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ある意味最強のクリスマス映画!?今こそ『バットマン リターンズ』を振り返ろう

クリスマスに観る映画といえば…『ラブ・アクチュアリー』、『ホリディ』、『ホーム・アローン』などが定番中の定番中。『グレムリン』なんかもそういえばクリスマス映画でしたね!
アメコミ作品の中で忘れちゃいけないクリスマス映画といえばこれ。1989年公開の映画『バットマンに続く1992年公開のバットマン リターンズ』。監督は前作に引き続きティム・バートンです。

ダークな世界観でおなじみのティム・バートンですが、”クリスマス”というロマンチックな舞台もお気に入りですよね。ジョニー・デップ主演の『シザーハンズ』もクリスマス映画。今回はこの異色のアメコミ作品といえる『バットマン リターンズ』から観る”普通じゃない人たち”のクリスマス、なぜこの舞台がクリスマスなのか、またこの作品の魅力について考察していきたいと思います。

自我の分裂

やはりこのストーリーで大きく描かれているテーマの1つといえば、”自我の分裂”ですね。仮面をかぶることでブルース・ウェインはバットマンに、猫の魔力で蘇ったセリーナ・カイルはキャットウーマンに。

ブルース・ウェインは普段は人と深く関わらずに暮らす孤独な男です。セリーナもキャットウーマンに変身する前は、内向的で周囲とうまく溶け込むことができない。普通の人間の姿をしている時と、仮面をつけた時…本人たちにとっての”ありのまま”の姿は、確実に仮面をつけている時の人格です。舞踏会では参加者皆が仮面をつけているのにも関わらず、2人は素顔で登場していました。

この『バットマン リターンズ』でバットマンをしのぐ存在感をみせているヴィラン、ペンギン。彼の台詞にこんなものがありました。

『バットマン、お前は嫉妬しているんだ。お前は仮面をつけなきゃコウモリにはなれない、でも俺は生まれながらの鳥人間だ』

”普通”を演じている時の方が周囲にうまく溶け込むことのできない。狂っている自分の方が本来の自分。自分に眠る本当の性を肯定することも否定することもできず、周りの”普通”の人との間の溝は埋めることができない…独特な感性を持ち、自身の子供時代も『友達がいなくて孤独だった』と語るティム・バートンだからこそこの”異端な者たち”の苦悩を描くことができるのでしょう。

ティム・バートン流!リア充爆発しろ!

この映画、改めて観ると『リア充ばっか楽しみやがって!爆発しろ!』という風にいろんな所で言っているように思えるのですが私だけでしょうか…。舞踏会や講演の時にペンギンが乱射しまくったり、(ペンギンの小細工によって)バットマンがクリスマスムードに浮かれる街の中を爆走したり…。

普通はとっても暖かく和やかなムードで、人々が家族や恋人と幸せに過ごすクリスマス。だけれど主役の3人は1人ぼっち。セリーナ・カイルの『あなたただいま!いやね、独身だったわ』『そっけないのね。どの男もそうだったわ』という独身女名言集…涙が出てきますね。

このような幸せなムードのクリスマスが舞台だと、”一般的”な雰囲気に溶け込めない”異端”な3人がより際立ちます。『お前らリア充がこんな風に”楽しいムード”を普通にしたせいでこっちはこんな思いしてるんだわ!』といった非リアの気持ちがひしひしと伝わってくるような。

結局は”普通”に溶け込むのではなく ” 異端”な者同士裏でこっそり楽しくやっていく、といった感じですけれども。普通に受け入れてほしいのに、人々にも街全体にもなじむことができず 浮かれた雰囲気の中で1人ぼっちの気分…クリスマス・シーズンという、あえてキラキラモードの季節を舞台にしたことで、より彼らの孤独さが浮き彫りになっているのだと思います。

おなじみの世界観、そして動物の存在

同監督によるこちらもクリスマス映画な『シザーハンズ』。この作品で印象的な場面といえば、ジョニー・デップ演じるエドワード・シザーハンズが降らせた雪の中で、ウィノナ・ライダー演じるキムが舞い踊るシーン。とても美しく スノードームの中に入り込んだかのように幻想的です。

ダークな世界観がお得意なティム・バートンですが、雪景色を描くのも好きですよね。『バットマン リターンズ』でも、ゴッサムシティや動物園に降り積もる雪がとても印象的です。普通は笑顔が溢れる、楽しい場所であるはずの動物園。映画に登場する動物園は退廃しきっていますが、その廃墟の風景と 冷たさと恐ろしくなるような美しさの絶妙な歪み具合。

動物園と下水道、悪党とサーカス団、混沌とした街と雪景色…この”歪み”が、『バットマン リターンズ』の主人公たち、物語の狂い加減をより際立たせています。

この“歪み”の物語に欠かせないのが動物の存在。コウモリ、猫、ペンギン…バットマンもヴィランズたちもみな動物たちと存在が一体化しています。動物は可愛らしく、無垢なイメージが思い浮かべられますよね(コウモリはちょっと不気味ですけれど)。今回のヴィランであるペンギンも、たくさんのペンギンによって育てられペンギンたちに囲まれ、最後の最後にはペンギンたちを出撃させます。

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https://kinozon.tv/stop_kadry/750

悪党がかわいいペンギンに囲まれ、一緒に戦わせようとしている姿はとても滑稽で、愉快で、なんだか切なくなる。

この映画のペンギンだって、元々は皆に受け入れられ、注目を集め、奇人ではなく常人として接してほしかっただけ。

キャットウーマンも復讐に身を落としてしまうものの、1人の女性として”ごく普通”の幸せを手に入れたいだけのように思うのです。誰かに理解されたい、愛されたい、愛してほしい…そんな彼らが愛される無垢な動物と存在が一体であるというところが、この物語のヴィランズが悲劇的で愛おしく思える理由の1つではないでしょうか。

来年もますます盛り上がりをみせるDCコミックムービー、孤独な狂人たちの美しく哀しい聖なる夜『バットマン リターンズ』でクリスマスは過ごしてみてはいかがでしょうか?

Eyecatch Image:http://www.unwinnable.com/2015/12/24/batman-returns-is-tim-burtons-greatest-christmas-movie/

Writer

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Moeka Kotaki

フリーライター(1995生まれ/マグル)