『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』死体役、ジャスティン・ティンバーレイクやロバート・パティンソン、チャニング・テイタムに断られていた

『スイス・アーミー・マン』(2016)のダニエル・シャイナート監督が、『ミッドサマー』のA24と再タッグを組んだ最新作『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』。この映画で、タイトルロールの“死体”ディック・ロングを演じたのは、なんとシャイナート監督本人。物語のカギを握る重要な役どころを、なぜ「演技は素人」の監督が演じることになったのか……?
実は、監督が自ら演じることを決断する以前、著名な俳優陣に次々と出演オファーを断られていたという。脚本を読んだエージェントたちが、「無理です、こんな役はやらせられない」とオファーを即辞退したのだ。
出演を断ったとされているのは、『21ジャンプストリート』『マジック・マイク』シリーズなどで知られるチャニング・テイタム、カリスマ的な人気を誇るアーティストのジャスティン・ティンバーレイク、そして次期バットマン役や『TENET テネット』など話題作が相次ぐロバート・パティンソンなど。監督は「“Hey You Motherfucker’s Wanna Get Wired(ゲス野郎ども、ハメを外そうぜ)”という一番オイシイ台詞を言える役なのに、誰もやりたがらなかった」と嘆いている。

しかし映画を観れば、なぜディック・ロング役を引き受けるスターがいなかったのかも想像できるというものだろう。そもそも映画の冒頭約10分で死んでしまううえ、その死に隠されている秘密というのが……もちろん、それはここでは語れない。
最終的に、脚本家の推薦もあって自らディック役を演じたシャイナート監督は、「良く考えると他の人にやらせるにはヤバい役だった。自分で演じてみて改めて感じる」とコメント。「引きずり回され、血まみれの状態でコンクリートの上でずっと放置されるんだから、それは嫌だったでしょうね。このとんでもない役を、人にやらせるのは酷なことだった」と屈託のない笑顔を浮かべたという。
人気俳優たちが即答でオファーを断ったディック・ロング、その“人にやらせるにはヤバい”役柄に隠された真実は劇場で。
『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』

アメリカ南部の片田舎。売れないバンド仲間のジーク、アール、ディックは、ある晩、練習と称してガレージに集まりバカ騒ぎをしていた。いつものように楽しい夜になるはずだったが、とある出来事が原因でディックは突然死んでしまう。またたく間に噂は広がり、町は“ディックの死”の話題でもちきりに。殺人事件として捜査が進むなか、唯一真相を知るジークとアールはディックの死因をひた隠しにし、痕跡をもみ消そうとするのだった。事件の夜に一体何が起きたのか、なぜ彼らは真相を話せないのか、彼らが頑なに口を閉ざす秘密とは……?
A24とダニエル・シャイナート監督が再びタッグを組んで挑むのは、実際の事件から着想された、コーエン兄弟『ファーゴ』(1996)を彷彿とさせるミステリ仕立てのダーク・コメディ。舞台であるアメリカ南部出身のアンサンブル・キャストが織りなす迫真の演技が笑いを誘い、ステインド、クリード、ニッケルバックなどの楽曲が映画に彩りを添える。
映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』は、2020年8月7日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国ロードショー。