進んでいる。このたび中国の通信大手テンセント社が製作するドラマ版の予告編が公式Weibo(SNS)アカウントにて公開された。
テンセントによるドラマシリーズは現在、配信開始日の発表が中国国内で待たれているところ。同シリーズの配信時期について原作者の劉は、政治的緊張の高まりもたびたび見られる米中のライバル関係が絡んでいると考えているようだ。米Varietyによれば、劉は「中国はドラマ版を(ハリウッド版より)先にリリースするかもしれない」といった私見を地元メディアに話したという。
報道によれば、テンセントは『三体』の小説第1作が刊行された2008年に映像化権を獲得。2020年7月には撮影が開始されるなど、Netflix版よりもずっと早くから企画を始動させていた。予告編の公開にあたり、VarietyはテンセントのWeiboアカウントに寄せられたユーザーのコメントを一部紹介。なかには「頑張れ!Netflixのナンセンスなバージョンに負けるなんてダメだ」と、国家間競争を意識したコメントが寄せられていたという。さらにVarietyは「国家主義者のユーザーは、中国によって製作されたものしかストーリーの本質を捉えることができないと主張している一方で、小説は文化大革命を舞台にしており、それが中国を語り直す上で検閲の問題を起こしかねない」とコメント欄の論調をまとめている。
小説『三体』は、文化大革命で父親を惨殺されたことから女性科学者の葉文潔(イエ・ウェンジエ)が、巨大パラボラアンテナを備える軍事基地に雇われ、人類の運命を握る極秘計画に接触する物語。Weiboに寄せられた中国人ユーザーの意見の通り、ストーリーは中国の歴史的背景に依拠しているため、他国で映像化する際は脚色の可能性が生じるだろう。
そうした中、Netflix版『三体』については、2021年10月下旬に主要キャスト12名が決定するビッグニュースが報じられたばかり。ストーリーの詳細は分かっていないが、撮影は2021年中にも開始される見込みだという。中身を見ないことには何も言えないが、Netflix版の予告編が公開された暁には、中国国内の反応は気になるところだろう。
なお、テンセント版に加えて、『三体』の映像化企画は中国国内で少なくとも2つ進んでいるという。一つは原作小説の知的財産権を所有する国内最大級のゲーム企業Yoozoo Groupによる映画化企画。Netflix版は、このYoozoo Groupから英語版翻案権を獲得している。そしてもう一つは、動画プラットフォームbilibili上でのアニメシリーズ企画とのことだ。
『三体』3部作は、中国にて、2008年に第1作『三体』が刊行され、2010年までに『三体II:黒暗森林』『三体III:死神永生』の3部作となった。3部作で2,100万部以上を売り上げ、世界各国でもベストセラーとなったほか、2015年にはヒューゴー賞を受賞。日本でも2019年7月に第1作、2020年6月に第2作が早川書房より邦訳され、大ヒットとなっている。
Source: Variety