「テニスとは孤独なスポーツだ」 ─ 『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』主演スベリル・グドナソンへインタビュー

1980年ウィンブルドン選手権の男子シングルス決勝。当時のテニス界のスター、ビヨン・ボルグとジョン・マッケンローによるこの試合は、テニス史上に残る名勝負の1つとして語り継がれている。この伝説の一戦と、その舞台裏を描いた映画『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』が、2018年8月31日(金)よりついに日本公開となる。THE RIVERでは本作の公開に合わせ、”氷の男”ボルグを演じたスベリル・グドナソンに電話インタビューを行った。
スベリルはデヴィッド・フィンチャー監督作品『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)の続編映画、『蜘蛛の巣を払う女』にも出演が決定しているスウェーデン出身の俳優。これまでダニエル・クレイグが演じてきた役への大抜擢とあって、現在大注目の一人だ。
“氷の男”ボルグの真の姿とは
──スベリルさんは本作でボルグを演じましたが、実際のご本人とは、本作のプレミアイベントで初めて会ったと聞きました。その時のことについて教えてもらえませんか?
僕は撮影が終わるまでボルグに会わないと決めていたので、初めて会ったのはプレミアでした。会えて本当に嬉しかったですね。とても地に足のついた優しい人でした。映画も気に入ったと仰って頂けて、すごく幸せでしたよ。彼は世界でただ一人、どうしてもこの映画を気に入って頂きたかった人ですから。
──劇中であなたが演じたボルグについて、何か仰っていましたか?
「ソックリだったよ」とだけ。ある時、彼と奥さんが僕の写真を見ていたらしいんですけど、奥さんに「(この写真に写っているのは)彼でしょうか、それとも僕でしょうか?」と聞いたんですって。
──確かに、本当そっくりでしたね。外見はもちろん、ボルグの内面も表現する上で何かコツはありましたか?
ボルグを演じる上で大事なのは、彼の心の中を覗くことかな。インタビューを見ていても、見た目は常にポーカーフェイスなんだけど、よく見ると目が様々なことを語っているんですよ。その心の動揺と、彼の頭の中で起こっていることを表現するのが、ボルグを演じる上で重要です。もちろん、テニスをプレイすることも大事ですね。
──ボルグは、今では”氷の男”と呼ばれるほど冷静沈着な人物で知られていますが、小さい頃は怒りを周囲に撒き散らす人でした。怒りを表に出さなくなった彼の心境の変化の裏には、何があると思いますか?
確かに、彼が子供の頃はテニスをプレーしながら、怒り狂ってましたね。でも、彼はコーチに出会うんです。コーチは怒りを心の中に収めて、試合に集中する術を教えてくれるんです。怒りのエネルギーを叫ぶためではなく、プレイのために使うんだという考えは、ボルグにマッチしたんじゃないかな。
──怒りは、大人になっても子供の頃と同じくらい抱えていたんですかね。
そう思いますよ。怒りっぽい男だとは思いませんけど。でも、テニスはイライラするスポーツだし、コートの中では落胆してばっかりなので、その感情にどうにか向き合わないといけないんです。だから彼は怒りを心に閉じ込めて、圧力鍋みたいに中から沸騰させて、そのエネルギーを試合で爆発させていたんだと思います。

シャイア・ラブーフとの共演
──ボルグとマッケンローはライバルとして報道されることが多いですが、実際はお互いに対しどのような印象を持っていたと思いますか?
んー、分かりません。本当に分かりませんね。でも、彼がマッケンローを尊敬するようになったのは事実です。それに対して、マッケンローはそもそも小さい頃からボルグファンだったから、ボルグをすごくリスペクトしていたと思います。だから、彼らはお互いが完璧な対戦相手だと感じたんじゃないかな。そういう対戦相手を見つけることは怖い気もしますけど。でも、だから試合をするんだと思います。スポーツをするからには、自身を限界に追い込むような相手を見つけたいはずです。
──ウィンブルドン決勝の試合中、ボルグは調子の出ないマッケンローに「良い試合だよ」と話しかけますね。なぜマッケンローに話しかけたのだと思いますか?
ボルグが、自身の姿をマッケンローに見たからじゃないかな。マッケンローを助けたかったんでしょう。挑発していたと捉える人もいるかもしれませんが、僕は彼に手を差し伸べ、試合に再び集中できるよう手助けしたかったのだと考え、演じました。きっと彼は、あの試合を、あの戦いを、特別なものだと感じていたのではないかと。