『ブラック・フォン』スコット・デリクソン監督、ホラー映画における「電話」の変遷語る ─ 亡き父から着信の実体験も?【インタビュー】

殺人鬼に閉じ込められた地下室で、誘拐された少年のもとに謎の電話が鳴り響く。それはさらなる恐怖へと誘うものではなく、その部屋から脱出する鍵だった。『エミリー・ローズ』(2005)『フッテージ』(2012)『ドクター・ストレンジ』(2016)などのスコット・デリクソン監督最新作、『ブラック・フォン』が日本公開を迎えた。
『ブラック・フォン』の原作は、スティーヴン・キングの息子、ジョー・ヒルが執筆した短編集『20世紀の幽霊たち』(2005)に収められた『黒電話』。ある日の学校帰りに少年フィニーは、イーサン・ホーク演じる得体の知れない連続誘拐犯に誘拐され、鍵のかかった扉と鉄格子の窓に囲まれた地下室の部屋に閉じ込められてしまう。危機的状況のなか、部屋にある断線した黒電話から、まさかのベルが鳴り響く。それは、この部屋の恐怖と真実を知る死者からのメッセージだった。フィニーは死者たちの協力を得ながら、地下室からの脱出を試みていくことに……。

サイコパス、スーパーナチュラル、サイキックといった様々な要素が同時進行的に繰り広げられる本作は、誘拐された少年が想像を絶する恐怖に立ち向かう物語が見どころのひとつ。その恐怖とは、かつてスコット・デリクソン監督が少年時代に経験したことにも通じるものだという。このたび、THE RIVERのインタビューにてデリクソン監督が恐怖への向き合い方や、ノスタルジーへの見解、そしてホラー映画における電話の描き方などについて語ってくれている。
スコット・デリクソン監督、恐怖への向き合い方

──『フッテージ』などホラー映画を数多く手がけてきていますが、スコット・デリクソン監督にとって恐怖とは一体何なのでしょうか?
僕は多くの恐怖を感じながら育ちました。自分の子どもの頃や成長している時のことを考えると、一番に覚えている感覚は何かに怖がっていたことです。だから、大人になってから今まで歩んできた人生では、さまざまな形で自分が恐れていることと向き合ってきたんです。
──子どもの頃に感じた恐怖と向き合うことが、ホラー映画を作るきっかけとなったわけですね。
積極的に恐怖と向き合っていくうちに、それにどことなく夢中になっていったんです。何か怖いと感じるものがあれば、それが怖くなくなるまで立ち向かうのが、僕の今の本能でしょう。これこそホラー映画や小説の役割とも言えるのではないでしょうか。これらは僕が恐怖に立ち向かうための手助けにもなりましたから。すばらしいホラー映画は、僕たちに現実世界における本当の悪に立ち向かうための準備と力を与えてくれるのだと信じています。
『ブラック・フォン』と『IT』、ノスタルジーへの見解

──『ブラック・フォン』原作者ジョー・ヒルの父、スティーヴン・キングによる小説で何度も映像化もされてきた『IT』と本作には、“子どもたちが連続殺人鬼に立ち向かう”という共通点があるように感じました。デリクソン監督としてはいかがでしょうか?
『IT』も『ブラック・フォン』も青春物語です。それはこの映画の基となった短編にも共通して言えることかもしれません。この短編小説を初めて読んだのは15~16年前、小説がまだ出版されたばかりの頃でした。そこで衝撃を受けたことがあるんです。この作品が連続殺人鬼の物語であり、幽霊の物語でもあるというという事実に。ふたつの要素が組み合わさった作品は読んだことがありませんでしたから。それもひとつの地下室で展開するわけですから、なおさら驚きました。これはすばらしいアイデアだと思い、そこで良い映画になると考えたんです。
(原作者の)ジョー・ヒルは、なるべく共感性を取り入れながら書いているように感じました。彼は本当に心から物語を描いていて、キャラクターたちが直面する痛みをとても大切にしているんです。だから、この短編小説を長編映画にしようと考えたとき、この感情や登場人物への愛情を大切にしなければならないと思いました。本当に怖くてサスペンスフルなものでありながら、とてもエモーショナルで笑える、そして最終的には観客に感動を与えられるものを作ろうとしたんです。