『アバター』ジェームズ・キャメロン監督は『アクアマン』をどう観たか ─ 「私には絶対に作れない映画だ」

ハリウッドで最もアクアマンに近い男、それが映画監督ジェームズ・キャメロンである。
これまで『アビス』(1989)や『タイタニック』(1997)などで海を描いてきたキャメロン監督は、現在製作中の『アバター』(2009)続編で海中の世界を登場させることを明かしている。さらにスキューバダイバー/冒険家としても知られており、海底探査や難破船の調査に取り組んできたほか、潜水艇を使用して“世界最深”のマリアナ海溝に一人で潜った経験も有している。
そんなキャメロン監督は、いま世界各国で大ヒットを記録している映画『アクアマン』をどのように観たのか? 巨匠監督として、海を愛する一人の人間として、その率直な感想が語られている。

「私には絶対に作れない映画」
米Yahoo! Entertainmentの取材にて、キャメロン監督は『アクアマン』を「ものすごく楽しい映画だった」と称えている。そして、自分には作ることのできない映画だとも述べているのだ。
「私には絶対に作れない映画だと思いました。あらゆる物理や現実の感覚から切り離された、夢のような世界でなくてはならないんですから。(『アクアマン』に登場するのは)ギリシャ神話とおとぎ話の中間のような世界ですよね。」
『アクアマン』を手がけたジェームズ・ワン監督は、海底王国アトランティスをいかに実写映像として構築するかに精力を傾けた。細部まで緻密に作り込まれた世界観はコミックファンや映画ファンから大きな支持を受けたが、実際の海に親しんできたキャメロン監督にとっては、自身のポリシーと一致しない点もあったようだ。
「私は水中で長い時間を過ごしてきました。だから自分の知る水中の風景にとてもこだわりがありますし、(映画に登場する海は)リアルに見えるべきだと思っています。ですから、(『アクアマン』は)楽しい映画でしたが、リアルに見えなかったので、心には響きませんでした。」

キャメロン監督は、映画監督であり、ダイバーであり、また環境保護にも強い問題意識をもって接している人物である。それゆえ『アクアマン』における海の表現については、「現実の海を理解し、探求し、守るという課題のためにならないと思います」と厳しい視線も向けた。しかしながら監督は、決して作品への批判に終始しているわけではない。
「(『アクアマン』には)きちんと鯨が登場しますし、われわれが海をトイレやゴミ箱のように扱っていることを思わせる要素も出てきます。そういう部分には、大きな賛辞を贈りたいと思います。」
ちなみに『アクアマン』は全世界興行収入10億ドルを突破しており、ジェームズ・ワン監督は数少ない“10億ドル超え”のフィルムメーカーとなった。『アバター』『タイタニック』で10億ドルを2度突破しているキャメロン監督は、「10億ドルを超える映画をもう一本作って、三本目が見えてきた時にお話ししましょう」という冗談も口にしている。
2019年2月現在、キャメロン監督は『アバター』続編の製作中。今まさに海中の世界へ挑んでいる監督は、その仕上がりについて、『アクアマン』とは「大きく異なるものになっている」と述べた。『アクアマン』の表現に物申した監督だが、今度は自らの世界観と考え方が全世界に試されるのだ。インタビューでキャメロン監督は、海と水についてこのようにも述べている。
「私は、人が水中をのぞき込むのは自分自身を精神的に成長させるからだと思っています。でも、わかりません。それでいいんですよ、誰もが考えたいように考えるんですから。」
映画『アクアマン』は2019年2月8日(金)より全国の映画館にて公開中。
『アクアマン』公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/aquaman/
Source: Yahoo!