キャメロン、原爆映画で日本と協力製作へ ─ 「日本人についての映画作る」日本の専門家と被爆者遺族が参加

巨匠ジェームズ・キャメロンが、広島・長崎への原爆投下を題材とする新作映画『Ghosts of Hiroshima(原題)』の準備を進めている。構想15年におよぶ本作の脚本執筆を控え、「2発の爆弾が投下された日と、その直後の状況にきちんと焦点を絞りたい」との方針を明かした。
本作はチャールズ・ペレグリーノのノンフィクション作品『Ghosts of Hiroshima』『The Last Train from Hiroshima : The Survivors Look Back』に基づき、広島と長崎で2度被爆した“二重被曝者”の山口彊(やまぐち つとむ)氏を描くもの。米Deadlineにて、キャメロンは「2発の爆弾、複数の目撃者と生存者たち」を軸とした物語にすることを明言した。
ペレグリーノの綿密な取材による原作から、キャメロンは2つのエピソードを取り上げたいと語っている。ひとつは、広島への原爆投下で被爆した新婚の男性が、命を落とした妻の遺骨を両親に届けるために長崎へ向かい、そこで再び被爆したという物語。もうひとつは、広島と長崎、両方の爆撃機に乗っていた唯一の搭乗員ジェイコブ・ビーザーの物語だ。
「あたかもその場にいて、生き残り、それを目撃していたかのように」原爆投下の事実を扱いたいとキャメロンは言う。「この兵器が何をもたらしたかを思い出すことが、今こそ本当に大切だと考えています。これは核兵器が人間を標的に使用された唯一のケースです。政治的な要素は横に置いて、日本人についての映画を創りたい」。
製作にあたっては原作者のペレグリーノがアドバイザーとして参加するほか、日本側の専門家や、ペレグリーノが取材した被爆者遺族が協力するとのこと。また、日本の作家やプロデューサーが参加する可能性もあるという。
「日本人の文化的視点から完全に外れたアウトサイダーになりたくはありません。人類に起きた出来事の中立的な証人として、その炎を絶やさないよう、記憶を保ち続けたいのです。[中略](原爆投下の)生存者が全員亡くなった今、生きた歴史としての章は閉じられてしまいました。それでも正確さを追求し、完全に政治的中立な作品を目指したいと考えています。」
もちろんキャメロンが撮る以上、ビーザーの物語のようにアメリカ的な視点は含まれる。ただし、キャメロンは「彼(ビーザー)は仕事をしていただけで、多くの人々と同じように目撃者のひとりでした」と強調する。「政治的な議論には踏み込みません。原爆は投下されるべきだったのか、日本がそれほどの悪行を犯したのかという、道徳的・政治的な作品にするつもりもありません」。
現時点で脚本の執筆は始まっていないため、「どのような内容の映画になるかは言えない」という。15年にわたってノートを取りつづけてきたが、まだ脚本を書き始められる段階にないというのだ。ただし現時点で、キャメロンは「50もの物語を描きたいとは思いません」と予告している。「皆さんが共感できる、いくつかのストーリーを描くつもりです」。
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Source: Deadline