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『ブラックパンサー』キルモンガー最後の言葉、マーベル社長が死守していた ─ 「これまでで最も優れたセリフだと思った」

ブラックパンサー
©Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータイメージ

映画『ブラックパンサー』(2018)の製作において、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギは、ヴィランであるエリック・キルモンガーのセリフを非常に重要視していたという。米The Hollywood Reporterにてファイギ社長自身が語った。

この記事には、映画『ブラックパンサー』のネタバレが含まれています。

Kevin Feige / ケヴィン・ファイギ
ケヴィン・ファイギ Photo by Gage Skidmore https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kevin_Feige_(28556369381).jpg

「今まで読んだ中で一番良いセリフ」

第91回(2019年)アカデミー賞にて、『ブラックパンサー』は作品賞をはじめとした全6部門にノミネートされた。作品のクオリティはもちろんのこと、劇場公開当時から社会現象というべき大ヒットを記録したことや、アフリカの文化に敬意をもって取り組み、しかもアメリカにおける黒人の歴史や現在の社会状況にも目配せした作劇など、その文化的意義が高く評価されたものとみられる。

『ブラックパンサー』は、いわゆる「スーパーヒーロー映画」の世界で見落とされてきた社会的側面に光を当てた。ファイギ社長は、本作の企画段階でライアン・クーグラー監督や製作総指揮のネイト・ムーアと面談した際、作品のはらむ可能性をきちんと認識したという。次に社長が力説するのは、映画のクライマックスでキルモンガーが口にする言葉の重要性だ。

「(ライアン監督と)共同脚本のジョー・ロバート・コールが素晴らしいセリフを書いてくれました。ヴィブラウムの鉱山からワカンダの景色を見ているキルモンガーに、死が迫っているという場面です。(傷を負ったキルモンガーに)ティ・チャラが“治療することはできる”と言うと、彼は“なぜだ、投獄するためか。海に沈めてくれ、かつて先祖たちが船から身を投げたように。奴隷になるよりも死ぬほうがいいと、彼らはわかっていた”と話します。」

このセリフは、かつてアメリカにあった黒人奴隷制度を直接的に示しているものだ。1600年代前半から1865年まで、数えきれないほどのアフリカ人がアメリカやカリブ海諸島、南米へと強制的に連行された。移動のための“奴隷船”は極めて劣悪な環境にあったといい、そこでは死者が海に投げ捨てられ、中には奴隷になることより死を選ぶ者も決して少なくはなかったという。

「このセリフは脚本の第一稿からあったものです。今まで読んだ中でも、もっとも優れたセリフのひとつだと思いました。私たちは“これから何度も脚本を改訂しますが、このセリフには触りません”と話したんです。ライアンには、“このセリフはカットしてくれ、と言われるんじゃないかと思いました”と言われましたよ。“逆です。このセリフは守り抜いて、ここから映画を作っていきましょう”と答えました。」

キルモンガーというキャラクターは、演じたマイケル・B・ジョーダンの貢献もあいまって“マーベル映画史上最高のヴィラン”とも呼ばれる存在となった。彼の行動原理や思想は、――行為の残虐性とは裏腹に――現代を生きる観客の心に届くものとなっているのだ。その根幹には、キルモンガーが劇中で口にする最後のひとことがあったのである。

ちなみにティ・チャラとキルモンガーが最後に交わす言葉の数々は、作品の編集段階まで検討が重ねられ、実際に撮影された映像から大きな変更が加えられていたことも明らかになっている。ほかにも存在したというキルモンガーの重要なセリフは削除され、物語やティ・チャラの行動でそのテーマが語られることになったのだ。その経緯や詳細は、ぜひ以下の記事でお確かめいただきたい。

キルモンガー&ラストシーン、徹底解説!

映画『ブラックパンサー』MovieNEXは発売中。

Source: THR

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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