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『ボヘミアン・ラプソディ』完全再現の「ライヴエイド」制作秘話 ─ 成功導いたクイーンと2万人のファン

ボヘミアン・ラプソディ
© 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation, Regency Entertainment (USA), Inc. and TSG Entertainment | Finance LLC in the U.S. only. © 2018 Twentieth Century

1985年7月13日。ロンドンのウェンブリー・スタジアムで開催された20世紀最大のチャリティーコンサート「ライヴエイド」。ザ・フー、デヴィッド・ボウイ、エルトン・ジョン、ポール・マッカートニー……錚々たるアーティストが集結したこの伝説のコンサートの一部が、フレディ・マーキュリーとバンド「クイーン」の絆を描いた伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)で完全再現されたことは記憶に新しい。

ライヴエイドには、72,000人の観客が集結。世界84カ国で同時衛星中継が行われた。なかでもクイーンは、メンバー間のすれ違いなどによりバンド活動を一時中断していたにもかかわらず、21分というわずかなひとときで、世界中のファンの心を一つにする圧巻のパフォーマンスを披露した。映像こそ残ってはいるが、30年以上も前のライブを完全再現するという至難の業をやってのけた『ボヘミアン・ラプソディ』。本記事では、本作に携わった製作陣やキャストが、実現に至るまでに経験した制作秘話を紹介していきたい。

初対面でライヴエイド撮影、意気投合した役者4人

『ボヘミアン・ラプソディ』終盤のライヴエイドでは、バラバラだったクイーンのメンバーたちが再び一つとなる姿が描かれた。感動がクライマックスに達するシークエンスとなったが、撮影自体はクランクイン後真っ先に実施されていた。

初日の様子について、ブライアン・メイ役のグウィリム・リーは「ステージを駆け回って、恐怖やアドレナリンでいっぱいでした。すごくリアルだった」と米Digital Spyにて振り返る。劇中では、出会いからデビュー、仲違い、再結成まで、バンドが経た複雑な変化を表現したフレディ・マーキュリー役のラミ・マレック、ロジャー・テイラー役のベン・ハーディ、ジョン・ディーコン役のジョゼフ・マゼロ、そしてブライアン・メイ役のリーの4人。彼らは、ほぼ初対面でライヴエイドの撮影に挑んでいたのだ。「ああいった状況では、沈むか泳ぐか。厳しい試練でした」とリー。「けど、それが僕たちを1つにしたんです」。

撮影監督を務めたニュートン・トーマス・サイジェルも「最も難しくて最も重要な瞬間のものから撮影を始めるなんてクレイジーでした」と、その挑戦を振り返る。一方で、そういった極限状況のおかげで功を奏したこともあったようだ。「キャストが早くから一緒になって、化学反応を起こす助けにもなりましたね」とサイジェル。「私は、彼らが撮影前3日間のリハーサルに取り組む姿を見ていました。お互いに知らなかったはずなのに、4人の男たちは本当に意気投合したんです。ロックンロールバンドがそうなるみたいに」。

劇中では、ライブの様子を舞台袖で見守っていたフレディの元婚約者メアリー役のルーシー・ボイントンも、「その日が共演の俳優さんたち全員と初の顔合わせでした」と、ライヴエイド撮影時を顧みる。4人のパフォーマンスを目の当たりにしたボイントンは、その完成度に舌を巻いた模様。「彼らがやっていたこと、そして映画全体に繋がっていくことになる(再現の)クオリティにもお目にかかりました」と、現場で感じた当時の興奮を伝えている。

元々の演技力が高いことに加え、クイーンを限りなく再現した4人なだけあり、劇中では初対面であることなど全く感じさせない息ピッタリなパフォーマンスが見られる。しかし、フレディ役のラミ・マレックによれば、生のアドレナリンを出すためには、30年前に本物のクイーンが経験した21分間を生身で味わわなければならかったという。米Colliderのインタビューではこんなことが語られている。

「ライヴエイドは1日目に撮ったんですけど、僕たちはこのシークエンスに登場する全曲を、コンサート全体を、その週の最終日まで一緒にやりきりました。そこで僕たちは最高のものを感じたんです。彼らの興奮状態と同じものを感じるためには、一つの曲からまた次の曲へ、という風に進める必要があったんです。そこにはクイーンのファンもいらっしゃって、そんな象徴的なコンサートを再現するんですから。想像もできないような興奮状態ですよ。」

もっとも、撮影監督のナイジェルが語っていたように「最も難しい」シークエンスから開始された撮影には、当初キャストのなかで不満の声も上がっていたのだとか。これを証言するのは、プロデューサーのグレアム・キング。「ライヴエイドに始まった撮影は狂気の沙汰でした」と語っている

「一番むずかしいところから始めるなんて、なかなかのものでしたね。彼らは『ライヴエイド』が撮影第1週であることをよく思っていませんでした。最初に足を濡らしてから(=いきなり飛び込むのではなく)、作り上げたかったんでしょうね。けれど、イギリスでの天候の問題もあって、ライヴエイドは先に済ませておきたかったんです。スケジュールが変わらず、彼らも受け入れるようになると、“よし、やってやろう。ライヴエイドで、フレディの人生と音楽を祝福しようじゃないか”って感じになってくれました。」

Writer

SAWADA
SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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