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『ミッドサマー』アリ・アスター、『モービウス』を断っていた ─ 「言っていいのかな、言っちゃいけないかも」

ボーはおそれている アリ・アスター監督来日イベントの写真
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『ミッドサマー』(2019)『ヘレディタリー/継承』(2018)で知られる鬼才アリ・アスター監督が、一度だけマーベル映画のオファーを受けていたことを明かした。

ポッドキャスト「Mixed Signals」に登場したアスターは、かねて噂されていた、マーベル映画就任の噂について尋ねられると、「(オファーは)ありました、一度だけ」と応答。作品名を問われると、「えっ、言っていいのかな、言っちゃいけない気もするけど……」とわずかに逡巡したのちに「『モービウス』です」と認めた。

『モービウス』は、2022年にソニー・ピクチャーズが製作した『ヴェノム』に続く「スパイダーマン」シリーズのスピンオフ映画。天才医師マイケル・モービウスは、長年患っている血液の難病を治療するため、コウモリの血清を自らに投与する危険な実験に手を出す。無事に病は快復したが、モービウスの肉体は変貌。スーパーパワーのかわりに血液を渇望するようになり……。

当初は『イコライザー』シリーズのアントワーン・フークアや『メン・イン・ブラック:インターナショナル』(2019)のF・ゲイリー・グレイ監督に打診された本作は、ジャレッド・レト主演、『ライフ』(2017)のダニエル・エスピノーサ監督のもとで実現。ところが興行収入は世界累計1億6,740万ドル、評価もRotten Tomatoesで批評家スコア15%・観客スコア71%という暗澹たる結果となった。

モービウス
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アスターが『モービウス』を撮る可能性があったと知るや、ポッドキャストのホストは「あなたが撮れば素晴らしい映画になっていたはず。あれは大失敗作だった」と一言。これを聞き、アスターも「私のリストに加えておいてもよかったですね」と冗談めかしながら答えた。

マーベル映画では異色のホラー路線を採った『モービウス』だが、アスターが監督していればどんな作品になったのだろうか? もっとも、オリジナル脚本にこだわり、インディペンデントな映画製作に邁進してきたアスターが、スタジオの映画製作になじめていたかは疑問が残る。

なにしろ『モービウス』を手がけたエスピノーサ監督自身が、のちに『モービウス』での経験に「苦しんだ」かという質問に「はい」と回答。スタジオでの映画製作は「とても難しい。他の監督のほうが適していたのではないかと感じた」と率直に吐露している。「スタジオからは意見が多い人間として知られています。そういう監督を彼らは求めていなかったのかも」。

アスターは自身の作家性を突き詰める方向性でキャリアを築き上げており、ホアキン・フェニックス主演『ボーはおそれている』(2023)に続いては、豪華キャストが結集した現代風刺西部劇『エディントン(原題)』を製作。フェニックスと再タッグを組み、ペドロ・パスカル、エマ・ストーン、オースティン・バトラーという顔ぶれが集まるほどのスター監督となった。

いずれ機が熟したら、アスターが大作映画やスーパーヒーロー作品に挑戦する日も来るだろうか? 今はまだ誰にもわからない。

Source: Mixed Signals

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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