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「Black Lives Matter」今こそ観てほしい作品4選 ─ 『私はあなたのニグロではない』『ホワイト・ボイス』「ウォッチメン」『SKIN/スキン』

米ミネソタ州ミネアポリスで2020年5月25日、黒人男性のジョージ・フロイド氏が白人警察官に膝で首を押さえつけられ死亡した事件を受け、黒人差別への抗議活動Black Lives Matterが世界的に広がっている。

米時間6月2日火曜には、黒人差別と警察による暴力への関心を高める「#BlackOutTuesday」のハッシュタグが登場。主に米国で活動するミュージシャンや役者らセレブリティが、ほぼ例外なしと言える規模でSNSにこのメッセージを呼びかけた。中でもInstagramには、黒く塗りつぶされた画像が数多く投稿された。

ポップカルチャーのメディアもこの動きに賛同し、米Colliderは「最新のエンタメニュースをお届けしたいところではありますが、今この瞬間を無視することはできません。また明日になれば、スター・ウォーズやバットマンといった楽しい話題をお届けしますが、今日はより大きな考えを持って、我が国の歴史を通じてアフリカ系アメリカ人を苦しめてきた抑圧に反対します」として、記事やSNSアカウントの更新の一切を停止した。

THE RIVERでは、人種問題を取り扱った、今こそ観ておくべき作品を4本厳選、『私はあなたのニグロではない』(2016)『ホワイト・ボイス』(2018)「ウォッチメン」(2019)『SKIN/スキン』(2019)を紹介。問題に対する理解の一助となれば幸いである。

『私はあなたのニグロではない』

「Black Lives Matter」とは、日本語で「黒人の命は大切」との意。しかし、“人種のるつぼ”や“人種のサラダボウル”と呼ばれるアメリカにおいて、なぜ「“黒人の”命は大切」という標語なのだろうか。アジア系やヒスパニック、白人がここに入っていないのはどうしてか……。

ドキュメンタリー映画私はあなたのニグロではない(2016)は、この抗議運動の背景に、アメリカという国の成り立ちが、そして差別と闘争の歴史があることを教えてくれる。全編を貫くのは、アメリカを代表する作家・詩人、ジェームズ・ボールドウィンの言葉だ。60年代に暗殺されたメドガー・エヴァースとマルコムX、マーティン・ルーサー・キング牧師とともに公民権運動の最前線をひた走った“時代の証人”である。

「問題をすり替えているかぎり希望はありません。これは黒人の状況の問題ではなく──最大の問題は、この国そのものです」。この映画は、ボールドウィンがテレビ番組で語る場面から始まる。そもそもアメリカという国は黒人なくして成り立たなかった。では、なぜ白人は黒人を差別するのか。なぜ白人には人種問題が必要なのか。黒人としてアメリカに生まれ、生きるとはどういうことか……。ボールドウィンによる言葉は、今もなお切れ味鋭く、大きな問いを観る者に突きつける。

特筆すべきは、60年代当時と2010年代の映像を織り交ぜるだけでなく、それ以前の映画や音楽、写真、イラストなど、ポップカルチャーにおける黒人のさまざまな表象が提示されること(エンドクレジットの楽曲はケンドリック・ラマー)。そこからは、人種差別の根源に横たわる問題がほとんど変わっていないこと、長きにわたる歴史と現在の状況が分かちがたく結びついていることがあぶり出される。ポップカルチャーは時代を反映し、時には人々に夢を見せる役割も担うもの。しかしこれは、その夢のために隠蔽されてきたものを暴く作品でもあるのだ。(稲垣貴俊)

『ホワイト・ボイス』

ポップカルチャーは時代を反映し、時には人々に夢を見せる役割を担うもの。またある時には、厳しい現実や歴史を脱臼し、大胆に読み替えて観客に提示するものだ。『私はあなたのニグロではない』とともにお薦めするのが、『Sorry to Bother You』の原題で米国公開されたホワイト・ボイス(2018)。残念ながら日本では劇場未公開だが、Amazon Prime Videoにて配信されている(本記事時点)。

物語の舞台はカリフォルニア州オークランド。貧乏生活を続けながら恋人と同棲している主人公の“キャッシュ”ことカシアスは、電話営業(テレオペレーター)の仕事に採用される。オフィスのワンフロアに詰めこまれ、大勢の同僚たちと働きはじめるが、電話営業はそう簡単ではなかった。ところが、ベテランの同僚から「白人声(ホワイト・ボイス)」を使うようアドバイスされたことをきっかけに、キャッシュは思わぬ才能を開花させる。「白人声」を駆使して社内の上昇気流に乗り、瞬く間に地位を高めていった。その一方、恋人や同僚たちは、労働者を奴隷扱いする企業への抗議活動を行っていて……。

とにかく、これでもかと埋め込まれた暗喩とパロディの嵐に驚愕すべし。現代の資本主義社会における人種差別と労働、経済格差の問題を、黒人差別の歴史と重ね合わせながら、ひねりにひねって、しかしストレートに語る一作なのである。殴られる人を見て笑うバラエティ番組が大ヒットしているなど、皮肉の効いた設定もポイント。『私はあなたのニグロではない』を観ておけば、せりふの細部に込められた意味もキャッチできることだろう。

ちなみに、本作『ホワイト・ボイス』はジャンルが「SF」「コメディ」に分類されている。その意味は本編を観て知るべしというところだが、想像の斜め上を行く展開、リアリズムを無視した演出が見どころだ。荒唐無稽でユーモアたっぷりの一作にして、観客が現実への想像をめぐらせることができるのは、これぞまさしく映画の力。現実を脱臼し、なんとか乗り越えられるのではないかという“夢”ではなく“希望”を謳えるのも、また映画の力ではないか。(稲垣貴俊)

「ウォッチメン」

ドラマ「ウォッチメン」は、パラレルワールドのアメリカが舞台となる大人向けのヒーロー・サスペンス劇。ドラマの中では人種対立が招いたテロ行為が横行しており、その荒廃した様子は残念ながらアメリカの今と重なる。警察官は、報復を恐れて全員が覆面で顔を隠している。

ウォッチメン
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物語の起点となるのは、1921年に実際にあったアメリカ史上最悪の暴動、「タルサ人種暴動」。やはり黒人と白人の間で発生した暴行事件をきっかけに対立感情が爆発し、暴徒化した白人集団が黒人街になだれこみ、破壊と暴行が繰り返されて300人にものぼる死者が発生した。ドラマでは俳優のロバート・レッドフォードがアメリカ大統領になっていて、タルサ暴動の誤りを認め、事件の犠牲者や遺族に賠償金を支払っている。しかし、白人至上主義者はなぜ先代の事件で黒人に謝罪して金を払わなくてはならないのかと反発、差別感情と暴動が激化するといった事態に陥っている。

原作は1980年代後期に発表された同名コミックで、米ソ冷戦の緊張下で核戦争を未然に防ぐべく影で動いたヒーローたちが描かれた。現代にアップデートするにあたって、なぜ人種問題が題材になったのか?その真意は今の実情を見れば明白である。

このドラマは2019年の10月から12月にかけて米放送されたが、当時は人種問題でアメリカ中が緊迫する様子はあくまでも“パラレルワールドだが、非常にありえそうな風景”だった。それからわずか半年、もうこのドラマをパラレルワールドと割り切ることは出来ない。(中谷直登)

『SKIN/スキン』

日本公開は新型コロナウイルスのため延期となり「近日公開」予定の最新作。レイシストとして過激派団体に育てられた全身タトゥーの暴力漢が、これまでの差別を悔やみ、団体から抜け出そうとする。

団体は男を抜けさせまいと執拗な脅迫を繰り返す。男の側も、全身に刻まれた憎悪丸出しのタトゥーを除去するのは容易いことではない。反差別主義を掲げる団体も登場し、男に救いの手を差し伸べる。人はレイシズムの負の連鎖から抜け出すことができるのか。この映画の主人公が象徴するものは大きい。

SKIN/スキン
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監督はイスラエル出身、ユダヤ人のガイ・ナティーヴ。物語は実話で、過去の自分と決別するために計25回、16カ月に及ぶ過酷なタトゥー除去手術に挑んだブライオン・ワイドナーの記事を偶然読んで感銘を受け、映画化を思い立った。ところが当時はオバマ政権。ネオナチ、過激な白人至上主義団体と言われてもピンとこないだろうと言われ、賛同する映画会社は現れなかった。

そこで製作資金を募るために同じテーマで短編映画を製作。白人至上主義グループに黒人が暴行を受けたことに対する黒人コミュニティの復讐が描かれた鋭い1作で、2019年アカデミー賞短編映画賞を勝ち取った。これも追い風となって、この度の長編映画が実現。もともと5月9日の公開予定だったが、新型コロナでこの度のBlack Lives Matter抗議後に公開を迎えることになるとは、何というめぐり合わせか。今こそ観るべき映画として、いっそうの意義を纏っての公開となる。主演は『ロケットマン』(2019)のジェイミー・ベル。(中谷直登)


認知し、理解し、意識を持つという一歩も、とても重要なこと。さらに日本から出来る支援はないか?Webサイトblacklivesmatters.carrd.coでは、主な署名サイト、寄付サイトへのリンクや、有用な情報へのソースがまとめられている。いま世界では、この活動を一過性のもので終わらせてはいけないとの意識が広がっている。時に映画やドラマのようなポップカルチャー作品が、そのための理解を助けることもあるはずだ。

THE RIVERはこれからも、「ポップカルチャーで世界を変える」をスローガンにメディア活動を続ける。

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