『ドクター・ストレンジ』トリップ・シーンは当初7分間だった!VFXスタッフが製作の裏側を語る

映画『ドクター・ストレンジ』の見どころの一つは、なんといっても“映像ドラッグ”とも形容される独特の映像表現にある。『インセプション』を思わせる都市の変形から、美しく不気味に描かれた異次元の世界、そして自在に伸縮する時間の流れ……。

その仕掛け人であるステファン・セレッティ氏は、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に続き、本作でも視覚効果スーパーバイザーを担当した人物だ。『ドクター・ストレンジ』の全米公開時、セレッティ氏はインタビューで、驚くべき事実と映像製作の裏側を語っていた。


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あの「マジカル・ミステリー・ツアー」が7分間もあった

『ドクター・ストレンジ』のスコット・デリクソン監督は、映画の前半、カマー・タージを訪れたストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)が、エンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)によって異次元に吹っ飛ばされてしまうシーンを「マジカル・ミステリー・ツアー」と呼んでいる。ご存知の方も多かろうが、この呼び方はザ・ビートルズの楽曲名(アルバム名)からの引用だ。

https://vfxblog.com/2016/11/16/a-visual-guide-to-doctor-stranges-magical-mystery-tour/ (C) 2016 Marvel

https://vfxblog.com/2016/11/16/a-visual-guide-to-doctor-stranges-magical-mystery-tour/ (C) 2016 Marvel

異次元から異次元へと飛ばされつづけ、現実の感覚が歪み、ストレンジは自らの常識を根底から覆される――。セレッティ氏によれば、本来このシーンは7分間もあったという。CINEMABLENDのインタビューで、彼はこう述べている。

「マジカル・ミステリー・ツアーとは、エンシェント・ワンが、“ストレンジの知る世界は本当の世界の一部にすぎない”と語る一連のセリフのことです。そこで私たちは、映像とセリフの“間”をつなげようと試みました。脚本になかった要素や、ストレンジの過去とのつながりを用意したんです。すると、マジカル・ミステリー・ツアーは7分間になりました」

ただでさえ悪夢的な映像とスウィントンの語りが融合して快感を生むシーンだけに、もしもあの時間が7分も続き、編集がより緻密に行われていたならば……観客にも帰ってこられない者が出てきそうだ。ちなみにCINEMABLENDによれば、映画本編のマジカル・ミステリー・ツアーは約2分間とのこと。あれで?あれで2分しかないの?

ちなみにセレッティ氏が「ストレンジの過去とのつながり」と発言しているあたり、先日ご紹介した、本編からカットされた“ストレンジの幼少時代”は、もしかするとこのシーンに登場するはずだったのかもしれない。

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結局、7分間のマジカル・ミステリー・ツアーがお蔵入りとなったのは、やりすぎだったこと、そして映画の流れに影響を及ぼしたことが理由だったという。

それもそのはず、製作チームは「魔術をどこまで映像化するか」のバランスで頭を悩ませたようだ。試行錯誤は、映画の“仕上げ”にあたるポスト・プロダクション作業までも続いていたらしい。ComingSoon.netのインタビューで、セレッティ氏はこう話している。

「どのくらい観客に説明して、どのくらい見せるのか。すべて説明したくはありませんでした、退屈になりますから。ビジュアルで物語を乗っ取るのではなく、ビジュアルを物語に一体化させたかったのです。また私たちには、ストレンジやモルド、エンシェント・ワン、カエシリウスといった素晴らしい登場人物がいました。優れた俳優たちを台無しにもしたくなかった。この映画は『ドクター・ストレンジ』であって、『ドクター・ストレンジの視覚効果』ではありません。人物がいて、彼らが物語でいかに生きているかの映画なんです。私たちは、映像を作って物語の手助けをしました。一方、この作品は我々の作ったものに人物が反応する映画でもあります。つまりすべての要素をバランス良く、正確に調整するということです。ビジュアルの魅力をきちんと見せつつ、人物や彼らの体験にも結びつけなければなりませんでした」

ちなみにセレッティ氏いわく、『ドクター・ストレンジ』には、短縮されたマジカル・ミステリー・ツアー以外にも「言葉では説明できない」未公開シーンがたくさんあるという。

「(映像表現を)脚本にする方法がなかったほどなんです。ですから私たちは、ビジュアル・スクリプト(映像版の脚本)を作りました。プリビズ(映像コンテ)のスタッフが、映像素材とコンセプトアート、必要なコンセプトでストーリーを構築したんです。撮影が始まるよりも前、早い段階から編集マンにも加わってもらい、他のシーンより先にマジカル・ミステリー・ツアーの編集を始めました。撮影する前から編集してたんですよ」

現在発表されているDVD/Blu-rayの特典映像一覧を確認するかぎり、おそらく私たちが「7分間のマジカル・ミステリー・ツアー」を観る機会はなさそうだ。セレッティ氏らVFXチームによる、渾身の“映像ドラッグ”を、なんらかの機会で観てみたいものだが……。

映画『ドクター・ストレンジ』は劇場公開中。いずれ製作されるであろう続編では、どんな映像表現を見せてくれるのだろうか?

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source: http://www.cinemablend.com/news/1585050/the-crazy-doctor-strange-scene-that-was-supposed-to-be-much-longer
http://www.comingsoon.net/movies/features/785979-strange-stephane-ceretti#/
Eyecatch Image: https://vfxblog.com/2016/11/16/a-visual-guide-to-doctor-stranges-magical-mystery-tour/
(C) 2016 Marvel

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THE RIVER編集部。わかりやすいことはそのままに、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすくお伝えしたいと思っています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp へ。

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