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【詳報】米ディズニー、20世紀フォックス&FOXネットワークスほかの買収を発表 ― コメント和訳あり

ディズニー

2017年12月14日、米ウォルト・ディズニー・カンパニーは、21世紀フォックス社の主力事業を買収することを正式に発表した
かねてより報道されていたように、買収の対象となったのは、フォックス社の映画事業を担う20世紀フォックス、テレビ事業を担うFOXネットワークス・グループなど。またディズニーは、米Huluやイギリスの大手メディア企業スカイ社などの株式を取得し、Huluの経営権を握ることになるという。

ディズニーによるフォックス社の事業買収額は524億ドル(約5.9兆円)。買収にあたり、ディズニーはフォックス社の負債である137億ドル(約1.5兆円)も引き受けるため、総額にして661億ドル(約7.4兆円)が動く事態となった。
かつてマーベル・エンターテインメントとルーカスフィルムがそれぞれ40億ドル(約4484億円)で買収されていたことを考えると、いかに今回の買収劇が大規模であるかを推し量ることができるだろう。

フォックス社の映画事業を買収することによって、ディズニーは20世紀フォックス、フォックス・サーチライト・ピクチャーズ、FOX 2000 ピクチャーズという複数の映画スタジオを傘下に収めることになる。
またテレビ事業では、20世紀フォックステレビジョン、FXプロダクション、FOX21テレビジョン・スタジオのほか、FXネットワークス、ナショナル・ジオグラフィック、ローカル向けのFOXスポーツネットがその傘下に入る予定だ。ただしディズニーは全テレビ事業を買収しないため、対象から漏れたフォックス放送やFOXニュース、フォックス・ビジネスなどは、事業買収の成立に先がけて21世紀フォックス社から切り離され、新会社として再出発することとなる。

米ディズニー、大幅なコンテンツ拡充へ

それにしても驚かされるのは、買収成立によってディズニーの懐に入るコンテンツの豊富さと質の高さである。
公式発表に名前の挙げられた映画には、『X-MEN』や『ファンタスティック・フォー』、『デッドプール』シリーズ、『アバター』(2009)とその続編、『グランド・ブタペスト・ホテル』(2014)、『ゴーン・ガール』(2014)、『オデッセイ』(2015)、『ドリーム』(2017)、そしてギレルモ・デル・トロ監督の新たな代表作と名高い『シェイプ・オブ・ウォーター』(2018年3月1日公開)がある。またテレビシリーズのラインナップには『モダン・ファミリー』(2009)、『ジ・アメリカンズ』(2013-2018)、『THIS IS US 36歳、これから』(2016-)、おなじみ『ザ・シンプソンズ』(1989-)が新たに加わるのだ。

こうした事実からは、当初から主な買収理由と目されていた、2018年以降にディズニーが開始する映像配信サービスのラインナップ拡充が現実的なものとして見えてくる。このそうそうたる作品群を一手に独占するサービスが登場するとなれば、既存サービスは大きな影響を免れないだろう。

また、同じく大きな買収理由といわれてきたのが、マーベル・キャラクターの映像化権をディズニーが管理統合するという戦略だ。ディズニーは公式発表に、X-MENやファンタスティック・フォーについてきちんと言及しているのである。

(買収の)合意は、X-MENやファンタスティック・フォー、デッドプールをマーベル・ファミリーというひとつ屋根の下に再結成し、キャラクターとストーリーが互いに関わり合う、観客に愛されてきた、豊かで複雑な世界を生み出す機会をディズニーに提供するものでもある。

なおウォルト・ディズニー・カンパニーのボブ・アイガーCEOは、このたびの事業買収にあたり、21世紀フォックスとディズニー取締役会の要求を受けて2021年末まで任期を延長する。ボブ氏は公式発表に際して、以下のコメントを寄せた。

「21世紀フォックス社による輝かしい仕事の数々を収めることは、これまで以上に感動的でわかりやすく、かつ便利な、豊かな多様性をもつエンターテインメント体験を求める消費者の声を反映するものです。ルパート・マードック氏が、生涯かけて築いたビジネスの未来を我々に委ねてくださったことを誇りに思い、また感謝いたします。そして、非常に愛されたシリーズやブランドのコンテンツによって我々の商品ラインナップを大幅に増やせる、また消費者に(製品を)直接提供できる機会をとりわけ強化できるという類まれなる機会に興奮しています。
世界規模のストーリーテリングや革新的な流通プラットフォームを、全世界の主要な市場に暮らしている多くの消費者に提供すべく、我々はこのたびの契約を国際的にもきちんと広げてまいります。」

また、21世紀フォックス社の会長を務めるルパート・マードック氏も同じく声明を発表した。

「21世紀フォックスを作り上げたことを、私たちはとても誇りに思います。ディズニーとの提携が株主にさらなる価値をもたらすこと、新しいディズニーがこのエキサイティングでダイナミックな業界を先導しつづけることを私は固く信じています。さらにボブ・アイガー氏による指揮のもと、今回の提携が、世界最大の企業のひとつへとつながることを確信しているのです。ボブ氏が留任に同意してくれたこと、誰にも負けない合併チームの成功へと熱意を注いでいることに感謝し、そして希望を感じています。」

ディズニーによれば、今回の事業買収成立には今後1年~1年半を要するという。今後の動向に注目しながら、映画界の革命をできるかぎり楽しむことにしよう。

[お詫び]
記事初出時、本文中の金額の数字に誤りがありました。謹んでお詫びするとともに訂正させていただきます。

Source: https://thewaltdisneycompany.com/walt-disney-company-acquire-twenty-first-century-fox-inc-spinoff-certain-businesses-52-4-billion-stock/

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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