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【レビュー】パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー〈永遠の3秒〉

フランスを代表する国民的写真家ロベール・ドアノー

その名前を知らなくとも「パリ市庁舎前のキス」という写真を目にしたことのある人は少なくないでしょう。1950年にアメリカの雑誌「LIFE」の依頼で撮影されたこの写真は、1980年代にポスターとして発売され世界中で知られるようになりました。
以来、この写真は愛〈アムール〉の国・フランスの象徴として、現在でも広く愛され続けています。

本作では、世界でもっとも有名な恋人たちの写真となったこの写真の撮影秘話が明かされるだけでなく、そんな写真家ロベール・ドアノーの人生と制作の秘話に迫るドキュメンタリーです。

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=i1guY6SHowM]

ロベール・ドアノーってどんな人?

パリ郊外のジャンティイ生まれ。ルノー社のカメラマンを経て、フリーとして活動を開始。「VOUGE」誌や「LIFE」誌でファッション写真を始めとして多くの写真を発表し、国際的に注目されました。特にパリの庶民たちの日常を捉えた写真で高い評価を得ています。また、パブロ・ピカソ、アルベルト・ジャコメッティ、ジャン・コクトー、フランソワーズ・サガン、イヴ・サン=ローラン、クリスチャン・ディオールなど同時代を代表する数多くの芸術家のポートレイトを発表しています。今でも世界各国で回顧写真展が開かれ続けています。

「パリが愛した写真家」サブ2(ピカソ 1952)©2016/Day For Productions/ARTE France/INA ©Atelier Robert Doisneau

人間への限りない”優しさ”と”好奇心”に満ちた写真家

ドアノーがカメラに出会ったのは戦争や母の病死など悲しい幼少期を送っていた13歳の頃です。初めてカメラに触れるとたちまち写真にのめり込み、生涯を通してパリで生活する人々の日常捉えつづけました。一日中歩き回っては優しい眼差しでレンズで覗き込み、街角に潜む何気ない”瞬間のドラマ”を職人技で作り上げていきます。そして、時には”人生の真実”をより深く表現するために、映画作品のようにモデルを使って演出します。作品ではこのような彼が持っている独自の写真哲学による撮影方法を紹介しています。

「パリが愛した写真家」サブ3(イザベル・ユペ−ル 1985)©2016/Day For Productions/ARTE France/INA ©Atelier Robert Doisneau

なぜ、ドアノーの写真は時間を超えて愛され続けているのか

本作は、そんな写真家ロベール・ドアノーの撮影風景やインタビューなどの当時の貴重な資料映像や、女優のサビーヌ・アゼマなど親交の深かった著名人による証言により、数々の名作を残したドアノーの写真家人生を浮き彫りにしています。監督は、ドアノーの孫娘であるクレモンティーヌ・ドルディル。家族だからこその視点で、優し溢れた祖父、撮影にこだわり抜いた写真家の両面を描き出しています。

「パリが愛した写真家」メインB©2016/Day For Productions/ARTE France/INA ©Atelier Robert Doisneau

芯を持ったしなやかさ

自分の出生にこだわり、郊外に軸足を定めて、そこに暮らす人々を同士として親しみの視線を注ぎ続けたドアノー。彼によって撮影されたモノクロ写真は、憂鬱な郊外を幸福の色で染めた色彩の夢が下塗りされているように感じられます。完璧な構図に、品格と落ち着きある色味。醜さを醜さから解放し、別種のぬくもりにつながる人間の匂いを、彼は確実に捉えてることがわかるでしょう。本作はドアノーという写真家の多用さや奥深さ、茶目っ気たっぷりでユーモア溢れる人物像や、口当たりのいい言葉には収まりきらない精神を余すところなく伝えています。

 

『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー〈永遠の3秒〉』は、4月22日(土) 東京都写真美術館ホール、ユーロスペース他でロードショー。

http://www.doisneau-movie.com

©2016/Day For Productions/ARTE France/INA ©Atelier Robert Doisneau

Writer

makiko0404

大阪出身、横浜在住。作詞の仕事をベースに置きながら、WEBサイト運営・編集を経て、フリーランスに転身。ライフスタイルを豊かにする"文化の向上"を掲げ、アート・音楽・映画などのカルチャー系の記事を中心に執筆活動しています。

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