【あなたの知らないスター・ウォーズ】ホロチェス「デジャリック」を本気で掘り下げる ― 歴史・設定・遊び方

最近ちまたでは、藤井聡太さんの史上最年少六段位昇格だとか、井山裕太棋聖の国民栄誉賞受賞だとかの影響で、「わが子に囲碁か将棋をさせたい!」という親が増えているそうです。高度な思考を要求されるので知育への好ましい影響が期待されているようですね。THE RIVER読者の中にもこういった「盤上遊戯」への関心が高まっている方が少なくないと想像します。
「ちょっとはじめてみようかな?」そんな軽い気持ちで囲碁や将棋のミニセットを手に取る前に、是非一考をお願いしたい。「スター・ウォーズファンたるもの、本当にそれでいいのか」と。囲碁、将棋、はたまたチェス、どれも大変結構でござんすが、我々には、はるか昔、遠い遠い銀河系から伝わる由緒正しい対戦型ボードゲーム「デジャリック」があるじゃないですか。そんなゲーム知らない?いいえ、そんなはずありません(断定)。なんせこれまでに製作された9本(2018年3月時点)の『スター・ウォーズ』実写映画のうち、実に3本にこのゲームは登場しています。「ホロチェス」と言い換えればピンと来た方も多いのでは?……というわけで、今回はスターウォーズの広大な作品世界を象徴するといって過言ではないボードゲーム「デジャリック」を掘り下げてみようという次第です。
映画に登場する「デジャリック」
「デジャリック」が初めて『スター・ウォーズ』サーガに登場したのは、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(1977)。
モス・アイズリーを出発してオルデランへ向かうミレニアム・ファルコンの船内で、チューバッカとR2-D2(セコンドC3PO)が円形の市松模様の盤を挟んで、何やらゲームの対局をしている場面です。盤の上にはホログラフで映し出された色とりどりのクリーチャーの姿が。言うまでもなくこのゲームの名が「デジャリック」です。何やら優勢のR2-D2に対してチューイが唸り声をあげ、それを見たハン・ソロが「ウーキー族は負けると相手の腕を引きちぎることがある」と言ってC-3POを脅す、そんなコミカルなやりとりが印象的でした。
そして月日は流れて第7作『スターウォーズ/フォースの覚醒』(2015)では、同じくミレニアム・ファルコンの船内でフィンが誤ってこの「デジャリック」の起動スイッチを入れてしまい、オフにできずあたふたするというくだりがあります。エピソード7に数多く散りばめられた旧三部作オマージュのひとつとして有名です。
なお、意外に知られていないのが『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)。惑星ジェダにあるソウ・ゲレラ率いるパルチザンの拠点で、パルチザンのメンバーがホログラフィックではなくクリーチャーのミニチュアを使って「デジャリック」をしている場面があります。
こうして「デジャリック」は誕生した
『スター・ウォーズ』の公式サイトによると、今を遡ること約40年前、ジョージ・ルーカスが栄えある『スター・ウォーズ』第1作(当時はエピソード4というサブタイトルはついていませんでした)を撮影当時のこと。
同作において特撮を担当していたフィル・ティペットとジョン・バーグは、モス・アイズリー宇宙港「チャルマンのカンティーナ」のシーンのためにデザインした様々なクリーチャーのミニチュアをルーカスに披露します。あいにくカンティーナのシーンにはこれらのクリーチャーは使われませんでしたが、ルーカス自身はこれらのモンスターの造形をとても気に入り、別の場面での使用を検討します。それがファルコン号船上での「モンスターチェスのシーン」でした。
当初ルーカスは、小柄なキャストに着ぐるみを着用させてこのシーンを撮影するつもりでしたが、『スター・ウォーズ』の前年に公開されたリチャード・T・ヘフロン監督『未来世界』(1976)によく似た特殊効果が使われたため、急遽別の手法での撮影を余儀なくされます。ルーカスは、ティペットとバーグの二人に6インチサイズのミニチュアを用いたストップモーションによる撮影を指示。二人はグラント・マッキューンが製作した円形の盤の上で撮影を行い、こうして出来上がったのが「デジャリック」のシーンだったというわけです。
公開当時、非常に短いシークエンスにも関わらず、この場面はファンの注目を集め、エピソード4を象徴する場面の一つとして、前述した『フォースの覚醒』や『ローグ・ワン』だけでなく、アニメシリーズ『クローン・ウォーズ』(2008-2014)や『反乱者たち』(2014-2018)、またスピンオフ小説などでも度々オマージュが捧げられています。