【解説】『X-MEN:アポカリプス』のヴィラン“アポカリプス”の理念─原作では単なる悪役ではなかった
映画『X-MEN:アポカリプス』に登場し、暗躍をみせたアポカリプス。エンジェルの翼を復活させたり、ストームの能力を増加させたり、自分自身は新しい身体に精神を乗り換えたり、砂を操ったりと、計り知れない能力を存分に発揮していたキャラクターだ。
劇中でアポカリプスは、自分が生き埋めにされた時代に比べて現代は腐敗してしまったと嘆き、世界を再生させるために一度世界を破壊しようと目論んでいた。しかし一方で、不幸のどん底にいるマグニートーには手を差し伸べ、ストームにも歩み寄るなど、ヴィランではあるものの、単なる人殺しではなく理念に生きる存在であることを垣間見ることができた。
原作コミックに登場するアポカリプスは、大きな口や頭部こそ映画と共通するが、人とはかけ離れた姿で登場する。ヴィランであるアポカリプスが、コミックで掲げる思想は“適者生存”だ。その思想に沿うかぎり、彼はX-メンの味方をすることもある。今回は、コミックのアポカリプスが登場するエピソードから、彼が完全なる敵役ではなかったエピソードをご紹介しよう。

エピソード① 敵であるX-メンとの共闘
1990年代に発表されたエピソード『エクスキューショナーズ・ソング』では、プロフェッサーXがストライフ(サイクロップスとジーン・グレイの息子のクローン)によって暗殺されかけてしまう。アポカリプスを恨んでいたストライフは、プロフェッサーXの暗殺を試みたあと、復讐のためアポカリプスを殺しに向かうのだった。サイクロップスに倒されて休眠ポッドで回復中だったアポカリプスは、ストライフに全く歯が立たず、X-メンの基地に逃げるのだ。
狙撃されたプロフェッサーXは、弾に仕込まれたテクノオーガニックウイルスに感染していたが、アポカリプスはこれを除去し、X-メンと協力してストライフを倒そうとする。圧倒的なストライフ側の戦力にアポカリプスは敗北するが、この助力によってX-メンは勝利を収めるのだった。
このエピソードのアポカリプスは、映画と異なり少し弱体化している。一緒に戦うX-メンには人情深いところは映画と共通しているだろう。このエピソードは小学館時代に和訳されている有名な話なので、古本屋で見つけることができるかもしれない。
エピソード② 地球を守るため宿敵に手を貸す
同じく1990年代の『オンスロート』というストーリーラインのエピソードである。オンスロートとは、プロフェッサーXと、彼が吸い取ったマグニートーの精神が融合して誕生した最強のヴィランだ。太陽を地球に近づけて破壊しようするオンスロートとの戦いは、マーベルユニバース全体を巻き込んだものとなる。
「我こそが地球を支配するのだ」と考えているアポカリプスは、地球を破壊しようとする、自らよりも強いオンスロートを危険視する。そこでオンスロートを倒すため、宿敵のケーブルに協力するのだ。ケーブルは、サイクロップスとジーン・グレイの子供が未来で成長した戦士であり、アポカリプスとは敵対関係にある。
オンスロートは自分の力を高めるため、現実改変能力をもつフランクリン(Mr.ファンタスティックとインビジブルウーマンの息子)を自身の体内に幽閉していた。ケーブルとインビジブルウーマンが、フランクリン奪回のため共闘しようとするところに、アポカリプスが助けを申し出る。しかし、フランクリンを暗殺してオンスロートを弱体化しようという真の目的がケーブルにバレてしまい、あっさり反撃に遭ってしまう。ヒーローたちが自己犠牲によりオンスロートを撃退したあと、アポカリプスが「自分の時代が来た」と言ってほくそ笑む姿は必見である。
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