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『マイティ・ソー バトルロイヤル』死の女神・ヘラはマーベル史上最高の悪役 ― クリス・ヘムズワース絶賛、ケイト・ブランシェットの挑戦

Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/14785941791/

映画マイティ・ソー バトルロイヤルに登場する悪役ヘラは、マーベル・シネマティック・ユニバース作品で初めての女性ヴィランだ。
これまで『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014)のネビュラ(カレン・ギラン)や、続編『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)のアイーシャ(エリザベス・デビッキ)といった悪役は登場してきたものの、メイン・ヴィランとして主人公に正面から相対する女性ヴィランは本作が初めてとなる。

『マイティ・ソー』シリーズのルーツである北欧神話において、ヘル/ヘラは老いや病によって命を落とした者たちを支配する「死者の国の女神」だ。コミックや本作に登場するヘラは、さらに恐ろしい「死を司る女神」として登場する。演じるのはケイト・ブランシェット、配役の発表時には「怖すぎる」という声が聞こえてきたほどピッタリのキャスティングだ。

注意

この記事には、映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』のネタバレと捉えうる内容が含まれています。

マイティ・ソー バトルロイヤル
©Walt Disney Studios Motion Pictures 写真:ゼータ イメージ

最強の女性ヴィラン、その目的と真意は?

マーベル・シネマティック・ユニバース作品では、コミックの設定やストーリーが「原案」程度にとどめられ、オリジナルの解釈が施されることも少なくない。したがって『マイティ・ソー バトルロイヤル』のヘラについてわかっているのは、公式サイトにも掲載されているように「オーディンを恨み、アスガルド崩壊を目論む」キャラクターであること、その復讐には理由があることだ。
予告編ではソーのハンマー(ムジョルニア)を片手で掴み、木っ端微塵に破壊するという恐ろしい場面も存在する。彼女の力がいかなるものか、それだけで十分に想像がつくことだろう。

ところがヘラの目的やその真意については、プロモーションでごく一部しか明らかにされていない。米国で公開された予告映像では、王座に腰かけたソーを前に場所を譲るよう求める場面もあるが、やはりオーディンへの執着が彼女を突き動かしているのだろうか……。

ただしヘラというキャラクターについては、複数のキャスト・スタッフが気になる証言を残している。タイカ・ワイティティ監督はその人物像について「彼女は家に帰りたい、そして受け入れられたいんです」と話しているし、ブルース・バナー/ハルク役のマーク・ラファロはこのように述べているのだ。

「彼女はあらゆる力、あらゆる強さ、ほかの神々の持つあらゆる資質を備えています。ただし、彼女にはあらゆる怒りもあるんです。帰りたい、自分にふさわしいものを手にしたいんですよ。ただし、かつて彼女は暗闇へと追いやられて邪悪になってしまった。今や死の象徴なんです。」

オーディン、暗闇、帰りたい、というキーワードから容易に想像しうるのは、北欧神話におけるヘル/ヘラがオーディンによって冥界へと追放されているというエピソードだ。シリーズの前作『マイティ・ソー ダーク・ワールド』(2013)でアンソニー・ホプキンス扮するオーディンは姿を消し、代わりに王座へはロキ(トム・ヒドルストン)が収まっているわけだが……そうした経緯にもストーリーのカギが眠っているのかもしれない。

ケイト・ブランシェット、「死の女神」を楽しむ

『マイティ・ソー バトルロイヤル』でヘラ役を演じるのは、『エリザベス』(1998)や『アビエイター』(2004)、『ブルージャスミン』(2013)などで数々の映画賞に輝く女優ケイト・ブランシェット。『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008)や『ホビット』3部作(2012-2014)、実写版『シンデレラ』(2015)など大作映画やファミリー映画でも親しまれる人物だ。

ケイト・ブランシェット
Photo by Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/14785941791/ )

タイカ・ワイティティ監督に初めて会った際、ケイトは「とにかくみんなを驚かせたい。とにかく面白いことがしたいし、子供たちが観て楽しいものを作りたい」語っていたという。全編の8割がアドリブと即興演技で構成されているという本作で、ケイトもタイカ監督の演出を堪能したようだ。では、マーベル・シネマティック・ユニバース初の女性ヴィランを演じる心境はいかなるものだったのか……。

「もしこれが女性にとって唯一の挑戦だと思うなら、プレッシャーだけを感じるのはバカバカしいと思います。(マーベルには)女性ファンがたくさんいて、私にも娘がいますから、ヒーローと同じように(ヴィランにも)自分を重ねてほしいですね。[中略]プレッシャーは感じませんでした。とても楽しかったですよ。」

またケイトは、ヘラというキャラクターについて「何もわからなかった」と述べながらも「(役柄を)発見していく作業が本当に楽しかった」話している。「最高のヴィランには、その行動にいつも愛情と憎しみがある」という彼女のアプローチは見事に功を奏したのだろう、タイカ監督をして「典型的なヴィラン像をぶち壊した」と言わしめるのだ。
さらにソー役のクリス・ヘムズワースも、ケイトの体現したヘラを「マーベル史上もっとも興味深いヴィランですよ。重層的で、悩んでいて、本当に愉快。きっと満足してもらえると思います」語っている。その役柄の作り込み方は、ケイトが撮影に参加する以前にクリスがイメージしていたものを超えていったというのである。

『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)のロバート・レッドフォード、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』のカート・ラッセル、『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)のマイケル・キートンなど、これまで映画界を支える豪華スターが挑んできたヴィラン像を、『マイティ・ソー バトルロイヤル』ではケイト・ブランシェットがさらなる高みへと導くことだろう。「死を司る女神」としての圧倒的な強さ、その演技が紡ぎ出す人物造形、そしてコメディとして設計されているらしい作風とのバランスなど、気になることは山ほどある。ぜひ劇場でまるごと体感してほしい。

映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』は2017年11月3日より全国ロードショー

Eyecatch Image: Photo by Gage Skidmore ( https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/14785941791/ )

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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