キャメロンが広島・長崎の原爆映画撮る ─ 「何が起こったか、手加減せず容赦なく描く」「観客はどこまでの地獄に耐えられるのか」

巨匠ジェームズ・キャメロンが、広島・長崎への原爆投下を描く映画『Ghosts of Hiroshima(原題)』で、実際の投下の様子をありのままに描く意向を明かした。スティーブン・スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』(1993)や『プライベート・ライアン』(1998)を参考に、「本当に恐ろしい」映画を作るという。
本作はチャールズ・ペレグリーノのノンフィクション作品『Ghosts of Hiroshima』『The Last Train from Hiroshima : The Survivors Look Back』に基づき、広島と長崎で2度被爆した“二重被曝者”の山口彊(やまぐち つとむ)氏を描くもの。キャメロンは2009年に山口氏と面会し、15年以上にわたって企画を温めてきた。
米Deadlineにて、キャメロンは「映画館の観客が、原爆投下を体験したかのように感じられる映画を創りたい」と宣言。「広島と長崎で起こったことを、手加減せず、容赦なく描きたい。スピルバーグがホロコーストやノルマンディー上陸作戦をありのままに見せたように」と語った。すでに、スピルバーグとは本作の構想を話し合っているという。
「彼(スピルバーグ)は当時の話をしてくれました。彼はスタジオの要求にかかわらず、“できるかぎり激しいものにする”と言ったそうです。監督としての全力を尽くしても、現実の激しさを作り出すことはできないからと。これは教訓だと思います。映画づくりのあらゆる手段を駆使して、何が起きたのかを伝える必要があるんです。私たちはホラー映画を愛していますが、ホラー映画は互いに競い合うもの。実際の出来事だという点で、これは真実のホラーなのです。」
キャメロンはインタビューのなかで、生き残った被爆者たちがそのときは数日後に死ぬと知らなかったこと、瞬間的に身体を焼かれながら、それでも人を助けようとしていたことを強調している。何もわからないなか、ともに生き延びようとしていたことを。「人間という存在が、究極的な生死をかけた状況のなかで、自分よりも他者を大切にしていた。そのことを捉えられれば素晴らしいと思います」。
現時点で脚本の執筆は始まっておらず、企画は初期段階だが、キャメロンは「観客はどこまでの地獄に耐えられるのか……」と漏らした。「妥協せずに描くとはいえ、観客が15分で帰ってしまうような作品にはしたくない」といい、きちんと物語として伝えることの課題を実感しているようだ。
もっとも原爆投下をありのままに恐ろしく描きたいという姿勢は、現実に戦争が起こり、核をめぐる緊張感が高まっている現状を踏まえてのことだ。「世界中の市民の怒りが、政府の注意を引き、緊張を緩和するための措置につながるはず」という。映画を通して、核戦争に対する恐怖や権力への怒りを呼び起こすことが狙いだ。
「結末のネタバレはしたくありませんが、この映画は、“現在の世界に配備されている兵器の威力は、広島・長崎に投下された原爆の1万倍に及ぶ”というテロップで終わります」とキャメロンは語る。「その事実を少しでも考えてほしいのです。1940年代後半から50年代前半にかけて、熱核爆弾を作るのは素晴らしいアイデアだと誰もが考えていたことを」。
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Source: Deadline