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日本でも人気の海ドラが打ち切り直後に復活、新シーズン決定 ─ 「経済的な理由」で見放されたタイトルに救済

9-1-1 LA救命最前線
(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

米FOXの看板ドラマ「9-1-1: LA救命最前線」(2018-)は、シーズン6をもって同局での放送が打ち切られた。シーズン7からはネットワーク(放送局)を米ABCへと移す予定だ。本作は放送開始以来、18~49歳の層で高い視聴率を維持し、FOXで最も人気のあるドラマとして知られている。なぜ、同局で打ち切りの判断が下されたのだろうか?

「9-1-1: LA救命最前線」は、911番(緊急通報ダイヤル)に届く様々な通報を受け、現場に飛び込んでいく消防士や救命士、警察官のスリリングな救出劇を描くドラマ。『ブラックパンサー』シリーズのアンジェラ・バセットをはじめとする豪華キャスト、チームの人間模様や派手な演出など見どころは多い。2020年からはロブ・ロウ主演のスピンオフ「9-1-1:LONE STAR」が放送されている。

「9-1-1: LA救命最前線」の打ち切りが最初に報道された際、その原因は高額なコストと考えられていた。本作の1話あたりの制作費は900万ドル~1000万ドル。加えて、番組を所有する20th テレビジョンが2019年にディズニーの傘下に入って以来、FOXはライセンス料も支払わなくてはならない。つまり同局は「9-1-1」の制作費がかさみ、相応の利益が得られなくなったのではないか、という見方だ。

Fox Entertainmentのロブ・ウェイドCEOは5月15日(現地時間)、「9-1-1」の打ち切りについて言及。アップフロント・プレゼンテーション(広告主向けのラインナップ発表会に先立ち)に先立ち行われた報道陣との電話会議で、キャンセルの背景に経済的な理由があることを認めた。

「番組に対する見方は、2通りあります。まず第一にクリエイティブの観点から、我々がどれだけ(その作品を)作りたいかということ。そしてもうひとつは、その経済性です。テレビの新時代を迎えるにあたって、この番組(「9-1-1」)では経済的にうまくいかないと思ったのです。その結果、我々にとってこのビジネスモデルは適切でないと判断し、20th テレビジョンが番組を引き取ることになりました」。

ウェイド氏はまた、この決定は「1年前」に下されたものであり、それを知ったのは「10月にCEOに就任した時」だった、と明かしている。

なお、本家「9-1-1」は20th テレビジョンの姉妹ネットワークABCに移るが、スピンオフ「LONESTAR」は新シーズンもFOXでの放送を継続。よって、両作品のクロスオーバーは「極めて低い」とのことだ。

「9-1-1」のほかにも、最近キャンセルされた後にシーズン更新が決定したシリーズがある。米CBSの人気ドラマ「S.W.A.T. 」(2017-)だ。

S.W.A.T.
© 2020, 2021 Sony Pictures Television Inc. and CBS Studios Inc. All Rights Reserved.

Deadlineによると、「S.W.A.T. 」のキャンセルも経済的な理由によるもの。ここ数年の「S.W.A.T. 」のシーズン更新では、CBSからソニー・ピクチャーズ・テレビジョンに対するライセンス料が据え置きとなっていた。これによってソニー側は、「予算がますます圧迫され、番組の利益率はさらに減少」していた模様。固定額のライセンス料で「S.W.A.T.」の新シーズンを制作することは、「財務モデルを損なう」ため難しくなったという。

その後CBSはライセンス料の引き上げを申し出たが、その代わりエピソード数の削減が条件に盛り込まれていた。両者は合意に至らず、一度は打ち切りの決断が下されることとなった。しかし、打ち切りの発表後すぐに「S.W.A.T. 」ファンから猛反発を受け、CBSとソニーは交渉を再開。最終的に、全13話から成るシーズン7(最終シーズン)への更新が決定した。

近年、ストリーミングとネットワークの両方でドラマの打ち切りが相次いでいる。Netflixでは「ミッドナイト・クラブ」や「1899」、「シスター戦士」など早期打ち切りとなるケースが頻発し、米CWでは「レジェンド・オブ・トゥモロー」や「BATWOMAN/バットウーマン」といったDCドラマが打ち切られ、ファンは騒然となった。

こうした状況は、米国内で視聴習慣に大きな影響を与えている。「物語が未解決のまま打ち切りになる可能性への懸念」を抱く視聴者が増え、「米国人の46%が観始める前にシリーズの完結を待つことがある」との調査結果が出ているのだ。ともあれ、救済されないシリーズが多い中で、日本でも人気の高い「9-1-1」と「S.W.A.T」が救済されたことは朗報といえるだろう。

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Source:The Hollywood Reporter,Deadline(1,2,3)

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KyokoKyoko Okajima

アメリカ留学、大手動画配信サービスの社員を経て、ライターに転身。海外ドラマが大好きで、永遠のNo.1は『ブレイキング・バッド』と『ベター・コール・ソウル』。