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米Amazon発表、1台5万円のFire TV内蔵4Kテレビは「テレビというものの価値観を変える黒船」だ

2017年5月16日、Amazon.comが映画ファン震撼の新商品を発表した。その名も“Amazon Fire TV Edition”。おそらくTHE RIVER読者にも利用者が少なくないであろう、Amazon Fireの機能を内蔵した4Kテレビである。

本商品は2017年6月14日に米国にて発売予定で、すでにAmazon.comでは予約の受付がスタートしている。5月17日現在、日本のAmazon.co.jpで発売のアナウンスはされていないものの、筆者はここに断言したい。もし日本に上陸すれば、間違いなくこの商品は映画ファンの生活を変える、いやテレビというものの価値観を変える黒船である。

Fire TVなしでも注目の低価格

本商品“Amazon Fire TV Edition”の一番のウリは、なんといってもその価格だろう。テレビのサイズは43, 50, 55, 60インチの4種類が用意されており、一番小さい43インチならばその単品価格は449,99ドル(2017年5月17日現在)だ。日本円に換算すると約5万円で43インチの4Kテレビが手に入るのである。たとえばAmazon.co.jpで4Kテレビを検索してみると、国内ブランドの製品なら40インチで約8万円だ。もはやFire TVが内蔵されていなくてもお得な価格設定で、しかも本国ではBluetoothサウンドバーやHDアンテナとのセット販売もある……。

もちろん魅力は価格だけではない。クアッドコアCPU/GPUチップセットや3GBのメモリ、そして16GBのストレージ(USBやSDカードを併用可能)と、少なくとも現行のFire TVを上回るスペックを誇っているのだ。もちろんリモコンは音声操作可能、さらに音声アシスタントAlexaに対応しているなど、すなわち“Amazon Fire TV Edition”は完全に既存製品の上位互換なのである。

ちなみに筆者の場合、すでに自宅のテレビはBlu-ray/DVDやAmazonビデオ/Hulu/Netflixの再生専用機と化している状況だ。そこにきてこの商品を知ってしまえば、もはやテレビを買い換えるタイミングで乗り換えない理由がない。また多かれ少なかれ、そのような状況の人も少なくはないのではないだろうか。

4K Ultra HD Blu-ray普及のきっかけとなるか

ところでここ最近、映画がソフト化される暁には、DVD/Blu-rayのほか4K Ultra HD Blu-rayがリリースされることが少なくない。洋画ならば話題の新作はほぼ確実に4K Ultra HD Blu-ray版が発売されるし、旧作や名作も次々と新形式化されている状況だ。邦画にしても、たとえば昨年(2016年)話題を集めた『君の名は。』『シン・ゴジラ』はどちらも4K Ultra HD Blu-ray版がリリースされている。もちろん肝心のクオリティは、Twitterなどでの評判を見るだけでも折り紙つきだ。

恥を承知で書くが、何を隠そう筆者は、映画について書きながら日々を過ごしているにもかかわらず、きちんと4K Ultra HD Blu-rayで映画を観たことがない。ことによっては「映画館でも再現できない」とすらいわれるその品質を体感したことがないのだ。しかし再生環境を整えるには相応の投資が必要になる。おおむね国内のブランド製品は衝動的思いつきで買える金額ではないし、4K Ultra HD Blu-rayに対応した再生機器も高額だ。

しかしAmazonプライム会員の場合、“Amazon Fire TV Edition”があればボタン1つでプライムビデオの4Kコンテンツをサクッと観賞できることになる。もちろん「新しく4Kテレビを買ってプライムビデオを見る」のと、「格安のFire TV内蔵テレビが4K」なのとでは大きな違いがある。4Kテレビを買う決め手がない者にとって、“格安でFire TVの上位互換”という条件は購入の大きな理由になるからだ。そしてAmazonサイドは、「これならTV Edition買った方がいいじゃん」と思えるようなプロモーションをきっと仕掛けてくるにちがいない。この商品の最も恐ろしいところは、そうやって4Kコンテンツに触れるきっかけがなかった層にも4Kコンテンツの機会を提供しうるところである。

そこで4Kの品質を目の当たりにしようものなら、あとは簡単な話だ。「Blu-rayでは満足できない……」「あの映画が4Kになってる……」などと映画ファンは寝ても覚めてもうわ言のようにつぶやき、辺りを徘徊し、とうとう4K Ultra HD Blu-rayの対応再生機器を買ってしまうことになる。Amazonで

もし“Amazon Fire TV Edition”が日本に上陸した場合、現在200~300万人と推定される日本のAmazonプライム会員のうち何割がこの商品を購入するだろうか。仮にそれが全体の1%にすぎなかったとしても、2~3万人が「ボタン1つで4Kコンテンツを観られる」環境を手に入れるわけである。きっと、おそらく他のメーカーがどれだけ頑張っても簡単には達成できない成果だろう。

“Amazon Fire TV Edition”はテレビの価値観を変える

4KでFire TV内蔵、しかも格安と三拍子そろった“Amazon Fire TV Edition”にも弱点はある。それは、簡単に買い換えの効くFire TV Stickなどに比べるとやはり高価なこと、そしてテレビはそう簡単に買い換えるものではないことだ。

Fire TVシリーズに限らず、現代のガジェットはあっという間にその性能を向上させ、そのたびにユーザーは買い換えを検討することになる。従来のFire TVやFire TV Stickが、TV Editionでは対応しきれないような速度でアップグレードされたとしても、ほかのガジェットと同じ感覚でテレビの買い換えを検討するわけにはいかないのである。少なくとも、今の感覚では。

「今の感覚では」と書いたのは、もしや“Amazon Fire TV Edition”の低価格は「ユーザーが定期的に買い換えること」を前提にしているのではないかという予感があるからだ。この商品を従来のテレビと同じものとは考えず、たとえば5年使って1年で1万円、つまり月800円ほどでコンテンツを観るものだと考えれば、それくらいの間隔で買い換えることはそう不思議ではないだろう。少なくとも筆者の場合、前述の通り、テレビはBlu-ray/DVDやAmazonビデオ/Hulu/Netflixの再生専用機なのであって、もはや地上波の番組を見るものとは考えていないところがある。テレビをそうやって使っている人間が、どうして買い換え方だけは従来のままなのか?

そういえばTechCrunchによれば、現在Amazonビデオには30万本を超える映画とテレビ番組が提供されているという。そして“Amazon Fire TV Edition”のリモコンには、やはり地上波のテレビを見るようなボタンは付けられていない。もしかしてこの商品は、静かに「テレビ」というものの価値観を変えようとしているのではないか……。

思わぬところまで話が膨らんでしまった。ともあれ“Amazon Fire TV Edition”は、非常に低いハードルで4Kコンテンツを家庭に提供するものであり、少なくとも現在Amazonビデオの恩恵にあずかっている人間にとっては、確実に映画の観賞体験を変容させる商品なのである。

“Amazon Fire TV Edition”は2017年7月14日に米国にて発売予定。あれこれと長々と記してしまったが、筆者の言いたいことはたったひとつ、「早く日本でも売ってほしい」これだけである……。

Source: https://www.amazon.com/dp/B072BQFMQG/
http://www.prnewswire.com/news-releases/element-electronics-announces-availability-of-amazon-fire-tv-edition-the-first-smart-tv-featuring-alexa-300458018.html
http://jp.techcrunch.com/2017/05/17/20170516amazon-built-fire-tv-directly-into-a-cheap-4k-set/
http://www.yellowpadblog.com/entry/2017/04/14/amazon_the_number_of_prime_members
Eyecatch Image: https://www.youtube.com/watch?v=YuEa5rZ2DEU

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。