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映画『ドミノ』あなたも劇場で催眠術にかかる?謎が謎を呼ぶアンリアル・エンターテイメントの魅力

© 2023 Hypnotic Film Holdings LLC. All Rights Reserved.

ロバート・ロドリゲス監督、ベン・アフレック主演の『ドミノ』は、実に20年もの構想を経て生み出された、謎が謎を呼ぶ“どんでん返し映画の新たな傑作”だ。2023年10月27日の日本公開を前に、その魅力に迫る。

主人公のダニー・ローク刑事(ベン・アフレック)は、3年前に愛娘のミニーが行方不明になったことを引きずっている。ある時、銀行強盗が決行されるとのタレコミが入る。現場に急行して見張りをしていると、妙に見覚えのある男(ウィリアム・フィクナー)が気になる。たまたまベンチで隣に腰掛けた女性に「今日はとても暑い。まるで釜戸だ」と呟くと、突然女性は「暑い、まるで釜戸」とよろめきながら、衣服を脱ぎ始めるではないか。実はこの男、人の脳をハッキングして自在に操る能力を持っているのだ。

一方、ロークは単独で銀行に突入。駆けつけた金庫で見つけたのは、「レブ・デルレーンを見つけろ」という謎のメモ書きが添えられた、行方不明の娘ミニーの写真だった。

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わけもわからぬまま男を追ったロークは、ついに屋上で相手を追い詰めるのだが、男が「人違いだ」と発すると、味方だったはずの警官ふたりが突然銃口の向きを変え、互いに撃ち合って倒れる。その間に男は屋上から飛び降りたかと思えば、忽然と姿を消すのだった……。

果たして、この“絶対に捕まらない男”とは何者で、何が目的なのか。そして、事件の現場に娘の写真があった理由とは。「レブ・デルレーンを見つけろ」とは、一体どういう意味なのか。

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ロバート・ロドリゲスが作り出す、予測不能の迷宮ストーリー

『ドミノ』は、ありがちな捜査ミステリーではなく、ツイストの効いた多重構造のストーリーで、観客を未体験の世界に誘う。鍵となるのは原題にある『Hypnotic』というコンセプトだ。脳をハッキングする能力を持つ“絶対に捕まらない男”によって操られた者たちが、謎を解こうと奔走するダニーを次々と襲う。やがてダニーは、自分が現実なのか夢なのかもわからない世界に迷い込んでいることに気づいていく。

このアンリアル・エンターテイメント超大作の仕掛け人は、『スパイキッズ』シリーズから『アリータ:バトル・エンジェル』まで、幅広いエンタメ作品を手掛けるロバート・ロドリゲス監督。『ドミノ』は、彼がヒッチコックの『めまい』に着想を得てから、なんと20年もかけてようやく完成させた意欲作だ。

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制作拠点となったのは、ロドリゲス監督が所有するテキサス州オースティンの映画撮影要塞「トラブルメーカー・スタジオ」。いつでも自由に撮影ができるスタジオ設備と大量の衣装や小道具を有し、さらに一通り編集作業ができる部屋もある。映画製作に必要な工程を、ここで一貫して行うことができるのだ。

『ドミノ』は、ほぼ全編をトラブルメーカー・スタジオで撮影した。「最高の施設だよ」と、ロドリゲスは自慢を語る。「スタジオの至る所を使った。エレベーター、オフィス、バックロットの裏」、さらに『アリータ:バトル・エンジェル』で使ったアイアン・シティのセットもそのまま残していたので、再活用した。『アリータ』のファンなら、既視感に気付くはずだということだ。

ロドリゲス監督に聞いたところ、なんと彼は本作の脚本執筆から、監督業はもちろん、撮影や編集、音響まで、全てトラブルメーカー・スタジオ内で自らこなしたのだそうだ。多層構造の複雑な物語であるにも関わらず、スムーズに観進められる理由は、細かなところまでロドリゲスの職人技が一貫されているからなのかもしれない。

だからこそ観客は、このスリリングな迷路のような映画に身を委ね、謎の連鎖に翻弄されることになる。「観客が次の動きを予測できたとしても、そのまた次、さらにその後までは読めないはず。それだけたくさんのひねりを与えようと思った」と、ロドリゲスは観客への挑戦状を突きつける。「だが、観客を混乱させることになってはいけない。今、何が起きているのかしっかりわからないと。そのバランスは難しかった」。

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ミステリー作品を鑑賞するとき、謎を推理しながら観るのも楽しいが、『ドミノ』はなかなか予測不能だ。だいたいの見当がついたとしても、次の展開では大きく覆されてしまう。キャッチコピーは「冒頭5秒、既に騙されている」だ。「何が現実なのか分からない。登場人物と同様に、観客も翻弄され続ける」と、ロドリゲスも話す。

結末で全ての真相が明らかになると、もう一度鑑賞したくなる。仕掛けが分かった状態で再鑑賞すると、「こんなところもヒントになっていたのか!」と膝を打つだろう。ロドリゲスも自信を語る。「作品に驚いた客は何度も映画館に足を運び、他の人たちを誘いたくなる。驚きとショックを共有するという経験だ」。

『ドミノ』の魅力は、映画館で鑑賞してこそ、より強力になる。まさに映画とは「観客を暗い部屋に入れて、催眠術をかける」ものだとロドリゲス。「映像を現実だと信じ込ませる。映像と音と音楽で催眠術のような構造を作って、観客に何かを感じさせる。これこそが作品のテーマだ」。

予告編映像でも見られる、景色がグニャリと捻じ曲がるような摩訶不思議な光景は、映画館の大スクリーンで没入感たっぷりに堪能したい。興味深いことに、ロドリゲスは『アリータ:バトル・エンジェル』といった大規模な映画を撮っているにも関わらず、本作こそが「僕にとって初めての大画面作品」であると口にしている。その真意は、ぜひ劇場でお確かめいただきたい。

ひと押しで〈世界〉は崩れ出す。映画『ドミノ』は2023年10月27日、日本公開。

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ドミノ
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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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