豪華キャストで贈る感動のヒューマンドラマ、映画『素晴らしきかな、人生』その魅力を余すところなくお届け!

胸に響く言葉の数々
人生には多くの課題が待ち受け、誰しもが一度は挫折や逆境を味わい、それを乗り越えて立ち直ろうとする。今アナタが失意のどん底であるとしてもスッと心に染み渡る、そんな言葉が多く散りばめられているのが本作の魅力だ。例えば冒頭、社内の若き従業員に対し、ハワードは熱いスピーチでこう語った。
「君の『なぜ』への答えはなんだ? なぜ今朝も起きた? なぜ朝食を食べた? なぜその服を着た? なぜここへ来た? 会社へ来るのは、つながるためだ。人生は『人』がすべて。」
職場は働くため、学校は学ぶための場だが、それと同時に人との出会い、人との繋がりを広げる場であると、ハワードは真剣な顔つきでそう説いた。ハワード自身も“繋がり”を常に意識しながら生きてきたことは間違いないだろうし、今こうして広告代理店の共同経営者に就いたのも、そういった“繋がり”の賜物であると言える。このスピーチには彼自身の“人生論”も含まれており、それが観客の人生と結びついていくような、強いメッセージ性を感じ取ることができる。言葉の影響力を改めて実感できる、印象的なシーンだった。また、ハワードはこのように続けた。
「広告は人に伝えることがすべてだ。いかにその商品やサービスが暮らしを豊かにするかを。では、どう伝える? 『愛』と、『時間』と、『死』。この3つが地球上のすべての人をつなげる要素だ。誰もが求めたり避けたいもの、誰もが買ってしまうもの。なぜなら人は常に、愛を渇望し、時間を惜しみ、死を恐れるからだ。『愛』と、『時間』と、『死』。そこから始めよう――」
この場面で語った「愛」「時間」「死」は、本作の最大のテーマとも言える重要な要素であり、この概念が映画の至る所に登場する。希望に満ちたハワードが、目の前の従業員に対して熱心に訴えかけるこのシーンは、彼が最愛の娘を失う前の出来事であり、この頃はまだ「愛」「時間」「死」を、“地球上のすべての人をつなげる要素”だとして高く評価している。
のちに彼は娘の死をきっかけに、「愛」「時間」「死」を全く信用できなくなってしまうのだが、そんな彼もまた、奇妙な出会いや人との繋がり、そして胸に響く言葉によって、ゆっくりとその心を動かされていくのだ。セリフの一つ一つにも耳を傾けながら、じっくりと観ていただきたい作品だ。
人を繋げる三つの概念「愛」「時間」「死」
彼の前に現れた、この「愛」「時間」「死」と名乗る3人の男女は、同僚の3人が金で雇った場末の舞台役者であり、ハワードを救うための“ある策略”の一環であることは、ストーリー序盤ですぐに明かされる。本来ならばハワードを救うべくして雇ったこの役者たちは、次第に雇い主でもある同僚の3人にも深く関わる、非常に重要な存在となっていく。
「愛」「時間」「死」というこの抽出的な概念は、本作で扱われる最大のテーマとして描かれており、これからの人生の教訓となるような、人生のヒントが多く隠されている。「愛」「時間」「死」についての考え方が変わるはずだし、人との繋がりをより一層意識するのは間違いないだろう。「愛」「時間」「死」に扮した舞台役者たちと出会い、そして繋がることによって、ハワードも徐々に考え方が変わり、そして心も変化していった。観終えた後にはきっと今までの人生を振り返らずにはいられないだろう。