「ポップコーン食べるのも気まずい」映画の無音シーン ─ 静寂の魔術師フェデ・アルバレス、『エイリアン:ロムルス』でこだわった静寂の演出

映画館といえば、こだわりの音響システムで映画の迫力を楽しむことができる空間。だからこそ、“無音”のシーンの緊張感も際立つものだ。あなたも劇場で映画を鑑賞した際、「ポップコーンを食べ進める手を止めなくてはならなかった」というほどのシンとした緊張感を味わったこともあるのでは?
この引き算の演出を得意とするのが、“静寂の魔術師”フェデ・アルバレス監督だ。代表作『ドント・ブリーズ』(2016)では、盲目の老殺人鬼から逃れるため、決して音を立てずに身を潜めるハラハラドキドキの緊張感で観客を魅了。監督の最新作『エイリアン:ロムルス』でも、得意技だという静寂シーンを効果的に取り入れているという。
実はアルバレスが静寂シーンの効果に気づいたのは、偶然がキッカケだった。2013年の監督作『死霊のはらわた』を編集していた際、環境音のトラックがたまたまミュートされてしまっていたことで、無音の魅力に気づいたのだそう。以来、「ポップコーンを食べる音すらうるさく感じて食べにくくなるほど、映画館の奥深くまで静寂が行き渡って、とても緊張感が感じられる」という無音の演出にハマったというアルバレス。「『ドント・ブリーズ』でも多用しましたよ」と米Colliderに話している。

最新作『エイリアン:ロムルス』も、無音のシークエンスで始めたというほどのこだわり。これを提案した時には「みんなから“こいつイカレてるのか”みたいな目で見られた」というが、過去作で成功してきたことから、絶対にうまくいくという自信があったようだ。むしろ、このテクニックが「あまり使われていないのが意外なほど」と語っている。
なんでも、最初のバージョンでは音が入っていたが、「僕はゼロにしたかった」と監督。「でも映画って、“ゼロ”と言っても、大抵は若干の環境音が入っている。映画の静寂とはそういうものです」。しかしアルバレスがこだわったのは、完全なるゼロ。音響スタッフには完全に無音にするようにと指示をしたそう。「テレビが壊れたのかと思うような無音です。今作で、何度か使っています」。

実際に『エイリアン:ロムルス』でも、『ドント・ブリーズ』的な緊迫シーンが存在。監督は環境音トラックを除去し、「耐え難い静寂」を演出した。静寂シーンについて「僕の得意技です」と話す監督は、「サスペンスを作るときにすごく効果的だと思う」と語った。
静寂の魔術師フェデ・アルバレス監督による『エイリアン:ロムルス』は2024年9月6日、日本公開。
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