マーベル、『ブラックパンサー』アカデミー作品賞狙いに本腰 ― オスカー対策専門家を雇用

米マーベル・スタジオは、映画『ブラックパンサー』(2018)でアカデミー作品賞受賞を狙う方針に本腰を入れ始めた。2018年、米国で社会現象ともいうべきスマッシュヒットを記録し、世界各国で話題となった本作は、かねてよりオスカー有力候補との呼び声が高い一本だ。
しかし2018年8月上旬、米アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは、優れた成果を示した人気映画(popular film)を対象とする新部門の設立を発表。突然の設立決定に、『ブラックパンサー』のオスカー獲得を期待する一部ファンの間では「『ブラックパンサー』に作品賞を与えないための部門ではないか」との声も聞かれたのである。
そんな中、マーベル・スタジオとウォルト・ディズニー・カンパニーは、『ブラックパンサー』を作品賞に導くための戦略に着手している。オスカー獲得の戦略専門家であるシンシア・スワーツ氏を雇用、オスカー獲得に向けたキャンペーンの指揮を一任するという。
マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、『ブラックパンサー』の脚本・監督を務めたライアン・クーグラー監督のビジョンや信念、製作へのたゆまぬ努力が報われることへの期待を語っている。
「数年前、ライアンは私たちの前に座って、“これまで、僕は自分の過去や自分が受け継いだものと向き合ってきました。この映画の中でその物語を語りたいんです”と言いました。彼は大きなインパクトをもって、実に見事にやってのけた。それが認められる可能性があるのは、私が一番楽しみにしていることなんですよ。」
これまでアカデミー賞において、ヒーロー映画は主要部門から除外される傾向にあった。クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト』(2008)の高評価は、翌年から作品賞のノミネート作品数を増やすことに繋がったとされるが、その後、作品賞にヒーロー映画がノミネートされることはなかったのである。社会現象となった『ブラックパンサー』はかつてないチャンスといえそうだが、どんな結果に結びつくかはまだわからない。
なお、早くも賛否の分かれている「人気作品部門」の詳細は2018年8月26日現在不明。しかし米Los Angeles Timesの取材に対して、あるオスカー関係者はこう語っている。
「もし『ブラックパンサー』が作品賞から外れて人気作品部門に落ち着いたら、(アカデミー幹部の)ドーン・ハドソンは雲隠れすると思いますよ。おかしな話ですけど、マーベルの誰よりもガッカリするでしょうね。」
Source: Los Angeles Times
©Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータイメージ