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ジョニー・デップ、キャンセルカルチャーは「いまや誰も安全ではない」

ジョニー・デップ
Photo by Bielbienneboy https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Johnny_Depp_(3).jpg Remixed by THE RIVER

『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズなどで知られるジョニー・デップが、現在の世界に広がる“キャンセルカルチャー”について自身の意見を語った。

2021年8月22日、ジョニーはサン・セバスチャン国際映画祭にて“生涯功労賞”にあたるドノスティア賞を受賞。記者会見に登場し、「現在のキャンセルの時代について、どう考えていらっしゃいますか?」という問いかけに答えた。質問した記者は、「今ではSNSを通じて裁きが下され、本当の真実がわからないまま、多くのアーティストに直接的な影響が出ています。とても多面的なキャリアを持つ人間として、または俳優として、この状況をどう思われますか?」と尋ねている。

これに対し、ジョニーは真剣な表情でしばし考えたのち、「複雑な、本当に複雑な状況です」と答えた。言葉を選びながら、次のように言葉を継いでいる。「いつまで続くかにかかわらず、歴史上の出来事になりうるものでしょう。現在のキャンセルカルチャーや、汚れた空気の充満具合を基準として判断を急ぐ傾向はね。(その空気は)人が吐き出したもの」。

ときに考え込みながらも、ジョニーは時折笑顔を浮かべ、「自分が安心しているかといえば、安心しています。なぜなら、気が遠くなるような、困惑するような出来事に直面する時は、それが大事だから。いろんな角度から殴られるようなもので……最初は“えっ?(笑)”と思うけれど」と続ける。ここで暗に示されているのは、ジョニーの元妻アンバー・ハードに対するドメスティック・バイオレンス疑惑や、英国のタブロイド紙The Sunとの名誉毀損裁判に敗訴したことだろう。

「今から少し前には、いろいろな動きがあって、それらが真心や誠意から来ていることは理解しています。けれど、(キャンセルカルチャーは)とうに収拾がつかなくなっている。僕に断言できるのは、“いまや誰も安全ではない”ということ。誰ひとり例外じゃない。ひとこと言いたがる人がいるかぎり、そのひとことで足場は失われ、頼みの綱もなくなる。これが僕だけでなく、たくさんの人々に起きたことです。女性、男性、子どもたちの身に起きたこと。悲しいことに、ある時から、彼らは“これが普通なんだ”と思うようになる。あるいは、これが自分なんだと。」

ジョニーは「いつ、誰が、どんなことを考えているのかわからない。けれども僕は、誰も安全ではないと思う」と繰り返したのち、「一人ひとりが真実という武器を手にしていれば、それで十分。判決に脚色が加えられているかどうかは問題ではありません」と述べ、再びかすかに笑顔を見せた。回答の最後には、記者たちにわずかに視線を向けながら、こうも口にしている。

「不正があった時は──それが自分や、自分の愛する人、自分の信じる人に降りかかった時は──立ち上がりましょう。じっとしていてはいけない。だって、彼らはあなたのことを求めているから。」

ジョニーはアンバーへの暴行疑惑などを否定しているが、前出の裁判に敗れたのちに『ファンタスティック・ビースト』シリーズのグリンデルバルド役を降板。主演映画『MINAMATA─ミナマタ─』は2021年9月23日に日本公開を迎えたが、ジョニーの私生活を理由として、米MGMは国内の公開予定を立てていない。

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Source: San Sebastian Film Festival

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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