デッカードは人間かレプリカントか ― 『ブレードランナー 2049』永遠の謎に脚本家&出演者が証言

リドリー・スコット監督による映画『ブレードランナー』(1982)には、劇場公開から35年経った現在もなお議論が続いているテーマがある。それは、ハリソン・フォード扮する主人公リック・デッカードが人間なのかレプリカントなのかというものだ。
続編『ブレードランナー 2049』の製作・公開に至っても、もちろんこの議論は引き継がれることになった。新たな疑問と謎をばらまきながら展開するこのストーリーの仕掛け人たちは、この問題をどのように捉えていたのか……。キャスト・スタッフの証言を確かめてみることにしよう。

脚本家は「レプリカントではない」「疑問こそが重要」
はじめに述べておくと、デッカードを演じているハリソン・フォードは本作の公開以前から、“デッカードは人間かレプリカントか”という問題について「(続編でも)決定的な答えは出ない」と明言していた。
そもそも前作『ブレードランナー』の時点から、デッカードの真実をめぐってはフォードとスコット監督の間で意見が分かれていた。スコット監督は「デッカードはレプリカントである」と述べ、一方のフォードは「人間だ」と主張してきたのである。
『ブレードランナー 2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によると、なんと二人の論争は現在も続いているという。2017年7月、ヴィルヌーヴ監督は「ハリソンとリドリーはまだ議論しています。この話題になると、二人は同意せずに大声で話し始めるんです。私は真ん中に座って“えーっと……”ですよ」と語っているのだ。
そんな中、本作の脚本を執筆したハンプトン・ファンチャー氏とマイケル・グリーン氏がこの問題についていよいよ口を開いた。なにせファンチャー氏は前作を執筆した人物でもある、きっとなんらかの回答を持っているはずだ……。すると彼は、米Colliderに対して自らの意見を容赦なくぶつけたのである。
ファンチャー氏: 彼(デッカード)はレプリカントではないと常に考えていますよ。もしレプリカントならすべて終わりだと思いますが、彼は自分がどっちなのかも知らないと思うんです。だから彼をレプリカントにすることは……リドリーは最初から彼はレプリカントなんだと言ってますが、私は違うと言ってますね。
つまり彼がどっちなのかを私たちは知るべきではないし、私は知りません。いつも聞かれるんですが、知らないんですよ。『ブレードランナー』にリドリーが赤い瞳やら何やらといった表向きの証拠を入れたことを、私は良いとは思っていないんです。」
グリーン氏: 『ブレードランナー』を傑作たらしめている理由のひとつは、真実をめぐる争いが、物語の内部にも、映画の外側の物語にも織り込まれていることです。その問いに正真正銘の答えはありません。さらなる物語を語るということは、そのことを物語に織り込まなければならないということでした。『ブレードランナー』を観る人は誰しも、どのバージョンを観るべきなのか、それが何を意味しているのかといった疑問を抱きますが、その答えを知ることはできないんです。
ちなみに『ブレードランナー 2049』の脚本を執筆する上で、グリーン氏は前作にあった「曖昧さ」を大切にすることを心がけたとも述べている。とすれば、やはりデッカードが人間かレプリカントかという問いに答えはないということになるだろう。ただしそれならば、デッカードとレイチェルの間に生まれた娘は人間とレプリカントの“ハーフ”なのか、それともレプリカントの間に生まれた新しいレプリカントなのか……。
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