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2019年アカデミー賞、撮影賞などの生中継見送りに抗議相次ぐ ─ ギレルモ・デル・トロ、アルフォンソ・キュアロン監督らも

アカデミー賞
Photo by Prayitno https://www.flickr.com/photos/prayitnophotography/6883792695/

2019年2月24日(米国時間)の第91回アカデミー賞授賞式で、撮影賞・編集賞・短編実写映画賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞の4部門がテレビでの生中継から割愛されることについて、業界内から抗議の声が相次いでいる

アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーと、授賞式の中継を担当する米ABCは、テレビ中継の放送時間を短縮するためにこの方針を決定。該当の4部門はテレビでは生中継されず、受賞者の発表やスピーチの様子は、番組中に映像を編集した形で放映される。なお2020年以降、生中継で割愛される部門は持ち回りで毎年変更される予定だ。

この方針そのものは2018年8月の時点で発表されていたが、このたび割愛される部門が発表されたことを受けて、映画芸術アカデミーやABCに対する批判が再び高まっている。

ギレルモ・デル・トロ、アルフォンソ・キュアロン監督も

今回の発表を受けて、全米撮影監督協会のキース・ヴァン・オーストラム氏は米Varietyにて声明を発表。協会の所属者から怒りの声が上がっていることを明らかにし、このように述べている。

「私たちは映画製作を、監督や撮影監督、編集者、そのほか技術職の責任が時に重なり合った協力的な取り組みだと考えています。今回の決定は、こうした創作のプロセスを切り離して分割するもの、そして私たちの基本的な創造的貢献を非常に小さく評価するものとして受け取られるでしょう。

映画芸術科学アカデミーは、私たちの芸術性を世間に対して示す重要な機関です。91年前に組織が結成されて以来、アカデミー賞は撮影監督の才能と技術、映画製作への貢献を称えてきました。しかし私たちは今回の決定について、抗議することなく、静かに見過ごすことはできません。」

この声明と響き合うのは、『ROMA/ローマ』(2018)が最多10部門にノミネートされ、自身も撮影賞候補となっているアルフォンソ・キュアロン監督と、昨年(2018年)のアカデミー賞にて『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)で作品賞・監督賞などを射止めたギレルモ・デル・トロ監督によるコメントだ。

アルフォンソ・キュアロン
「映画史において、サウンドのない、色彩のない、物語のない、俳優のいない、そして音楽のない傑作は存在します。しかし、撮影と編集のない映画は一本たりとも存在しません。」

ギレルモ・デル・トロ
「授賞式の夜、コマーシャルの最中にどの部門をやるべきかと提案する意志はありません。しかしながら、お願いします。撮影と編集はわれわれの作品の大きな要なのです。これらふたつは、演劇的あるいは文学的伝統を継承したものではありません。映画そのものなのです。」

「逆に考えれば、素晴らしいものになっていた」

今回の決定については、ほかにも多くの業界人たちが抗議の声をあげている。『Never Look Away(原題)』でノミネートを受けている撮影監督のキャレブ・デシャネル、同じく撮影監督で『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)『レヴェナント:蘇えりし者』(2015)にて栄冠に輝いたエマニュエル・ルベツキや『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)のスティーブ・イェドリン。映画監督のリード・モラーノやドレイク・ドレマス、『クワイエット・プレイス』(2018)脚本家のスコット・ベック&ブライアン・ウッズ、俳優のラッセル・クロウらも続々とコメントを発表した。

アメリカ衣装デザイナー組合のレイチェル・スタンリー氏は、「技術職の受賞者4人をコマーシャルの時間へと追いやる決定を残念に思います。ノミネートされた方々と受賞者の価値ある仕事を貶めるもの、その技術に対するひとつの侮辱です」との声明を発表している。

そんな中、『ダンケルク』(2017)で2018年の編集賞に輝いたリー・スミス氏の指摘は、群を抜いて中立的かつ理性的といっていいかもしれない。「アカデミー賞にノミネートされ、授賞式に行けることは非常に特別で、本当に貴重なことです。直前になって、自分の部門がコマーシャル中に行われることがわかるのは残念なものです」。スミス氏は、テレビ中継におけるコマーシャルの時間とは、授賞式の参加者にとっての休憩時間であることにも言及している。

「(アカデミーの方針は)良くない計画です。逆に考えれば素晴らしいものになっていたでしょう。別の方法で時間を見つけるべき、形式を少しだけ変えるべきです。私は編集者ですから、なにかを短縮する方法は数えきれないほど思いつきます。」

なぜ撮影賞・編集賞という主要部門が生中継から省かれるに至ったのか、その理由には諸説ある。有力なのは、映画芸術アカデミーの会長であるジョン・ベイリー氏が撮影監督であること、その妻カール・リトルトン氏が編集者であることから、新方針の初回は自らの職域を対象に選んだのであろうというものだ。いずれにせよ今後、生中継されない部門が持ち回りになる以上、その選定経緯が明かされることも求められるだろう。

ギレルモ・デル・トロは自身のTwitterにて、生中継されない4つの部門についてのアカデミーからの回答を紹介している。いわく「4つの部門は例年通り、授賞式の中でも途切れることなく進行される」、「トニー賞の授賞式が長年取り組んでいるように、わずかに編集され、番組へと挿入される」、「それらはシームレスに行われるため、多くの視聴者は気づかないと思われる」とのこと。現状、まずは授賞式の生中継がどのような仕上がりになるかが一番の問題となる。

なにごとであれ、新たな取り組みに批判が噴出するのは決して珍しいことではない。しかし繰り返しになるが、いくつかの部門コマーシャル中に発表するという方針は2018年夏から公表されており、その時点でなんらかの部門が生中継されないこと、いずれかの候補者と候補作品がその対象となることは明らかだったことを忘れてはならない。なぜ今の段階でこれほど大きな批判の声が上がることになったのか、なぜ同じく割愛される短編実写映画賞への言及が極端に少ないのかという点については議論の余地があるだろう。各部門の受賞者はもちろんだが、作品そのものが生中継から見送られてしまうことに対する、短編映画の作り手たちの無念は想像するに難くない。

第91回アカデミー賞授賞式は2019年2月24日(米国時間)に開催予定。なおインターネットでのストリーミング配信では全部門が同時中継される。

アカデミー賞 公式サイト(英語):https://oscar.go.com/

Sources: Variety(1, 2), IW

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。わかりやすいことはそのままに、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすくお伝えしたいと思っています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp へ。

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