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「ベター・コール・ソウル」主要キャスト7人が語る「最もお気に入りのシーン」とは?

ベター・コール・ソウル
Better Call Saul Season 3 Episode 303

「ベター・コール・ソウル」(2015-2022)が完結して1か月余り。米Entertainment Weeklyでは、ボブ・オデンカークら7人のキャストがそれぞれお気に入りシーンを語っている。数々の名場面を生み出した全6シーズンを、主要キャストが選んだシーンと共に振り返ってみよう。

レイ・シーホーン(キム役)

キム役のレイ・シーホーンは、シーズン5第10話『よほどの悪事』でラロから逃れるため、ホテルに避難しているキムとジミー(ボブ・オデンカーク)のシーンを選択。「ジミーとキムが別れるかどうかの瀬戸際で、お互いに説得し合い、お互いを感じ取り、そして(キムが)指鉄砲を撃つという流れです」と説明するシーホーンは、言葉を交わさずとも通じ合う2人の場面に魅了されたという。

「言葉にしていないことや暗号で話すことから生まれたシーンで、これが成立するには素晴らしい脚本、お互いのキャラクターを知り尽くした2人の俳優、その関係を注意深く見てきた視聴者、という3点が必要となります。シーン全体が暗号になっているんです。」

ジャンカルロ・エスポジート(ガス役)

ガス役のジャンカルロ・エスポジートが選んだのは、シーズン6第8話『狙って撃つ』でガスとラロが対決するシーンだ。エスポジートは「ラロが彼のもつすべてを発揮し、ついにガスが捕まる機会が訪れます。大きな弱みとなる瞬間です」と説明。ガスは本家「ブレイキング・バッド」のキャラクターなので当然生き延びるわけだが、エスポジートはラロに銃弾を撃ち込まれて死ぬかと思ったそうだ。

「あの瞬間は衝撃的でした。“ガスは死ぬんだ!”と思いましたよ。僕が彼(ガス)なので、本当に“このまま沈んで死んでしまうんじゃないか”と思いました。すると彼はラロの行為に怒り狂い、復活してきました。そして2人の最後の瞬間! あの瞬間が1番好きですね。彼は自分のゲームから離れ、調子が出ないんです。普段のように混乱をコントロールすることができないのです。」

ボブ・オデンカーク(ジミー/ソウル/ジーン役)

ジミー/ソウル/ジーン役のボブ・オデンカークが選んだのはシーズン1第9話『ピメント』で、意外にもキムではなく、兄チャックとの(マイケル・マッキーン)とのシーンだ。ジミーは法律事務所HHMで働くチャンスをチャックに妨害されたことに気付き、兄の家に乗り込み問い詰める。この場面のジミーを演じた時、オデンカークは「別の誰かになりきるために、最も自分とかけ離れたところまで行った」と話し、こう振り返る。

「とても本物に感じました。これほど一生懸命になり、他人に扮したままこれほど夢中になるというのは、非常にやりがいのあることでした。そしてもちろん、その反対側にはマイケル(・マッキーン)がいます。そこで初めて、“演技というのは、難しい時ほどクールなものなんだ”と思いました」。

ベター・コール・ソウル
Better Call Saul

マイケル・マッキーン(チャック役)

対するチャック役のマッキーンが選んだのは、ジミー、キム、チャックの3人が、チャックの家で言い争うシーン(エピソード名の言及はないが、シーズン2第9話『大成功』だと考えられる)。マッキーンは、「僕たち3人が集まったのは、このシーンだけでした。キムは事態の成り行きに不安を抱いていたのにジミーを擁護しなければならず、チャックをいくつかの点で非難しました」と説明し、同シーンを選んだ理由を次のように述べている。

「彼(チャック)は独善的な手段を使い果たしましたが、とても曖昧で、このシーンの最後までに何も変わりません。皆の立場はほとんど変わらないのですが、あるレベルでチャックは自分がやられたと理解しています。彼は自分が、“正しいことだからやっているんじゃない。ジミーとの間に問題があるからやっているんだ”と暴かれたことを分かってるんです。あれは本当にいいシーンだと思いました。」

マイケル・マンド(ナチョ役)

ナチョ役のマイケル・マンドは、シーズン6第3話『暗礁と難所』で父親に電話をかけるシーンを選択。ナチョが父親を守るため、自ら犠牲になる覚悟を決めた名場面だ。マンドはこのシーンを「彼が誰でどんな人物なのかを要約している」と言い、以下のように解説する。

「この独白は、彼が学んだことや経験したことなど、全てを集約したものです。このキャラクターが自らの意思で死へと向かい、一片の恐れもなく父親への愛に全身全霊を傾ける姿は、まさに超越的です。まるでイモムシがチョウになるのを見るような感じですね。そして彼は、その瞬間に自分が望んでいた通りの人間になれたと悟るのです。」

パトリック・ファビアン(ハワード役)

ハワード役のパトリック・ファビアンはシーズン4第2話『息の根』のキムとのシーンを挙げ、「チャックからの小切手を渡して、キム・ウェクスラーにこてんぱんにやられる」と説明。このシーンを選んだ理由として、ユーモアあふれるファビアンらしいエピソードを明かしている。

「カメラが回ってない時はレイ(・シーホーン)のことが大好きなので、彼女にあんなに怒られ動揺させられるのはとても辛かったです。本当に傷つきましたよ。僕は女優として彼女をとても愛しています。本当に素晴らしい演技だと思いましたが、僕自身は大きなダメージを受けました。」

トニー・ダルトン(ラロ役)

ラロ役のトニー・ダルトンが選んだのは、シーズン6第8話『狙って撃つ』のジミー宅でのシーン。ラロはハワードを撃ち殺した後、怯えるジミーとキムの前でガスの家までの道順と殺す方法を説明。この作戦を実行するよう命じられたジミーは、ラロと自宅に残るキムの身を案じて、自分の代わりに「彼女を行かせろ」と提案する。この流れは、ダルトンにとってドラマと喜劇の要素が混じった興味深いシーンだったという。

「ドラマとして始まって、奇妙な喜劇のようになります。“飛ばさずまっすぐ走れ。安全運転だ”(とラロが言い)、“彼女を行かせろ”(とジミーが言う)。何を言ってるんだ?って感じです。“誰が先か?”的な話ですよね。そして、またシリアスになります。1つのシーンで、ドラマからちょっとしたコメディまで経験するのは面白いです。そして次は、何が起こるかわからないシリアスでサスペンスフルな結末に戻る。これは俳優として興味深い練習になりますよ。」

ジョナサン・バンクス(マイク役)

マイク役ジョナサン・バンクスの印象に残ったのは、シーズン1第6話『警官』でマイクが義理の娘ステイシー(ケリー・コンドン)に息子の死の真相を告白するシーン。この場面には「息子を傷つけた(I broke my boy)」という胸が裂けるようなマイクの名セリフがあり、普段は気丈なマイクが弱みを見せる。

バンクスは「タフガイであること以外にやるべきことがあった」と言い、次のように語っている。「今考えても、自分の子供の精神を傷つけるというのは辛いこと極まりない。理解しがたく、恐ろしいことです」。

 ベター・コール・ソウル
Better Call Saul Season 3 Episode 304

キャスト7人のチョイスはいずれも忘れられない名場面であるが、それぞれの解説やコメントを読むことでさらに深みを感じられる。まだ「ベター・コール・ソウル」ロスから抜け出せない人は、上記のシーンを改めて見返してみてはいかがだろうか。

ちなみに本家「ブレイキング・バッド」(2009-2013)と「ベター・コール・ソウル」を手掛けたヴィンス・ギリガンの新作シリーズでは、キム役レイ・シーホーンが主演を務めることが発表されている。ユニバースが終わりを迎えても、まだまだ楽しみは続きそうだ。

Source: Entertainment Weekly

Writer

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KyokoKyoko Okajima

アメリカ留学、大手動画配信サービスの社員を経て、ライターに転身。海外ドラマが大好きで、永遠のNo.1は『ブレイキング・バッド』と『ベター・コール・ソウル』。