『名探偵ピカチュウ』ライアン・レイノルズの起用はなぜ完璧だったのか ─ 名脇役ダニー・デヴィートも有力候補、スタッフが明かす

『ポケットモンスター』シリーズ初の実写映画『名探偵ピカチュウ』は、“見た目はかわいいのに中身はおっさん”のピカチュウと青年ティムを主人公とする“探偵映画”だ。ピカチュウの声、表情のパフォーマンス・キャプチャーを担当したのは『デッドプール』シリーズのライアン・レイノルズ。小気味いいテンポでセリフをまくしたて、ジョークを飛ばし、なのにキュートという離れ業をやってのけた。
映画を観てしまえば、もはや「名探偵ピカチュウにはライアン・レイノルズ以外考えられない」とまで思える完璧なキャスティングだが、キャスティング段階では多数の俳優が検討されていたという。そのうちのひとりが、『バットマン リターンズ』(1992)ペンギン役や実写版『ダンボ』(2019)マックス・メディチ役のダニー・デヴィートだった。米Nerdistが伝えている。

VFXプロデューサーのグレッグ・バクスター氏によれば、ピカチュウのキャスティング作業では、候補に挙がった俳優の声を製作途中のピカチュウのCGに合わせるという方法でテストが行われていたそう。ダニーの場合、ドラマ「フィラデルフィアは今日も晴れ」(2005-)の演技がテストに使用されたという。
「ピカチュウがどんな見た目で、どんなサイズや形をしていて、主にどんな風に動くのかはわかっています。ですから俳優を探す時には、過去の演技から声を取り出して、ピカチュウに当てはめるとどうなるかを確かめました。」
“ピカチュウ役にダニー・デヴィート”という配役は、ゲーム『名探偵ピカチュウ』がアメリカでリリースされた当時から一部ファンの間で熱望されていたもの。ダニーの声による英語版を求める署名活動には5万人以上が署名したほどだ。実際、米Game Informerにグレッグ氏が明かしたところによると、ダニーの声で喋るピカチュウは「とても面白かった」という。「どうしてダニーにならなかったのかはお話しできないんですけどね」。
ライアン・レイノルズ、完璧だった
ピカチュウ役にライアン・レイノルズを起用するという結論は、製作チームが幾たびの試行錯誤を経て到達した賜物だったのだろう。グレッグ氏は「ありとあらゆる俳優でテストを試みました。声の高さや声色、身体が大きい人や小さい人、いろいろです」と述べている。そして多くの俳優は、ピカチュウに“ある程度”フィットしたようだ。「アニメーションに声を合わせてみると、みなさん素晴らしいんですよ。予想しなかった結果になって」。しかしライアンの声は、その中でもずば抜けた魅力を放っていたという。
「ある時、ライアン・レイノルズの声をピカチュウに入れてみたら、まさに奇跡が起こったんです。予想とはまったく違って、ただ面白いだけじゃなかった。ライアンはすごく矢継ぎ早に、言葉を切らずに喋りつづけるような演技をしますよね。ジョークが決まるまで喋りつづける。小さくてキュートなピカチュウに、辛辣で皮肉っぽいユーモアが合わさると、アニメーションにも影響が出てくるんです。」

© 2019 Pokémon.
グレッグ氏はピカチュウ=ライアンというキャスティングについて、「いったんライアンの声を入れたら、もう、そこで決まったようなものでした」とまで言っている。ところがそれほどピッタリだったために、ライアン本人は思わぬ制約を課せられることとなった。テレビ番組「The Tonight Show Starring Jimmy Fallon」で「声を変えようとは思わなかったんですか?」と尋ねられ、ライアンはこう答えたのである。
「そうしようと思いましたよ。最初はどうしようかと思ったんです、この映画はフィルムノワール風だから。誰かが『ロジャー・ラビット』(1988)と『ブレードランナー』(1982)を足したような感じだと言ってて、“それ良いね!”って。だから、“昔の刑事みたいな、たとえばピーター・フォークが演じた刑事コロンボ風に、ブルックリンの感じでやらせてください”と言ったんです。そしたら、“えっと、ライアン・レイノルズのままがいいかもですね”って。」
映画『名探偵ピカチュウ』は2019年5月3日(金・祝)より全国東宝系にて公開中。
『名探偵ピカチュウ』公式サイト:https://meitantei-pikachu.jp/
Sources: Nerdist, Game Informer, The Tonight Show