『ワイルド・スピード ICE BREAK』に備えよ!ファミリーの絆が全てを貫く、ワイスピのスピリットとは何だったか

ブライアン・オコナー(演:故ポール・ウォーカー)引退後の初めての続編となる最新作『ワイルド・スピード ICE BREAK(原題:The Fate of the Furious)』は、長らくファミリーの支柱であったはずのドム(演:ヴィン・ディーゼル)が裏切り、宿敵デッカード(演:ジェイソン・ステイサム)が味方に加わるなど、シリーズの中でもかなりの異色作になりそうです。
3作目『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』におけるハン(演:サン・カン)の死が、デッカードによる復讐だったことが6作目『ワイルド・スピード EURO MISSION』により判明したため、『TOKYO DRIFT』の主人公であるショーン(演:ルーカス・ブラック)にとっても赦すべからざる存在であるデッカード。
『ICE BREAK』では窮地に陥ったファミリーを救うべく登場するようですが、果たしてかつてのブライアンやホブス(演:ドウェイン・ジョンソン)のように、ファミリーの一員となるのでしょうか。
価値観の相違を乗り越えドムのファミリーとなったブライアンやホブスとは異なり、ハンの命を奪った者という大きな壁があります。
『TOKYO DRIFT』で提示されていた、シリーズを貫くテーマ
ドリフト走行を通して自己実現していくショーンの物語であると同時に、ハンの最期の物語でもある『TOKYO DRIFT』。
度々問題を起こし、東京に住む父の元へ引っ越してきた高校生のショーンは、突き付けられるルールに苦悩していきます。“ルールを破ると、どうなるのか”。
彼にドリフト走行を指南することになったハンは、その問いに静かに答えています。
「俺が今欲しいのは、信用できる奴だ。心を開ける奴かどうか、見抜くのは難しい。車一台潰してそいつの真価が分かるなら、惜しくも何ともない」
「人生は単純だ。行き先を決めたら振り返らなきゃいい」(“Life’s simple. You make choices and you don’t look back.”)
彼の言葉は今やシリーズ全体を背負ったものに感じられます。
ハンがショーンの様子を窺っている姿が胸を打つ、ショーン、D.K.(演:ブライアン・ティー)、そしてハンによる渋谷センター街でのチェイスシーン。デッカード登場へと繋がる激しいバトルシーンでもありますが、この最中、ある場面でショーンは静けさに包まれ、1作目でドムが語った“自由になれる数秒”を体感します。
しかしそれも束の間であり、デッカードの復讐によりハンを失ってしまうショーン。7作目『ワイルド・スピード SKY MISSION』でドムと出会った彼は、デッカードの是非について問いかけます。もちろん赦すはずはないと言い切るドムでしたが、『ICE BREAK』では彼自身がファミリーを裏切ることに。
『ワイルド・スピード』…亀裂と赦しの物語
ブライアンは潜入捜査を知られ、裏切り者としてドムやミアと決裂してしまいます。ローマンはかつての因縁を胸にブライアンと対峙し、ホブスはドムを憎んでいました。ジゼル(演:ガル・ガドット)も元は、ドムにとっての敵側に居た人です。
『ICE BREAK』ではファミリーとして登場するラムジー(演:ナタリー・エマニュエル)も、一度はドムと衝突しています(※『SKY MISSION』未公開シーンより)。
“家族”というドムの言葉に拒絶反応を示すラムジー。人付き合いを好まず、望んでいるのは自らの才能の証明だけだと言い捨てています。
『ワイルド・スピード』シリーズでは毎回、相容れない者同士が互いを認め合っていく過程を丁寧に描いていくことで、アクション映画である以上にドラマ性を強めてきました。
赦しがたい相手と向き合い、全てを許容しているわけではないけれど戦いを共にする…。
そんな緊張感があるからこそ、ありえないはずの共闘に思わず胸が熱くなるのかもしれません。
元を正せばデッカードも、ドムたちとの対立は弟の復讐のため…。家族のために行動を起こしたという意味では、シリーズ中唯一ドムと同じ動機を持っていた宿敵です。ハンの痛みを忘れることは出来ませんが、デッカードに真正面から赦しが見出されることもあるのかもしれません。
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