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「デアデビル」ここがアツいよ名場面5選 ─ マーベル史上最も暴力的でハードな本気ドラマを語りたい

デアデビル
「マーベル/デアデビル」ディズニープラスにて独占配信中 (C) 2025 MARVEL.

(4)シーズン3第6話〜第7話 新聞社襲撃事件のトラウマ

スーパーパワーを持つ者たちの戦いに巻き込まれて死者が出ても、大抵のスーパーヒーロー作品は見過ごす。しかし「デアデビル」は、これが積極的な題材になる。シーズン3第6話『ザ・デビル・ユー・ノー』と第7話『アフターマス』で克明だ。

第6話では、新聞社ニューヨーク・ブレティンの記者としてフィスクの不正を暴こうとするカレン・ペイジが、事件の重要参考人を伴ってオフィスに登場する。証言を始めさせたところに“偽デアデビル”ポインデクスターが襲撃に現れ、オフィスに居合わせた職員を次々と殺害。迫り来る偽デアデビルは、カレンの眼前で証人を射殺してしまう。

Marvel デアデビル シーズン3
David Lee/Netflix

手にしたもの全てを武器に変えるポインデクスターが、ハサミなどのオフィス用品に殺傷力を込めて投擲してくるのに応じるデアデビルとのバトルシーンも見ものだが、ここで注目したいのは殺されたモブキャラたちのその後の描写と、これらを目撃してしまったカレン・ペイジの反応だ。

続く第7話では事件の翌朝、FBIによる事後処理の様子が描かれる。事実確認を行うため、ペイジはFBIの一室で証人射殺の瞬間のビデオを見なくてはいけなかった。今回の事件は自分が巻き起こしてしまったことだと自責する様子のペイジは事件があった前夜から着替えておらず、セーターの袖には死亡者の血が付着している。これが恐ろしくて仕方ないペイジはテーブルの下で、血痕を指で押さえてみたり、擦ってみたりするのを止められない。いくら血の跡を擦ってみても、自分が起こした死を消し去ることはできない。この時のペイジは、その残酷な事実に向き合うだけの精神的な余裕がない。ペイジはFBIに対して気丈に振る舞いつつ、袖口の血に気を取られ続けている。

「大丈夫か」と付き添った友人フォギーに気遣われながら部屋を出たペイジは、正直に「大丈夫じゃない」と答える。その時、彼女はこの事件がどれだけの人々を巻き込んでしまったかを見てしまう。デスクには殺された者たちの遺留品となるスマートフォンがいくつも並んでおり、端末のひとつひとつが、死んだ持ち主の大切な人たちからの連絡を受けて鳴り続けている。ペイジはそれらが気になってしまって、画面を確認してしまう。

“ニュースを見たけど……返事して”
“無事なの?”
“あなた、電車には乗れた?”

戦いに巻き込まれて死亡した人々は単なるモブキャラであり、名前もなく、登場時間は数秒に満たない。しかし、彼ら彼女らの一人一人にも人生があり、家族や恋人、友人たちが存在する。これらのエピソードは、ヴィジランテ活動が起こす見過ごすことのできないサイドエフェクトを正面から描いている。「デアデビル」シリーズが、最もリアルなアメコミ作品と評価される理由の一つが詰まったハードな場面だ。

(5)シーズン3第13話「ア・ニュー・ナプキン」憎悪剥き出し血反吐の勝利宣言

デアデビル
「マーベル/デアデビル」ディズニープラスにて独占配信中 (C) 2025 MARVEL.

ヒーロー勝利の決め台詞は様々あるが、大抵は気が利いていたり、どちらかといえば控えめなものである。キャプテン・マーベルは「あなたに証明するものはない」と言い放ってヨン・ロッグに決着をつけ、トニー・スタークは「私がアイアンマンだ」と宣言してサノスを倒した。

この最終話でデアデビル/マット・マードックは、他のどんなヒーローとも異なり、怒りをむき出しにして勝利を叫ぶ。宿敵ウィルソン・フィスクと血で血を洗う大死闘を遂げ、ついに憎き相手を下したマードックは、撲殺寸前までタコ殴りにした後、喉元まで込み上げてくる殺意をかろうじて押さえつけるように叫ぶ。

これまで繰り広げられたマードック対フィスクの血塗られた因縁がついに決着を迎える瞬間だ。ダラダラ血を流して沈むフィスクを前に、傷ついてガラガラになった声でマードックは咆哮する。

「この街は、お前を拒絶し、勝った!
俺がァ!お前にィ!勝ったんだァ!」

その語尾には、“見たか、このクソ野郎!”という怒気が存分に込められている。未だかつて、ヒーローが憎悪と苦しみを血反吐混じりに吐き散らかして勝利を宣言するのは誰も聞いたことがなかった。

マードックのあまりの鬼気を前に、あのフィスクがみるみるしおらしくなる。怒号を受けたフィスクはすっかり意気消沈し、萎んだ風船のように力を失い、マードックが叩きつけた要求を大人しく呑むことになる。ここまで視聴者は、極悪非道なフィスクに一泡吹かせてやりたいとの思いでエピソードを見進めてきたわけだが、最後の最後に極めて暴力的なカタルシスを解き放つ。危険な爽快感を伴う、最終話に相応しい名場面だ。その後のシーンで、ビルの屋上に佇んで一人街を見下ろすデアデビルの姿も、ストリート・ヒーローの孤高の風格に満ちている。


以上の5選について、シーズン2からの場面が一つも含まれていないことに気づいたファンも多いだろう。もちろんシーズン2にもフランク・キャッスル裁判やパニッシャーとの共闘など興味深いシーンも多いのだが(パニッシャー援護射撃後の、あの頷きとか!)、どうもヤミノテやエレクトラ周辺にあまり夢中になれず、シーズン1と3に偏ってしまったことを何卒ご容赦いただきたい。いつか同志と語り合う機会があれば、シーズン2のおすすめ名場面を紹介してもらうことを楽しみにしたい。

デアデビル:ボーン・アゲイン
© MARVEL 2024

さて、マードックとフィスクの戦いは「デアデビル:ボーン・アゲイン」で再開されることになる。最終話の戦いで脊髄損傷級の重症を負ったポインデクスターや、私刑執行人パニッシャー/フランク・キャッスルも登場するとあり、事実上のシーズン4と言えそうだ。旧シリーズ同様にハードな描写で挑んだという新シリーズでは、どんな名場面が登場するのか楽しみでならない。

デアデビル:ボーン・アゲイン
(c) 2025 Marvel

「デアデビル:ボーン・アゲイン」は2025年3月5日、ディズニープラス独占配信。過去シリーズ「マーベル/デアデビル」もディズニープラスで配信中。新作に備えて視聴しておきたい。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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