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【ネタバレなしレビュー】『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』故チャドウィックへの追悼、そして受け継がれるもの

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』ディズニープラスで独占配信中 © 2025 MARVEL

シュリとリリ、新世代ヒーローの誕生

本作で実質的な主人公となるのは、ティ・チャラの妹シュリだ。前作まであくまでサブキャラクターだった彼女がこの大作続編の主役を継承するのはいささか荷が重く、演じたレティーシャ・ライトは多大なプレッシャーを感じたはず。しかしティ・チャラの面影をほのかに纏いながら、チャドウィックが遺した魂を感動的に受け継ぐという大仕事を、立派に成し遂げている。この若き主役を支えたダナイ・グリラやルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク、そしてアンジェラ・バセットといった先輩たちの、なんと頼もしいことか。

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
(L-R): Danai Gurira as Okoye and Letitia Wright as Shuri in Marvel Studios’ BLACK PANTHER: WAKANDA FOREVER. Photo by Eli Adé. © 2022 MARVEL.

ワカンダとタロカンのドラマがほぼシリアスに終始する一方で、シュリと共に次世代のMCUを担うことになるリリ・ウィリアムズ/アイアンハートの鮮烈デビューは、本作に快活なアクセントをさりげなく添えている。リリはMIT(マサチューセッツ工科大学)に通う19歳の天才学生。彼女の類稀な才能が思わぬ形で物語に絡むこととなり、出番や見せ場もたっぷり用意されている。彼女はワカンダにとって部外者であり訪問者なので、観客の立場を客観的に代弁する役割でもある。

天才学生がヒーローたちに見出され戦いに加わっていく様は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)時のスパイダーマン/ピーター・パーカーを彷彿とさせ、ハイテクアーマーで闘う姿はもちろんアイアンマンの後継だ。ドミニク・ソーンがフレッシュに演じた彼女は今後、単独ドラマ「アイアンハート」が控えており、その物語は本作の直接的な続編になるという。

ちなみに、本作に登場するアイアンハートのアーマーデザインは、スリックなアイアンマンのそれとは全然印象が異なり、むしろ『メダロット』のような「コミックボンボン」感がある。メカ好きファンの好奇心を大いに刺激してくれるだろう。

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
© 2022 MARVEL.

間違いなく『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』には、ティ・チャラを、チャドウィックを弔うため、しばらく立ち止まる時間がある。これは観客のために用意された、故人に別れを告げるために必要なものである。ごまかすことのできない、編集することのできない悲嘆がある。

彼はいない。何度考え直しても。

そのプロセスを経た後、本作は再び歩みを始める。その一歩を踏み締めるまでに、想像を絶する哀しみがあったことを、本作はストーリーテリングに深く落とし込んだ。「これ以上辛いことなんてあるのか」とは、チャドウィックとの死別で監督業引退すら考えたクーグラーが吐露した本音である。

やがてこの映画は、確かな未来に向かって、故人が遺した想いを受け繋いでいく。ティ・チャラの言葉を思い出す。「死は終わりではありません。むしろ出発点なのです」。

『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』は2022年11月11日、日米同時公開。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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