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『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』ラスト、アナキンのゴースト姿を巡るファン賛否 ─ 新エンディングは運命の輪を閉じたか

スター・ウォーズ ジェダイの帰還 ラストの変更

スター・ウォーズ』ファンの間では、長年決着の付ききらない議論が多数存在するが、中でもスター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)ラストシーンの解釈をめぐるものはファンの間では有名だ。

そのシーンとはもちろん、アナキン・スカイウォーカーのフォース・ゴーストの姿にまつわるもの。帝国軍を壊滅せしめた反乱軍は、第二デス・スターのシールド発生装置の破壊作戦に多大な貢献をもたらした惑星エンドアの原住民イウォーク族と共に勝利を祝っていた。そこには、いにしえのジェダイの騎士らにとって「新たなる希望」であり、ベイダーと皇帝を打ち破ることができた「最後のジェダイ」ルーク・スカイウォーカーを優しい眼差しで密かに見守るオビ=ワン・ケノービとヨーダのフォース・ゴーストの姿があった。ルークも視線で答えると、そこに父アナキン・スカイウォーカーの亡霊姿も加わる。いま、銀河をめぐる運命の輪が安堵と共に閉じられた…。

しかし、スター・ウォーズ・ファンはこのエンディングに一言挟まざるを得ない。このシーンは、オリジナル版では『ジェダイの帰還』でダース・ベイダーの素顔を演じたセバスチャン・ショウがアナキンのフォース・ゴーストを演じていたが、2004年発売のDVD版をもって、『エピソード2/クローンの攻撃』(2002)『エピソード3/シスの復讐』(2005)で若きアナキンを演じたヘイデン・クリステンセンの頭部に変更されたのである。

ヘイデン版アナキン 否定派の意見

長年、セバスチャン・ショウ演じる老年アナキンの姿に抱いていた深い想い入れは裏切られてしまったのか。なぜアナキンだけが若返って現れるのか、辻褄が合わなくなるのではないか…。2004年の変更当時、ファンの間では様々な声が上がり、この変更は未だに賛否の中にある。

2004年当時、「来たるDVD版では『ジェダイの帰還』に新たなエンディングが用意されて、セバスチャン・ショウのアナキンがヘイデン・クリステンセンの姿に差し替わるそうだ」と伝えたWebページには、様々なファンのコメントが多数書き込まれている。「では、なぜオビ=ワンをユアン・マクレガーの姿に、ヨーダをCGの姿に差し替えないのか」「オリジナルを改ざんしないでくれ」「ショックだ」などとヘイデン版フォース・ゴーストを受け入れ難いとする意見を見て取ることができる。

『オリジナル・スター・ウォーズ・トリロジーに反する10の大罪」と題したDen of Geekの記事では、その大罪の中でもナンバーワンとして件の問題を指摘している。オリジナル版では、オビ=ワンにヨーダ、そして老年アナキンと3人のジェダイ・マスターが揃ったが、ヘイデン版への変更はそのイメージを破壊してしまったと痛烈に批判。「ルーカスはヘイデン・クリステンゼンの新しい映像を撮ることすらしなかった。彼は衣装テスト時のビデオの頭部を、セバスチャン・ショウに重ねただけなんだ。」

記事では、同変更は「アナキンの贖い」というコンセプトも否定していると指摘する。これこそが、変更反対派が最も強く頷く「矛盾」である。つまり、一般的にエピソード6の副題「ジェダイの帰還」とはアナキン・スカイウォーカーのことを暗示しており、パルパティーンの電撃に苦しむ息子ルークの姿を見て善の心を取り戻し、パルパティーンを倒した時にベイダーの体にジェダイとしてのアナキンが「帰還」し、その魂は救済されたはずだった。であれば、フォース・ゴーストの姿はセバスチャン・ショウが演じた老年のアナキンの姿でなくてはならない。ヘイデン演じる若いアナキンに差し替えるということは、即ち暗黒面に堕ちてなお続くアナキンの苦しみや、最期に善の心を取り戻した偉大なる勇気を全て無と否定することになる。思い出して欲しい、かつて最愛の人だったパドメは死の瞬間、「あの人には善の心が残っている」と言い遺しているのだ。パドメが正しければ、ベイダーと化して尚もそのおぞましき機械人間の奥深くには、善人アナキンとしての光は例え僅かであろうと潰えていなかったはずなのである。

アナキン・スカイウォーカー
illust by THE RIVER

ヘイデン版アナキン 賛成派の意見

否定派の意見に理解の余地があるように、肯定派の主張にも整合性がある。スター・ウォーズの著名なファンメディアであるMaking Star Warsの編集長ジェイソン・ワード氏の見解によれば、アナキン・スカイウォーカーの物語を考える際には、『クローンの攻撃』『シスの復讐』時の青年アナキン、つまりヘイデン版を主軸と捉えるべきなのだ。観客にとって善人アナキンの姿とはヘイデンの姿のことであり、この変更によってアナキンの運命が果たされたことが視覚的にわかりやすくなったと伝えている。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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