Menu
(0)

Search

アメリカ・イギリスの大手映画館、再び休業突入か ─ 『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』公開延期を受けて

Photo by DanTD https://commons.wikimedia.org/wiki/File:NewRocCity;_Regal_Cinema_18_and_Streetclock.jpg Remixed by THE RIVER

アメリカ・イギリスの大手映画館チェーン、Cineworld/Regal Cinemasが再休業を検討していることがわかった。2020年10月4日(米国時間)、英The Sunday Timesなどの報道ののち、Cineworld社が公式Twitterにて認めている。

発表によると、「ただいまイギリスの映画館、アメリカの映画館の一時休業を検討していますが、最終的な判断には至っていません」とのこと。決定しだい、すみやかに従業員と観客に情報が通知されるという。

今回の報道と発表は、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の世界公開が2020年11月から2021年4月へ延期されるという告知の直後になされたもの。これに先がけては、マーベル映画『ブラック・ウィドウ』も2021年への公開延期が決定していたほか、大作映画『ムーラン』の劇場公開断念も話題を呼んでいた。

Cineworldはイギリス最大、アメリカで第2位の館数を誇る映画館チェーン。米Deadlineによると、同社は映画の配給側に「米国の65館を月曜日(10月5日※現地時間)から一時休業する」と通知したとのこと。一方、米Varietyは「アメリカのRegal Cinemaのうち543館、イギリス・アイルランドの(Cineworld)全館を今週中に休業する可能性がある」とも伝えている。情報が錯綜している状況だが、劇場側は決断を下しておらず、従業員には声明に先がけて計画の通知があったとのこと。休業は「強く検討されている選択肢のひとつ」だとされている。

休業検討の背景には、2020年に予定されていた大作映画の公開が2021年に繰り下げられているほか、『TENET テネット』の米国における興行が予想よりも伸び悩んでいるという実情があるとみられる。ただし、米カリフォルニア州のRegal’s Irvine Spectrumは、10月2~4日の週末に『TENET テネット』の優れた成績(国内映画館で第2位)を収めてもいるだけに、いきなり全館休業に踏み切るかどうかはわからない。

Cineworld/Regal Cinemasが再び休業に入る場合、その期間も大きな問題だ。Varietyは「2021年まで閉館が続く可能性もある」というが、休業の場合、米国における興行には約18%の影響が生じ、またイギリスでは5,500人が失業状態となるなど、従業員に大きなリスクが降りかかる。再開時に新たな感染対策を講じる必要が生じた場合、オープン時には再び莫大な出資も必要となる。それでも再休業に踏み切るとすれば、もはや“営業を続けるほうがトータルのコストが大きくなる”ということだ。

新型コロナウイルスの影響を受け、Cineworld/Regal Cinemasはアメリカでは約半年、イギリスでは約4ヶ月の休業を実施していた。営業の再開時には、情勢を踏まえての再休業もありうるとされていたが、よもや、この短い期間で休業が再び現実になろうとは。2020年内には、ディズニー&ピクサーが『ソウルフル・ワールド』を、ワーナー・ブラザースが『ワンダーウーマン 1984』『DUNE/デューン 砂の惑星』が公開予定。残された大作映画への影響も危惧される。

あわせて読みたい

Sources: Deadline, Variety

Writer

アバター画像
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。