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アベンジャーズがコロナワクチン接種キャンペーンのコミックに

https://www.somosvaccinations.com/

米ニューヨーク市に暮らす黒人、ラテン系、アジア系の人々に向けて、特別なマーベル・コミックが製作された。

ニューヨークでは現在、白人と有色人種との間で新型コロナウイルスのワクチン接種の進捗に差が生じていることが課題となっている。これにはワクチンに対する不信感、接種予約のためのインターネット環境の不備、情報不足が背景にあるとみられている。

そこでニューヨーク市の地域医師ネットワーク・SOMOSは、マーベル・コミックとタッグを組み、有色人種へワクチン接種を啓蒙する限定コミックを発表した。「今こそ、ヒーローになってワクチンを打とう」と、SOMOSのWebサイトでは謳われている。

コミックの表紙には「WE ARE RESILIENT」と描かれている。Resilientとは、困難な状態から回復できる、立ち直ることができる、という意味だ。

コミックの舞台はブルックリン北部のブッシュウィック。「ワクチンを摂取するとDNAが変異する」という情報をSNSで見たと不安視するラテン系の母は、そんなことはないのだと娘に説かれつつ、ワクチンの集団接種会場を訪れている。

一方、街ではヴィランのM.O.D.O.Kが出現し、そこにアベンジャーズが駆けつけている。キャプテン・アメリカにアイアンマン、ハルク、ブラック・ウィドウ、ブラックパンサー、キャプテン・マーベルの6人だ。

これと同時に集団接種会場では、先程の母親が接種を受ける番になっている。接種を急ぎすぎていないかと不安な顔の母に、医師は「どのような状態や人種であっても、また医療保険の事情があっても、誰もが接種の対象なのです」「ワクチンを打てば、コミュニティが安全に保たれます」と語り、娘も「正しいことをしているのよ、ママ」と諭している。

その頃、アベンジャーズはM.O.D.O.Kやその手下たちと格闘を繰り広げ、あっという間に撃退。次のページでは接種会場に戻り、接種を受ける男性が「これで高校に戻れる?」と尋ねている。医師から「多くの人がワクチンを接種し、互いへの思いやりの気持ちを持ち続ければ、すぐに元の生活に戻れますよ」と聞いた男性は、「健康だ!友達に会えるのが待ちきれないや!」と喜んでいる。また、母と共に訪れた娘も接種を済ませ、「K-POPのライブに行きたいから、完全接種をするんだ」と話している。最後にはアベンジャーズも接種会場に立ち寄り、会場で提供されていたププサ(エルサルバドルの郷土料理でパンケーキに似ている)を頬張りながら、キャプテン・アメリカが「みんなで共に」と微笑むコマで終わる。

表紙を含めて全5ページの実際のコミック紙面はSOMOSのWebサイトで閲覧できる。このコミックは有名キャラクターであるアベンジャーズを起用し、ワクチンの接種を奨励するキャンペーンの一貫ではあるが、物語の中でアベンジャーズが直接の奨励を行っているわけではない。ヴィランも接種会場の妨害に現れるわけではなく、ヒーローたちの戦いと市民のワクチン接種はあくまでも全く別の場所で展開されているものだ。はじめは不安だった母が接種を行ったのは、医師や娘の説明に納得したためであり、そこにアベンジャーズやヴィランは一切関与していない。また、ヒーローやヴィランたちのワクチンへのスタンスが描かれているわけでもない。

「SOMOSとニューヨーク市のパートナーシップは、この街がウイルスにアベンジ(復讐)するのに役立っています。大好きなスーパーヒーローがシールドやアーマーを身につけるように、ワクチンも私たち自身や周囲の人々の敵であるCOVID-19から守ってくれます」と、ニューヨークのビル・デブラシオ市長はスーパーヒーローになぞらえて説明している。

マーベル・エンターテイメント社長のダン・バックリーも、「マーベルは実社会にインスパイアされ、それを反映した物語で娯楽を提供してきました」と語っている。「多くのコミュニティがCOVID-19の影響に取り組み続けており、我々としてもニューヨーク市でのワクチン接種の認識と信頼を支援することが重要でした」。

キャンペーンは2020年3月の時点で考案されていたものだったという。このコラボレーションについて「コミックは値段も高くなく、善と悪、そしてその悪とは破壊的なウイルスである、というストーリーが組み込まれていますので、正しい直感だと思いました」と、SOMOS共同設立社のヘンリー・R・ムニョスは寄せている。「アメリカだけではなく世界中の人がコミックというものを知っていますし、アベンジャーズは世界でおなじみです。アベンジャーズに属する最新のスーパーヒーローの中には、有色人種もいます。正直な所、学校に戻ることを不安に思う少年少女や、子どもたちを学校に戻すことに不安なご両親、祖父母に、ヒーローになれる、スーパーヒーローになれるんだと理解していただくことは、かなり重要だと思っています」。

このコミックは2万冊用意され、タイムズスクエアに特設される接種会場でも配布されるということだ。

Source:SOMOS,THR,日本経済新聞

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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