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マーベル『ブラックパンサー』ポストクレジットシーン徹底解説 ― 監督がサービス精神と葛藤語る

ブラックパンサー
©Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータイメージ

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品において、ポストクレジットシーンはなくてはならないものだ。ファンは作品ごとにその存在を信じて疑わないし、映画の冒頭には「エンドクレジットの最後にも映像があります」という旨のお知らせが用意されている。

むろん、映画『ブラックパンサー』もその例外ではない。マーベル・スタジオ、そしてライアン・クーグラー監督は、本作のポストクレジットシーンをありったけのサービス精神とともに届けてくれたようだ。クリエイターの作家性豊かな本編とともに、自身もコミックファンだという監督による“粋な仕掛け”もあわせて『ブラックパンサー』なのである。
本記事ではエンドクレジット後に用意されたシーンの全貌を解き明かしつつ、監督による解説と裏話をお届けしたい。

注意

この記事には、映画『ブラックパンサー』のネタバレが含まれています。

©THE RIVER

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バッキー・バーンズ、ワカンダで目覚める

『ブラックパンサー』のエンドクレジット後、スクリーンには子供たちがこちら側を見つめる様子が映し出される。ワカンダのどこかで目覚めたバッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)は、ティ・チャカ/ブラックパンサーの妹にして天才科学者のシュリ(レティーシャ・ライト)に迎えられるのだ。
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)のラストにて、洗脳が完全に解けていないことを悟ったバッキーは、完全に治療が完了するまでワカンダの地で冷凍睡眠に入った。『ブラックパンサー』の本編にバッキーは登場しないが、彼はひっそりと目覚め、次なる活躍の機会を待っていたのである。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の予告編にはワカンダで戦うバッキーの姿が収められていただけに、本作での再登場を待ちわびていたファンも少なくはないだろう。

MCU作品のポストクレジットシーンには、たとえば『アントマン』(2015)で『シビル・ウォー』のワンシーンが使用されていたように、しばしば次回作の一場面が使用されることがある。
しかし英Radio Timesによれば、『ブラックパンサー』のバッキー登場シーンは本作のために撮影されたものだそうだ。ライアン監督は、このシーンがマーベル・スタジオ側の強い意向によるものでなかったことを明かしている。

「求められて入れたものではありません。明らかに(『インフィニティ・ウォー』に)繋がるものですが、スタジオに強制されたわけでも、ポストクレジットシーンをこうすべきだと言われたわけでもないんです。面白そうだと思った、やってみたくなったんですよ。MCUに詳しい観客なら、バッキーがワカンダにいることは知ってると思いましたからね。」

ただし実際にバッキーを登場させることについて、監督は「ためらいました」とも語っているのだった。

「この映画はバッキーについての作品じゃない。だから本作の文脈で彼を描くのが良いことだとは思わなかったんです。でも大好きなキャラクターをチェックするため、最後まで残ってくれるファンにとっては良いのかなって。」

ちなみにセバスチャン・スタンは、このシーンの撮影風景をInstagramにて公開している。

Dreams are never free. #wakandaforever

Sebastian Stanさん(@imsebastianstan)がシェアした投稿 –

『シビル・ウォー』後のバッキー、なぜ本編に不在?

『ブラックパンサー』のポストクレジットシーンでは、洗脳に苦しんだバッキーがシュリの手によって回復したことが明かされている。その経緯については米国で刊行されたコミック“Marvel’s Avengers: Infinity War Prelude”#1でも言及されているので、ご興味がおありの方はぜひチェックしてみてほしい。

英Empire誌のポッドキャストでは、シュリによるバッキーの治療についてライアン監督がコメントしている。

「(バッキーの治療は)常にシュリの仕事でした。僕たちの間では、バッキー・バーンズはシュリにとっての課題なんだとわかっていましたからね。(エヴェレット・)ロスが連れてこられた時にヒントを出しましたよ。彼女が“また白人を治療できる”と言うんです。シュリほど賢かったら、バッキーのメンタルを書き換えるのも大したことじゃないだろうって。」

しかしバッキーが回復しているのであれば、なぜ監督は『ブラックパンサー』に彼を登場させなかったのだろう? ポストクレジットシーンだけでなく、ストーリーにきちんと関わらせるという選択肢もあったはずだが……。

「バッキーはひどいPTSDで、精神的なアドバイスが必要だと思ったんです。『シビル・ウォー』に関わるのは嫌だっただろう、だから(『ブラックパンサー』では)自分の思索を深めていたんですね。それに大勢のアフリカ人が戦う中に白人男性を登場させて、人々を撃つのは問題があるって。バッキーは平和的に人々を無力化する訓練は受けてません、彼は暗殺者ですから。

ちなみに観客の中には、バッキーが「ホワイトウルフ」と呼ばれていることを疑問に思った人もいるのではないだろうか。
コミックに登場するホワイトウルフは、ティ・チャラの誕生以前、ワカンダに墜落した飛行機に乗っていた家族の“唯一の生き残り”。名前をハンターといい、先王ティ・チャカの養子として育てられているキャラクターだ。ティ・チャカの任命によって秘密警察のリーダーとして「ホワイトウルフ」を名乗るが、ティ・チャラが国王になったのちに組織は解散。ホワイトウルフは傭兵となるが、ワカンダの危機にはティ・チャラの求めに応じるのである。しかし、本作でバッキーがホワイトウルフと呼ばれていることになんらかの意味はあるのだろうか……?

映画『ブラックパンサー』は2018年3月1日より全国の映画館にて公開中
バッキーの本格カムバックは、2018年4月27日公開『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を楽しみにしていよう。

Sources: http://www.radiotimes.com/news/film/2018-02-16/black-panther-director-ryan-coogler-unpicks-the-films-post-credits-scenes/
http://collider.com/black-panther-bucky-barnes-explained-ryan-coogler/
https://soundcloud.com/empiremagazine/black-panther-spoiler-special-ryan-coogler-nate-moore
©Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータイメージ

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。