ハリウッドで生成AIの活用始まる ─ ジェームズ・キャメロンが生成AI開発会社の取締役に就任、「AIは次なる波だ」

ハリウッドの急進派たちの間で、生成AIの大々的な活用が始まろうとしている。2023年の俳優組合&脚本家組合のダブルストライキでは、AI脅威論による活用制限が大きな焦点の一つとなり交渉が長期化したが、わずか1年でAI導入の動きが見えている。
ジェームズ・キャメロンはこの度、文章から画像への生成AIモデルを開発したStability AI社の取締役に新たに就任した。2019年設立、日本語でも利用可能なテキスト画像生成モデル「Stable Diffusion」をリリースした企業で、2024年始めには8,000万ドル(約115億円)を調達。同社CEOのプレム・アッカラジュはかつてハリウッド映画の視覚効果を手がけるWETA Digital社でもCEOを務めた経歴の持ち主だ。
キャメロンといえば、『アビス』(1989)や『ターミネーター2』(1991)ではCGIによる特殊効果を、『アバター』(2009)では立体映像をいち早く取り入れ、映画界の技術革新を推進した1人。そのキャメロンが生成AI技術に関心を寄せていることの意義は大きい。
就任にあたってキャメロンは、「私はキャリアを通じて、信じられないような物語を伝えるべく、可能性を押し広げる新興テクノロジーの探究を求めてきました」と声明。「今、生成AIとCG映像の交差が、ネクスト・ウェーブとなっています」と続け、AIとCGIを組み合わせることで「アーティストはこれまで想像もしなかった新しい形で、物語を語る方法が得られるようになる」とコメントした。
これとは別に、『ロード・オブ・ザ・リング』『猿の惑星』シリーズなどモーションキャプシャー技術の一人者であるアンディ・サーキスもAIの可能性に着目し、自身の制作会社Imaginarium Productionの新プロジェクトでAIキャラクターを扱うと発表。かつてインターネットやVFX、さらに自身が切り開いたモーションキャプチャー技術も導入時には「誤解され、悪者扱いされ、一括りにされた」のと同じように、AIは「新たに人々に恐れられている魔法」だと表現。俳優でもあるサーキスは、AIをめぐる報酬や著作権のあり方を明確にすることが肝だとしながら、「アーティストたちが正しくマネタイズできるようになるために、許可取りが必要」と、AI領域の整備の重要性を話した。
ともにハリウッドへ映像革命をもたらしたキャメロンとサーキスがAI活用に乗り出すことによって、これから後続の動きも活発化するだろう。『アベンジャーズ』シリーズのジョー・ルッソ監督もAI関連企業で役員を務めており、2025年にもAIが映画を生成するようになるだろうと予言していたが、これはあながち間違っていなかったのかもしれない。
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