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黒人男性死亡受け「Black Lives Matter」抗議広がる、マーベルやNetflix、映画・ドラマ界も声明発表

Black Lives Matter
Photo by Miki Jourdan https://www.flickr.com/photos/mikijourdan/49954014156/

Black Lives Matterとは、2013年、米フロリダ州で黒人の高校生が白人警官に射殺された事件のあと、SNSを中心に広がった抗議運動だ。白人警官による黒人殺害事件は、その後も米国でしばしば繰り返され、そのたびにデモをはじめとする抗議活動が行われてきた。この運動は、特に白人警官による無抵抗な黒人への暴力をはじめとする人種差別の撤廃を訴えるものである。

2020年5月25日、ミネソタ州ミネアポリスにて、黒人男性のジョージ・フロイド氏が白人警官によって約9分間にわたり首を膝で押さえつけられ、死亡するという事件が発生した。警官は、周囲の静止や、フロイド氏の「息ができない(I can’t breathe)」という訴えにも耳を傾けず、一方的にフロイド氏の命を奪ったのである。現場の様子を記録した映像がSNSで拡散されるや、「#Blacklivesmatter」のハッシュタグとともに抗議活動が始まり、いまやデモは米国のみならず世界に広がっている。

抗議デモの参加者には、暴徒化して略奪や破壊行為に乗り出す者も多発しており、米国では警官や兵士がデモ隊と衝突。そのさなかには、米CNNの黒人記者やカメラマンがデモ現場での生放送中に逮捕される──ジャーナリストであり、身分証を提示しているにもかかわらず──という出来事も起こり、さらなる抗議活動につながった。ドナルド・トランプ米大統領による「略奪行為が起これば銃撃が始まる」とのツイートを、米Twitter社が「暴力の賛美」であると認定、ツイートの内容をテイラー・スウィフト激しく批判するなど、いまや本件は現実にもSNS上にも、あらゆる場面であらゆる出来事が同時多発的に起こり続けている。

テイラー・スウィフトにかぎらず、フロイド氏の死亡事件以降、多くのセレブリティが「Black Lives Matter」に対する賛同の声をあげてきた。ビリー・アイリッシュ「#blacklivesmatter(黒人の命は大切)というスローガンは“黒人以外の命は大切じゃない”という意味じゃない。社会が黒人の命をまったく大切にしていないという事実を呼びかけているだけ」綴り、白人が白人であるがゆえに得ている特権を指摘したことも大きな話題を呼んだ。事件から1週間が経過しようとしている今、この件に反応していないセレブリティを見つけることのほうが難しいほどだ。

ポップカルチャーからの反応

ポップカルチャーの世界においても、多くの大企業が黒人差別への抗議を訴えるステートメントを相次いで発表している。たとえば、ナイキは「Just Do It(やってみろ)」という長年にわたるキャッチフレーズを反転させ、「For once, Don’t Do It(今だけはやめてくれ)」と題した映像を発表。そこでは、「アメリカには何の問題もないなんてふりをするな、人種差別から目を背けるな、目の前で無実の命が奪われることを受け入れるな、もう言い訳はするな、自分には関係ないなんて思うな、見ているだけで沈黙しているのはやめろ、自分は変化に関われないと思うな、みんなが変化に参加するんだ」というメッセージが宣言されている。

また、ストリーミングサービス業界の最大手であるNetflixは「沈黙は加担と同じ。黒人の命は大切です(Black lives matter)。私たちにはプラットフォームがあり、黒人のメンバー、従業員、クリエイター、タレントのために声を上げる義務があります」と記した。続いて、米Huluも「黒人の命をサポートします。今も、いつでも。みなさんの姿は見えているし、みなさんの声は聞こえている。私たちはみなさんとともにあります」とのステートメントを発表した。

また映画業界からは、ウォルト・ディズニー・カンパニー/マーベル/ピクサー/ルーカスフィルム/20世紀スタジオが、「私たちは人種差別に反対します。私たちは多様性の受け入れに賛成します。私たちは黒人の従業員、ストーリーテラー、クリエイター、そしてすべてのブラック・コミュニティを支持します。私たちは連帯し、声を上げなければなりません」とのコメントを発表。ボブ・チャペックCEOやボブ・アイガー会長らは、これとは別に共同声明も公開している。

ワーナー・ブラザースは、『黒い司法 0%からの奇跡』(2019)で描いた弁護士ブライアン・スティーヴンソンによる「誰かがじっとしている時は、誰かが立ち上がらなければならない。誰かが黙っている時は、誰かが声を上げなければならない」という言葉を引用し、ブラック・コミュニティや「いわれなき暴力を受けているすべての人」を支持すると記した。「みなさんの声が、みなさんのメッセージが大切です」。

そのほか、ユニバーサル・ピクチャーズやパラマウント・ピクチャーズ(米ViacomCBS)、Amazon StudiosA24、ライオンズゲートなども、SNSやプレスリリースを通じて差別への抗議を発信。アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは、「ジョージ・フロイドの死は誰にとっても受け入れられるものではない」として、「我々は人種差別に光を当て、成長するために力を尽くすべき」とコメント。そのほか、各製作会社なども声明を発表している。

テレビ業界からは、「ゲーム・オブ・スローンズ」(2011-2019)「ウォッチメン」(2019)などのHBOが、作家・詩人のジェームズ・ボールドウィンによる「愛も恐怖を人を盲目にはしない。無関心は人を盲目にする」との言葉を引用。「アトランタ」(2016-)のFXは「アフリカ系アメリカ人の同僚やアーティスト、友人を支持します。誰に対するいわれなき暴力をも容認しない、法制度を支持する人々すべてを支援します。法のもと、我々の人権が真に平等になるまで、我々の国家が癒されることはない」と強いメッセージを発した。AMCも同じく声明を発表している。

SNS業界では、米Twitterの公式アカウントのアイコンが黒い鳥に変化し、ハッシュタグ「#BlackLivesMatter」には黒人たちが拳を挙げる絵文字が用意された。YouTubeは社会的不公正を是正する取り組みを支援するため、100万ドルを費やすことを約束。米TikTokもメッセージを公開した。

https://twitter.com/twitter

ジョージ・フロイド氏が死亡する事件の直後、ニューヨーク・セントラルパークでは、犬をリードにつないでいなかった白人女性が黒人男性から注意された際、「アフリカ系アメリカ人の男性に脅迫されている」と警察に通報する出来事が起こっていた。この女性の勤務先は、SNSなどで出来事が問題視されたのちに女性を即刻解雇。フロイド氏を死なせた白人警官も、のちに殺人罪で起訴されている。

今回の「Black Lives Matter」運動は、フロイド氏の死亡事件に本格的な端を発するものでありつつ、セントラルパークでの出来事や、もっといえば「Black Lives Matter」運動が始まった2013年以来の経緯、そしてそれ以前の差別や社会構造に深く結びついているものだ。かたや、デモの参加者が暴徒化する現象については、新型コロナウイルスの影響から厳しい生活制限が求められていた米国において、ストレスや不安が一気に噴き出した例ではないかと見る向きもある。しかし、今はまだ正確な分析がおこなえる状況ではないだろう。そもそもコロナ禍でさえ、とても収束したとは言いがたかったのである。

最後に、米国において黒人が「肉体を破壊される」恐怖や、社会や日常にある差別のリアリティに想像をめぐらせるために、筆者からは、タナハシ・コーツ『世界と僕のあいだに』(慶応義塾大学出版会)をお薦めしておきたい。ある黒人男性が息子に宛てて書いた手紙という形式の本書は、黒人の肉体で生きること、意図せず自身がさらされる危険、“白人”や“アメリカンドリーム”と自分たちとの間にある断絶などが克明に綴られた一冊。著者のタナハシ・コーツは、のちにコミック『ブラックパンサー』の脚本も手がけている。

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Sources: Variety(1, 2), BBC(1, 2, 3, 4, 5

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。劇場用プログラムや各種媒体への寄稿なども喜んで承りますので、お気軽にお尋ねください。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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