映画を「コンテンツ」と呼ぶな ─ 『グラディエーターⅡ』主演ポール・メスカル提言「汚らわしい言葉だ」

映画とは、さまざまな製作者や役者たちの汗と想いが込められた“作品”であるわけだが、いつからか、“コンテンツ”と呼ばれる機会が増えてきた。『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』で主演を務めるポール・メスカルが、この風潮に異を唱えている。
リドリー・スコット監督が24年ぶりに剣闘士たちの熱き戦いを蘇らせたこの続編で、メスカルは前作に登場したルッシラの息子、ルシウス役で主演。劇中では鬼気迫る凄まじい戦闘と熱いドラマを演じる。
16歳の頃から役者として活動し、『aftersun/アフターサン』(2022)ではアカデミー主演男優賞にもノミネートされた実力派のメスカルは、「ここ数年、映画が“コンテンツ”として語られていますよね」と米The Timesに苦言。作品のコンテンツ呼ばわりは「汚らわしい言葉」とし、「コンテンツなんかじゃない。作品ですよ」と断じた。
「気取っているわけではありませんが、ここには二つの業界が同時進行しています。一つは思いやりのない、芸術的な誠実さに欠ける作品。バカみたいに、Instagramのフォロワーやらに基づいて何かを作るもの。
でも、もう一つは、ずっとそこにあったものです。つまり映画技術。映画を作り、演出し、照明をあて、プロダクション・デザインをやる。それがアーティストを生かすものです。」

“コンテンツ”という言葉には、なにか刹那的に消費されてしまうような響きが感じられる。とりわけストリーミング時代となってから使用頻度が増した印象だ。“コンテンツ”と“作品”の境目はますます曖昧になっているが、マーティン・スコセッシもこうした風潮を懸念しており、「調査会社や“集積所”は、フィルムメイカーをコンテンツメイカーに、観客を怠惰な消費者に貶めることで、真剣な映画製作者にはふさわしくない状況を生み出している」と過去に述べている。イギリスの名優ヒュー・グラントも、地元の老舗劇場が閉鎖した際に「みんな家で腰掛けて、“ストリーミング”で、“コンテンツ”を見ましょう。スクロールしながら」と皮肉を込めた。
映画作りの矜持を語ったメスカルだが、『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』を鑑賞すれば、その意図するところがよくわかるだろう。この作品は“コンテンツ”と呼んで消費するにはあまりにも大きな映画で、そのスケールは自宅でのストリーミング視聴には到底収まりきらない。2024年11月15日より全国公開。
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Source:The Times