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ChatGPTにドラマの脚本を書かせてみた結果 ─ 「一見するとそれっぽいが、よく見ると酷い」ものができた実験

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米ハリウッドでは「AI(人工知能)に仕事を奪われるのではないか」との懸念が広がっている。5月2日(現地時間)から続く全米脚本家組合(WGA)のストライキでも、「AI利用の制限」が争点のひとつとなっている。

もっとも、近い将来AIを使って「ベター・コール・ソウル」のような緻密に練られた脚本を書けるようになる可能性は低い。しかし「ドラマの脚本を書く」だけなら、現在の生成AIでも可能だ。

では、いま話題のChatGPT(人工知能チャットボット)にドラマのエピソードを書かせたら、どの程度のクオリティに仕上がるのだろうか?実際に行われたふたつの実験をご紹介したい。

ひとつめは、ChatGPTでSFアンソロジー「ブラック・ミラー」(2011-)のエピソードを書いたらどうなるか?というものだ。同シリーズのクリエイター・脚本家であるチャーリー・ブルッカーは、ChatGPTで同シリーズの脚本を作成。そのクオリティについてブルッカーは、「一見するともっともらしく読めるが、よく見るとクソみたいな内容」と厳しく評価している。「『ブラック・ミラー』の全エピソードのあらすじを調べて、それを寄せ集めただけです」。

また、ChatGPTで作成した脚本をさらに深く掘り下げると、オリジナリティが一切ないことがわかったという。「‟ああ、真にオリジナルの発想はないんだ”とわかります。マイク・ヤーウッド(1970年代に活躍した英コメディアン)のような、時事的な引用が含まれているんです」。

ふたつめは米The Hollywood Reporterが行った、ChatGPTでコメディ・シリーズの笑えるシーンを書けるか?という実験だ。同メディアはChatGPTを使って、エミー賞受賞コメディ「30 ROCK/サーティー・ロック」(2006-2013)の特定シーンの脚本を作成。わずか15秒たらずで生成された脚本について、「シーンの構成は決してひどくない」としつつも、内容自体は「C-」との評価を下した。その理由として、台詞にパンチライン(印象的なフレーズや、ジョークのオチ)がないこと、各キャラクターの個性が表現できていないことを挙げ、同シリーズのメインキャラなら「電話帳を読んでも笑わせられる」が、この脚本で「笑わせることは無理だろう」とユーモアの欠如を指摘している。

これらふたつのケースから、ChatGPTで書いた脚本はそれなりに形になるものの、熟練の脚本家から生み出されるオリジナリティや、視聴者を笑わせるユーモアを取り入れることは難しいとわかる。よってThe Hollywood Reporterが下した「C-」の評価は、きっと妥当だろう。

一方で、現在の生成AIを使って「脚本のアウトラインを作る」ことは十分可能だ。プロの脚本家に渡せば、上手くリライトしてくれるだろう。しかし、こうしたAIの利用によって、若手の脚本家が経験を積む機会が奪われることは忘れてはならない。

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Source:Empire,The Hollywood Reporter

Writer

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KyokoKyoko Okajima

アメリカ留学、大手動画配信サービスの社員を経て、ライターに転身。海外ドラマが大好きで、永遠のNo.1は『ブレイキング・バッド』と『ベター・コール・ソウル』。

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