伝説のクソゲー『E.T.』はいかに生まれ、墓場に埋められ、そして発掘されたのか

しかし、バカ売れを見込んで大量製造していたアタリは、売れ残った『E.T.』を数百万本単位で抱えることとなる。そればかりか、アタリと親会社ワーナーは、『E.T.』のライセンス料として当時としては超高額の2,000〜2,500万ドル、現在の価値にして5,300〜6,600万ドルを版権元のユニバーサル・ピクチャーズに支払っていたのである。日本円に直すと66〜70億円ほど。まごうことなき大赤字だったろう。
アタリは当時、『スペースインベーダー』といった大物タイトル移植版がヒットし、大ブームの中心にいた。同社はサードパーティによるソフト製作を認めていたが、これによってノウハウのない他業種のメーカーが続々と参入。粗悪タイトル、いわゆる「クソゲー」が横行することとなり、ユーザーの信頼はガタ落ち。1982〜1983年を境に、ゲームはパタリと売れなくなった。通称、“アタリショック”の到来である。『E.T.』大量の売れ残りと多額のライセンス料により大きな経済的ダメージを受けていたアタリは、この市場崩壊によってついに“ゲームオーバー”、1984年に分割、売却される。
「ビデオゲームの墓場」都市伝説は本当だった
『E.T.』大量の売れ残りはその後、廃棄処分として埋立地に埋葬されたという。残存する記録によると、量にしてセミトレーラトラック10〜20台分のアタリ製ゲーム本体、カートリッジやシステムがニューメキシコ州アラモゴードの地に埋められ、さらにコンクリートで覆われたとのこと。カートリッジのほとんどが『E.T.』であったとされる。
ニューメキシコのある地に、大量のクソゲーが埋められて眠っているらしい……。この出来事および埋立地は「ビデオゲームの墓場」と呼ばれ、いつしかその真偽さえ怪しい“都市伝説”として囁かれるようになっていた。
ところが2014年、これが事実であったことが発覚する。ゲーム『E.T.』を題材とするドキュメンタリー作品「Atari: Game Over」が製作されることとなり、この伝説を検証するために同地の発掘調査が行われたのである。その結果、『E.T.』を始めとするアタリ製ゲームが本当に発掘されたのだった。最も、都市伝説では数十万〜数百万のカートリッジが埋められたとされていたが、実際に発掘されたのは1,178本だった。

写真にあるクシャクシャにひしゃげた『E.T.』発掘パッケージは、当時の大きな期待に応えられず押し潰された様子を象徴するよう。なお、発掘された『E.T.』の一部は、ニューメキシコ州の博物館に展示のため贈与されたほか、eBayのオークションにも出品され、880本が累計107,000ドルで売れたという。
発売から実に30年あまり、大不評や埋葬の憂き目にあった『E.T.』にも、ようやく“オウチ”が見つかったわけだ。
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Source:DP Interviews,Video Game History Foundation,99% Invisible,CBC,Snopes,『ハイスコア: ゲーム黄金時代』第1話「ビデオゲーム革命」