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ブレットなの?バレットなの?『ブレット・トレイン』で考えるBULLET表記ゆれ問題

ブレット・トレイン

 伊坂幸太郎の小説をブラッド・ピット主演でハリウッド実写化した映画『ブレット・トレイン』がいよいよ2022年9月1日より日本公開だ。

タイトルの『ブレット・トレイン』、つまり弾丸列車とは新幹線を指す英語。原作小説のタイトル『マリアビートル』からは変更されているが、物語の舞台を端的に表し、さらに「弾丸(Bullet)」からはアクション映画であることも想像させる。ところでこの邦題を聞いたときに、「“バレット”ではなく“ブレット”なのか」と気になった方もいるのでは。

英表記からカナ表記への変更とは煩わしいもので、このような表記ゆれがしばしば起こる。Bulletの場合、これまで「ブレット」と表されることもあれば、「バレット」と表記されるケースも混在した。

Bulletの発音記号はbˈʊlɪtで、「ブ」なのか「バ」であるべきなのかは /ʊ/ の部分を参照すれば良い。これは /u/ の発音とよく似ているが、 /ʊ/ の場合は舌を口内奥部に引くようにして発する。Book(bʊk)やPush(pʊʃ)がこの発音であり、これらが「ブック」「プッシュ」と「ウ」の段でカナ表記されることを考えれば、Bulletも「ブレット」と表すのが本来的だ。

しかし過去にBulletは「バレット」と表記されることが多かったので、今も表記ゆれがある。この単語は弾丸という意味なので、アクション映画のタイトルに採用されることが多い。例えば2003年公開のチョウ・ユンファ主演のアクション映画『Bulletproof Monk』は、『バレット モンク』との邦題だった。

「バレット」表記の映画は他にもたくさんある。『バレット(Bullet To The Head)』(2013)『バレット・ヘッド/キラー・ドッグ(Bullet Head)』(2017)など、2010年代以降も「バレット」表示が続く。

また、『バレット・ライン(Across the Line: The Exodus of Charlie Wright)』(2010)(2017)『バレット・オブ・ラヴ(Charlie Countryman)』(2013)『ワイルド・バレット(Running Scared)』など、原題にないBulletを独自につけた邦題も数多く、この単語とアクション映画のタイトルとの相性の良さがわかる。

一方、タイトルに「ブレット」がつく映画を調べると、その初出自体は1996年に見つけられるものの、数としては多くないことがわかった。『レイジング・ブレット 復讐の銃弾(Eye for an Eye)』(1996)と『ハード・ブレット/仁義なき銃弾(Bullet)』(1996)に始まり、あとは『ライディング・ザ・ブレット(Riding the Bullet)』(2004)『ロストブレット 窮地のカーチェイス(Balle Perdue)』(2020)しかない。つまり映画タイトルにおいて「ブレット」は少数派であり、『ブレット・トレイン』はその5例目になる。

映画タイトル以外ではどうか。イギリスのメタルバンド「Bullet For My Valentine」は「ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン」とカナ表記され、日本のファンの間では「ブレマイ」との略称もある。

ゲーム作品に目を向けてみると、「ラストバレット」「バレットガールズ」「バルドバレット」「バレットバトラーズ」「ソードアート・オンライン フェイタル・バレット」と「バレット」表記が優勢だ。

また、日本のアニメ/ライトノベルには「ブラック・ブレット」というタイトルの作品もあり、これは「ブラック」に合わせて押韻されている。反対に、日本映画『バレット・バレエ』(1999)は、「バレエ」と押韻したタイトルである。このようにBulletのカナ表記は依然としてハッキリしないことが多い。

しかし『ブレット・トレイン』の表記には別の事情がありそうだ。2000年のアメリカ映画に『バレット・トレイン(Tunnel)』という先例が見られるのである。『ブレット・トレイン』には、この重複を避ける意味もあるのかもしれない。

Bulletのカナ表記には“ブレ”があるが、映画『ブレット・トレイン』は最初から最後まで“ブレない”オモシロさ。『ブレット・トレイン』は絶賛公開中。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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