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【レビュー】トム・ホランド頭の中が全バレ?『カオス・ウォーキング』はチャーミングなSF冒険映画

カオス・ウォーキング
© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

トム・ホランドの思考がバレバレ?新感覚SFエンターテイメント大作『カオス・ウォーキング』が2021年11月12日公開だ。

頭の中で考えていることが“ノイズ”としてあらわになってしまうという世界を描く本作。日本の作品『サトラレ』を思い出す方も多いはずだ。舞台は西暦2257年、女性が死に絶え、男性だけが生き残った惑星。そこでは全ての人間が“ノイズ”だだ漏れで暮らしている。

主人公トッド・ヒューイットを演じるのは、マーベル・シネマティック・ユニバース『スパイダーマン』シリーズのピーター・パーカー役でお馴染みのトム・ホランド。本作でのトッド役はピーター・パーカー役に通ずるようなところもある。純真で正義感も強いが、少しおっちょこちょいで幼く、隙もあって、ちょっと寂しがり屋な若者といったキャラクターだ。

カオス・ウォーキング
© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved

そんなトッドと旅を共にするのは、偵察にやってきた地球からの墜落船に乗っていた少女ヴァイオラ。男しかいない世界で育ったトッドにとって、ヴァイオラは初めて見る女の子だ。女性はノイズを発さないという設定のため、彼女が何を考えているかわからないことにトッドは困惑。一方のヴァイオラも、知りたくないようなことまで筒抜けになってしまうノイズの喧しさに困惑するという関係が面白い。

ヴァイオラを演じるのは、『スター・ウォーズ』続3部作で主人公レイ役を演じたデイジー・リドリーだ。鮮やかなブロンドヘアが、レイ役とはまた違う印象を与えている。印象的な凛とした眼差しで、思考だだ漏れホランドがオロオロするのを黙って見つめる姿がシュール。

 『カオス・ウォーキング』
© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

さらに、“北欧の至宝”マッツ・ミケルセンも参戦。マーベルでは『ドクター・ストレンジ』、スター・ウォーズには『ローグ・ワン』と、ホランドやリドリーの看板シリーズへの出演歴も持つミケルセンが、ヴィランであるプレンティス首長役を演じる。

ノイズをコントロールする能力を身につけたプレンティス首長は、自らの名をつけた街“プレンティスタウン”の支配者。ヴァイオラを利用すれば惑星全土を支配できると考え、彼女やトッドを執拗に追う。

 『カオス・ウォーキング』
© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

プレンティスは、<我は円環にして 円環は我なり>と唱えることでノイズを制御できるという能力を後天的に身につけている。すべての男の思考が筒抜けになる世界だからこそ、「何を考えているかわからない」という怖さが引き立つのだ。ふさふさのファーとカウボーイハット、頬に十字傷といった出で立ちはインパクト抜群。アッシュゴールドの前髪を垂らし、ひたすらミステリアスに迫ってくる。

原作は、『怪物はささやく』で知られるパトリック・ネスによる人気SF小説シリーズ。主に本作の基となったシリーズ第1作は、『心のナイフ』の題で邦訳もされている。

人の思考がノイズとなって現れてしまうという設定について著者のネスは、「世の中は電話にメールや、注意を引くようなネットの情報で溢れかえっている。もしもこれらから逃れられないのなら、一体どうなってしまうのだろう」というアイデアが基になっていると、2010年のインタビューで話していた。「プライバシーがなくなってしまったら、特に若者はどうなってしまうのか?」そう聞くとスリラーっぽく感じられるかもしれないが、原作はヤングアダルト向けなので、10代から大人まで、すべての観客に明るく親しみやすい、サッパリした作風になっている。

文字通り、ビジュアル的にも明るく鮮やかだ。この世界では夜も日が沈まない設定なので、全編通じて昼間のように明るい。また、頭の周りに漂う虹色の煙のように表現されるノイズも、作品にカラフルな印象を与えている。馬に乗って駆けたり、走ったりすると、まるでテールライトのようにたなびく様がクールだ。ノイズの色や形が、キャラクターによって異なるところにも注目したい。

 『カオス・ウォーキング』
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心の声と頭の中の映像が垂れ流しになっている設定を活かしたコメディや、ちょっとした駆け引き、不思議な映像が見どころ。これをトム・ホランドが演じているというのがパーフェクトだ。ホランドといえば、マーベル作品などで明かしてはいけない秘密情報をうっかり“ネタバレ”してしまいがちという性格でファンに愛されている。そんなホランド、本作でも知られてはいけない情報をうっかり頭の中に思い浮かべてしまい、敵にバレてしまうといった一幕もある。頭の中を読まれたくないときは、<僕はトッド・ヒューイット、僕はトッド・ヒューイット…>と自分の名前を必死に唱えてごまかそうとするのだが、たいていは時すでに遅しだ。

ちょっとどんくさいことを考えてるところがバレてしまったり、ヴァイオラと話しながらついつい<かわいい>と頭の中でにやけてしまい、直後に「無視して」と真顔で流そうとしたりと、その思考バレっぷりが全編ずっと愛らしい。彼のおっちょこちょいなキャラクター性が、何事も(良い意味で)シリアスにしすぎていないところが良い。まだ大人にはなりきれないあどけなさを残しつつ、衝動的でカッコつけな思春期の少年らしさをピュアに演じられるのは、トム・ホランドしかいなかったはずだ。

 カオス・ウォーキング
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一方、幼くして両親を亡くした過去を持つトッドが、記憶に残る母の姿をノイズに映して見るといったエモーショナルな部分もある。ちょっぴりドジなトッドだが、「男になりたいなら殺せ」という過激なマッチョイズム的価値観のある世界で、時に鼻息荒くバトルに挑むギャップも見せる。劇中でトッドはヴァイオラを守れるのは自分しかいないと張り切るが、観客はそんなトッドのことを守りたくなるような、応援するような目線になるだろう。

監督は、瞬間移動を描く『ジャンパー』(2008)や、死んだら同じ1日を繰り返す『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)といった、ユニークな設定のSF映画で知られるダグ・リーマン監督。近いうち、トム・クルーズと共に宇宙でアクション映画を撮影する予定もあるというから、いま地球で最も野心的な映画監督と言えるだろう。共演は『ゴジラvsコング』(2021)のデミアン・ビチル、『ハリエット』(2019)シンシア・エリヴォ、『ジュマンジ』シリーズのニック・ジョナス、『グローリー/明日への行進』(2014)のデヴィッド・オイェロウォ。

愛すべきトム・ホランドやデイジー・リドリー、マッツ・ミケルセンのファンはもちろんのこと、“思考が筒抜けになってしまう世界”と言う設定にピンときた方なら楽しめるはず。アクションは凡庸だが、この映画でホランドやリドリーが演じるのは、スーパーパワーもフォースもない普通の少年少女。ピュアな思春期の男の子が、一目惚れしてしまった女の子と一緒に、頭の中で考えていることが全部バレながら旅をする物語として、とてもチャーミングな1作となっている。恋愛冒険映画としてカジュアルに楽しみたい。

 『カオス・ウォーキング』
© 2021 Lions Gate Films Inc. All Rights Reserved.

映画『カオス・ウォーキング』は2021年11月12日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほかにて公開。

Source:MonstersofMen

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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