米ディズニー、ロシアでの映画公開を無期限ストップ ─ 『ドクター・ストレンジ/MoM』『私ときどきレッサーパンダ』など

米ウォルト・ディズニー・カンパニーが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ロシア国内で上映される予定であった新作映画の劇場公開を無期限で取りやめることを決定した。同社は以下のように声明を発表している。
「そうされるべき正当な理由が無いウクライナ侵攻と悲劇的な人道的危機を考慮し、次回作の『私ときどきレッサーパンダ』を含めた映画のロシアにおける劇場公開を停止致します。我々は、今後の状況に基づき、将来的なビジネス決定を行って参ります。その間、新たに生じた難民危機の規模を踏まえ、難民に対する緊急支援ほか人道的援助を提供すべく、NGO(非政府組織)のパートナーと協働していく所存です。」
ロシアで公開が予定されていたディズニーの新作劇場映画は、声明にあるピクサー・アニメーション・スタジオ製作『私ときどきレッサーパンダ』のほか、5月5日の『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』と6月16日の『バズ・ライトイヤー』。同2作の公開も無期限保留となる。
ハリウッドでは、ディズニー社がロシア国内での配給停止を決定した初の大手スタジオとなり、米Varietyは「他社も追随する可能性が高い」と記している。米Deadlineは「他のスタジオ各社は至急それぞれの方策を体系化しようとしている」と報じており、近い内にも他スタジオからの発表がなされるはずだ。
また、大手スタジオやストリーミングサービスとの連携によりアメリカ映画産業のサポートを行ってきた米MPA(Motion Picture Association)が、ロシア国内における対応に関する声明を発表する可能性も伝えられている。MPAは、大手スタジオの海外領域ビジネスに関する様々な方針を策定してきた。同組織がロシアによるウクライナ侵攻を踏まえた新たな指針を発表すれば、ハリウッド各社はこれを遵守するかもしれない。
このほかDeadlineによると、映画の海外販売を行う企業はロシアとのビジネスに関して五里霧中にあるといい、とある企業のセールス担当は「ロシア国内の配給契約は十分に考慮される必要が生じてくるでしょう。すでに貸し手(売り手)からは、今後の取組みについて何をすべきかの問い合わせがあります」と証言した。ディズニー社の決定もあり、連鎖的にローカルレベルでの問題も生じ始めているようだ。
ちなみに2022年2月28日、ウクライナの映画団体「Ukrainian Film Academy」は、ロシア映画のボイコット活動をスタートし、世界中の業界関係者に向けてロシア関連の映画作品に利益を与えることを止める旨を訴えた。すでにストックホルム映画祭がロシア出資の作品の上映を拒否する声明を発表しているが、今後もロシア映画業界には打撃が続くと見られる。