『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』ミステリー ─ 肉体を捨て、脳を残して悟りを開くボマー・オーダーの謎とは

スター・ウォーズ』とは何か。遠い昔、遥か彼方の銀河系で起こった歴史のわずか一面を映画やアニメ、小説として切り取ったものに過ぎない。ダース・ベイダーやルーク・スカイウォーカー、レイといった人物の物語は、あまねく銀河史の途方もないドラマのごく一部分に過ぎない。本記事では、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)の背景にチラリと映るのみのキャラクターの神秘的な歴史をご紹介しよう。

『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』物語冒頭。前作『帝国の逆襲』(1980)で奪われたハン・ソロの凍結体を取り戻すため、C-3POとR2-D2はルーク・スカイウォーカーらに先行して惑星タトゥイーンに宮殿を構えるジャバ・ザ・ハットのもとに向かっていた。宮殿の門が開き、暗く不気味な宮殿を突き進むR2-D2と、「面倒なことになるよ」と不安を隠せない様子でそれを追うC-3PO。その時、画面左側から大きな機械グモのようなものが現れ、驚いたC-3POが逃げるようにR2の元に急ぐ。

この機械グモのような生物、元は人間の姿をしていたのだという。なぜ不気味なクモの姿になってしまったのか。そこには、ボマー・オーダー(ボマーの修道僧)と呼ばれる謎の宗教組織の教えと哲学があった。

Illust by THE RIVER

ボマー・オーダーの教義

『スター・ウォーズ』の世界に存在する謎多き宗教、ボマー反物質主義のボマーの修道僧たちは、ありとあらゆる感覚や感情を捨て、思考のみの存在となって精神の世界を旅することを良しとしていた。ボマーは肉体の感覚や精神の感情から自身を切り離すことを試みていき、ついに修道僧同士で会話さえしなくなっていく。修行を重ねて、テレパシーで直接相手の心に話しかけられるようにもなっていった。

やがて悟りを開いたボマーたちは、自分の肉体さえ不要であるとの領域に達した。自らを脳のみの存在とすることで、物質社会を完全に切り離し、宇宙と調和できると考えたのだ。悟りを開いたボマーは高度かつ極めて慎重な外科手術によって脳を摘出され、特殊な培養液で満たした容器に保管された。これにより、現世のあらゆる物質概念を絶ち、純粋なる思考のみの存在として宇宙との調和を図ることができるのだ。

究極の悟りを開いたボマーたちの脳が保管された培養容器は、修道院の一箇所に集められた。悟りを開いたボマーたちは、ここで無限の思考と精神の旅に出るのである。彼らは修道僧たちの中でも尊敬の対象とされ、まだ肉体を持つ修道僧たちが世話にあたったという。ちなみに、真の悟りを開かぬボマーから誤って摘出された脳は、絶え間ない発狂に苦しんだそうだ。

時として、脳のみになった修道僧が自ら移動をすることがあった。その際にはBT-16と呼ばれるクモ型ドロイドの腹部に培養容器を設置して移動をした。そういう訳で『ジェダイの帰還』で背景に登場し、C-3POと接触しかけたクモ型のドロイドは、移動中のボマーだったのである。では、なぜ崇高なる「悟りを開いたボマー」が、ならず者の吹き溜まりであるジャバの宮殿にいたのか。

 

物質世界を嫌うボマーは、それ故に他の種族との関わり合いに気を使うことも嫌がった。そこでほとんど砂漠しかない辺境の惑星タトゥイーンに移り住み、そこに宮殿を構えた。しかし銀河から忘却されたタトゥイーンは、ジャバ・ザ・ハット一味のような犯罪者たちにとっても格好の隠れ家だった。犯罪者たちは、ボマーの宮殿に匿ってもらう形で住み着くことになる。俗世を断ったボマーにとって、相手が犯罪者であるかどうかは興味がなかった。

やがてジャバ・ザ・ハットがボマーの宮殿のひとつを乗っ取る形となった。ジャバの手下たちは脳みそをぶら下げて徘徊するクモ型ドロイドを不気味がって近寄らなかったそうだが、ジャバはこれを面白がってボマーをそっとしてやったと伝えられている。

『スター・ウォーズ』には、映画の背景にチラリと映るだけの「モブ」にまで、多種多様で緻密な設定・物語が宿されている。無限のロマンに思いを馳せながら、『ジェダイの帰還』を心ゆくまでお楽しみ頂きたい。

最新作『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』は2017年12月15日より公開。

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インド旅行中、たまたま現地新聞に写真を撮られて掲載されるというミラクルを起こしました。持ってる男。THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。

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